自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですか
この回答は暫定案です。専門家の確認を受けていません。判断に迷うときは、必ず医療者にご相談ください。
答え
いちばん大事なのは、落とした汚れを口の中に残さず、外に出すことです。始める前にできるかぎり上半身を30度以上起こし、うがいができる方には少量の水を含んでもらい、必ず吐き出してもらいます。うがいができない方は、水は歯ブラシを湿らせる程度にとどめ、ブラシに付いた汚れをそのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取ってください。ティッシュやガーゼを口の中に置いたままにしてはいけません。安全なやり方はその方の状態によって変わるため、普段の介助方法を担当の医療者・介護職に確認してください。
次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください
- ケアの最中や食後にひどくむせる、咳が止まらない
- 熱が出て、痰がからむ、息が苦しそう
- ガーゼで押さえても口の中の出血が止まらない
- 口やあご、顔がはれてきた
- 口が開かない、開けようとすると強い痛みがある
- 水も飲み込めない
- 口の中に入れたもの(ガーゼ・ケアシートなど)を回収できない、飲み込んだ可能性がある
- 急に食事量が減った、ぐったりしている
避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。
口の中にものを置いたままにしない
ティッシュは濡れると崩れやすく、破片が口の中に残ると窒息や誤嚥の原因になります。汚れの受け皿としてティッシュやガーゼを口の中に置く方法はとらないでください。ティッシュを使ってよいのは、口の外でブラシに付いた汚れを拭き取るときだけです。口腔ケアシートやガーゼで粘膜を拭く場合も、指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。
持病や薬がある方は、ここに注意
血液をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、歯ぐきからの出血が止まりにくいことがあります。出血したら清潔なガーゼを当てて10〜20分ほど静かに押さえます。このとき、ガーゼは介助する方が指で押さえ続け、端は必ず口の外に出しておいてください。押さえている間はそばを離れないでください。噛み込んでしまう方、自分で吐き出せない方、意識がはっきりしない方には、口の中にガーゼを入れたままにせず、すぐに救護班・医療者に連絡してください。10〜20分押さえても止まらないときも同様です。がんの治療中の方、免疫を抑える薬を使っている方、血糖のコントロールが難しい方は、粘膜の小さな傷から感染が広がることがあるため、力を入れずやさしく行い、腫れや痛みが出たら早めに相談してください。
途中でやめてよい合図
むせる、息が苦しそう、顔色が悪い、強く嫌がるときは、すぐに中断して姿勢を戻してください。無理に口をこじ開けると、けがや誤嚥につながります。時間をおいて、機嫌のよいときにやり直せば十分です。
吸引・経管栄養など医療的ケアを受けている方の場合
吸引や経管栄養に関わる手順は、医療者・介護者が担当する範囲です。このページでは扱いません。口のケアの可否ややり方を含め、必ず担当の医療者・訪問看護師に確認してください。避難所の救護班や保健師に、普段の医療的ケアの内容を早めに伝えておくことも大切です。
詳しい説明を読む
これは介助する方に向けた手順です
安全なやり方は、その方の麻痺・飲み込みの状態・持病・服薬によって変わります。普段の介助方法が決まっている方は、まず担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に確認したうえで行ってください。このページは一般的な考え方の整理であり、個別の指示に代わるものではありません。
水も物資も限られる状況では、手順を細かく守ることよりも、ひとつのことを守るほうが大切です。それは「落とした汚れを口の外に出す」ことです。汚れを含んだ水をうまく飲み込めずに気管へ流れ込むと、口の中の細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液、細菌が