要介護の高齢者方の災害への備え
この内容は暫定案です。専門家の確認を受けていません。判断に迷うときは、必ず医療者にご相談ください。
どのような方が対象か
日常的に介護を受けている高齢の方と、そのご家族・介助される方です。自分では口のケアが難しい方を含みます。
すぐに医療者へ連絡してください
- 食事中・食後にひどくむせ、そのあとに熱が出た
- 痰がからむ、息が苦しそう
- ぐったりして反応が鈍い
災害時に起こりやすいこと
- 自分では歯みがきができず、介助が必要になる
- 普段使っているケア用品を持ち出せていない
- 環境が変わり、ケアを嫌がることがある
- 体調の変化に気づかれにくい
- 以前に肺炎で入院したことがある方は、繰り返しやすいことが知られている
発災前に準備しておくもの
- 普段使っているケア用品一式(歯ブラシ・スポンジブラシ・口腔ケアシート・保湿ジェル)
- 義歯を使っている場合は、義歯用品
- お薬手帳の写真、ふだんの口の中の状態の写真
- ケアマネジャー・かかりつけ医・かかりつけ歯科の連絡先
発災直後に確認すること
- ケア用品が手元にあるかを確認する
- 救護班・保健師に、介護が必要であること、以前に肺炎になったことがあればそのことを伝える
避難所での注意
- 福祉避難所への移動が必要かを、自治体の職員に相談する
- 人目が気になるときは、時間帯や場所を工夫する
自宅で避難するときの注意
- 自宅にとどまっている場合、支援が届きにくくなります。市町村の窓口に、自宅にいることを伝える
- 訪問介護・訪問看護・ケアマネジャーに状況を共有する
ご家族・介助される方が行うこと
- 上半身をできるだけ30度以上起こしてからケアを始める
- 落とした汚れを口の外に出す(飲み込ませない)
- 1日1回しかできないときは、寝る前を選ぶ
- むせる・息が苦しそう・強く嫌がるときは中断する
やってはいけないこと
- 無理に口をこじ開ける
- ティッシュなど、濡れると崩れるものを口の中に置いたままにする
- うがいができない方に、多くの水を含ませる
歯科医療者に相談する目安
- 食べる量が減った
- 義歯が合わなくなった
- 口の中に痛みや腫れがある
- 口臭が強くなった
関連する質問
- 歯が痛みます。どうすればよいですか痛み方によって原因は異なりますが、痛みの強さだけで自己判断はできません。何もしていなくてもズキズキ痛む、夜に痛みで目が覚める場合は、より重い状態の可能性があります。ひどくなる前に、早めに救護班・保健師や歯科へ相談してください。市販の痛み止めは、持病・飲んでいる薬・妊娠中などによっては体に合わないことがあるため、心配な方は飲む前に救護班・保健師・薬剤師に確認してください。
- 歯は痛くないのですが、歯科に相談したほうがよい症状はありますかあります。唾を飲み込むときの痛み、口が開けにくい、顔やあごの腫れ、熱は、痛みが強くなくても急いで相談すべきサインです。痛みの強さと、炎症の重さは一致しません。
- 避難生活で口が乾いてつらいです口の乾きは、痛み・口臭・飲み込みにくさにつながります。まず、トイレを気にして水分を我慢しないでください。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。そのうえで、水を少量ずつ口に含む、マスクをつける、口腔用保湿ジェルを薄く塗る、といった工夫で楽になることがあります。ガムは、むせやすい方・飲み込みに不安のある方・認知症のある方・自分で口の中のものを出せない方・小さなお子さんには使わないでください。窒息につながります。
- 避難生活でも、よく噛んで食べたほうがよいですかむせずに普段どおり食べられている方は、一口を少なめにして、ゆっくりよく噛んでください。噛むと唾液が出て、口の中がうるおい、飲み込みやすくなります。ただし、噛むことは歯みがきや水分補給の代わりにはなりません。むせやすい方・飲み込む力が弱っている方・認知症のある方・小さなお子さんには、ガムや噛みごたえのあるものを無理にすすめないでください。
- 避難所で口臭が気になります。どうすればよいですか避難生活での口臭には、口の汚れと乾きが関係していると考えられています。歯ブラシで汚れを落とす、口をすすぐ、乾きを防ぐ——これらは多くの場合、まず試していただきたい対処です。歯みがき剤がなくても、歯ブラシを水で濡らして磨くだけで構いません。うがいが難しい方は無理にすすがず、汚れを口の外に拭き取ってください。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、やわらかい歯ブラシで力を入れずに磨いてください。
- 詰め物やかぶせ物が取れました。どうすればよいですかまず口の中から取り出してください。口に入れたままにすると、飲み込んだり気管に入ったりする危険があります。取れたものは捨てずに、ふた付きの容器や袋に入れて歯科への相談まで保管してください(ティッシュに包むとごみと間違えられます)。状態によっては元に戻せることもありますが、判断は歯科医療者が行います。すでに飲み込んでしまったときは、大きさや形にかかわらず、飲み込んだこと自体を医療者に伝えてください。
- 経口補水液は自分で作れますか。作り方を教えてください市販の経口補水液が手に入るなら、まずそちらを使ってください。手に入らないときは、飲める水1リットルに砂糖40グラム(大さじ約4杯半)と食塩3グラム(小さじ約2分の1)を溶かす作り方が知られています。分量は必ず守り、塩は塩化カリウムを含む減塩タイプではなく、ふつうの食塩を使ってください。意識がはっきりしない方、ぐったりしている方、飲むとすぐ吐いてしまう方には、口から飲ませないでください。乳幼児、腎臓や心臓に持病がある方、透析を受けている方、水分や塩分の制限を受けている方は、飲む前に必ず医療者に相談してください。
- うがいの水が少ししかありません。効果的な使い方はありますか自分でうがいができ、水をきちんと吐き出せる方であれば、同じ量の水でも一度に多く含むより、少量ずつ含んで吐き出すほうが汚れを外に出しやすいと考えられています。たとえば30mlなら、15mlずつ2回に分けます。むせやすい方、寝たままの方、自分で吐き出せない方には無理にうがいをさせず、口の中の拭き取りに切り替えてください。うがいは歯みがきや拭き取りの代わりにはなりません。
- うがい薬がありません。口の中をすすぐのに代わりに使えるものはありますか洗口液(マウスウォッシュ)や液体ハミガキは、口の中をすすぐ目的であれば当面の代わりになります。ただし、のどを対象とするうがい薬とは目的が異なり、のどの症状への置き換えにはなりません。手指消毒用の製品は口に使わないでください。何も無ければ、水だけで口をすすぐことにも意味があると考えられています。口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。
- 重曹水は洗口液の代わりになりますか代わりにはなりません。重曹水のうがいは昔から紹介されてきましたが、効果を確かめた資料をこのプロジェクトでは確認できていないため、作り方(水と重曹の量)はお伝えしていません。口のねばつきには、まず少量の水でのうがいや、濡らして固くしぼったガーゼでの拭き取りをお試しください。口の水を自分で吐き出せない方、むせやすい方には、うがいをさせないでください。
- 入れ歯をなくしてしまいました。どうすればよいですか「ないまま我慢」がいちばん危険です。避難所の救護班・保健師に「入れ歯をなくした」と必ず申し出てください。噛めない状態が続くと食事量が減り、低栄養につながります。
- 義歯洗浄剤がありません。入れ歯の手入れはどうすればよいですかできれば毎食後、少なくとも1日1回は必ず外して洗ってください。口に入れたままでは汚れは落ちません。水が足りないときは、清潔なガーゼや口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)で拭うだけでもかまいません。熱湯と塩素系漂白剤は、薄めても使わないでください。痛み・腫れ・出血があるときは早めに救護班や歯科医療者に相談してください。
- 避難生活で入れ歯が合わなくなってきました合わないまま我慢して使い続けないでください。まず入れ歯の内側(歯ぐきに当たる面)に食べかすが付いていないか確かめ、清潔にしてから入れ直してみてください。多くの場合、まず試していただきたい対処です。それでも当たりや痛みが続くとき、歯ぐきに傷・腫れ・膿があるときは、食事のとき以外は外して休ませ、早めに救護班・保健師・歯科医療者に相談してください。
- 口内炎ができて痛いです。どうすればよいですか多くの口内炎は1〜2週間ほどで自然に治ると考えられています。まずは口の中を清潔に保ち、乾燥を防ぎ、しみるものを避けてください。ただし、2週間以上治らない、だんだん大きくなる、出血する場合は別の病気の可能性があるため、必ず歯科・医療者に相談してください。がんの治療中の方、免疫を抑える薬やステロイドを飲んでいる方、血液の病気や糖尿病のある方は、2週間を待たず早めに相談してください。塗り薬は、手元の市販薬を添付文書の用法・対象年齢どおりに使う範囲にとどめ、ステロイドを含むものや他の人に処方された薬は自己判断で使わないでください。
- 避難生活で誤嚥性肺炎を防ぐにはどうすればよいですか口の中を清潔に保つこと、食べるときの姿勢を整えること、むせやすい食品を避けることが基本です。1日1回しかできないときは、寝る前のケアを選んでください。
- 飲み込む力が弱った家族に、避難所の食事で気をつけるものはありますかパン・餅・のり・ゆで卵など、口の中でまとまりにくいもの、貼りつくもの、水分の少ないものに注意してください。ふやかす・つぶす・とろみをつけるといった工夫が有効です。
- 自分で口のケアができない家族がいます。介助はどうすればよいですか本人が座れる姿勢をつくり、あごを引いた状態で行ってください。口腔ケアシートやスポンジブラシがあると、横になった状態でもケアしやすくなります。
- 自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですかいちばん大事なのは、落とした汚れを口の中に残さず、外に出すことです。始める前にできるかぎり上半身を30度以上起こし、うがいができる方には少量の水を含んでもらい、必ず吐き出してもらいます。うがいができない方は、水は歯ブラシを湿らせる程度にとどめ、ブラシに付いた汚れをそのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取ってください。ティッシュやガーゼを口の中に置いたままにしてはいけません。安全なやり方はその方の状態によって変わるため、普段の介助方法を担当の医療者・介護職に確認してください。
- 経管栄養のチューブが詰まりやすいです。どうすればよいですかこの項目は医療者・介護者向けです。詰まりを防ぐ基本は、栄養剤を注入したあとに十分な量の水でチューブを洗い流す(フラッシュする)ことです。水の量や手順は、必ず担当の医療者・訪問看護師の指示に従ってください。チューブが詰まったときに無理な力で押し込むこと、抜けたチューブを自分で入れ直すことは、絶対にしないでください。
- 避難生活で、特に口のケアに気をつけたほうがよいのはどんな人ですか自分では歯みがきができない方、飲み込む力が弱った方、以前に肺炎で入院したことのある高齢者は、特に気をつけてください。介助してくれる人がいるかどうかを、避難生活の早いうちに確認しておくと安心です。
- 義歯ケースがありません。入れ歯は何に入れて保管すればよいですかフタがしっかり閉まり、水がこぼれない容器であれば代用できます。食品用の密封できる容器(パチッと留まるもの)が実用的です。乾燥させないよう水を張ってください。
- 入れ歯を使っています。何を備えておけばよいですかフタが密閉できる容器(水がこぼれないもの)、義歯洗浄剤、義歯用ブラシを備えてください。容器には油性ペンで氏名を書いておくと、避難所での取り違えを防げます。
- 服薬情報や医療情報は、どのように保存しておけばよいですかお薬手帳をスマートフォンで撮影して保存しておいてください。義歯や医療機器を使っている方は、その状態も撮影しておくと、支援者に伝えるときに役立ちます。
この内容について
- 監修の状態:
- 暫定案です。専門家の確認を受けていません
- 最終更新:
- 2026-08-01
分かっていないこと:【要専門家確認】介助の手順は、当プロジェクトの備えガイドと災害支援の場で紹介されている方法を整理したもので、監修者の確認を受けていません。姿勢・水の量・使う道具は、その方の状態によって適否が変わります。判断できるのは、その方を診ている医療者・介護職です。
参考にした資料
- 高齢者・介護者向け 備えガイド(お口の防災プロジェクト/一般社団法人 日本オーラルヘルス協会)
この情報は一般的な内容です。個々の症状の診断や治療方針を示すものではありません。 判断に迷うときは、医療者にご相談ください。緊急の場合は119番へ。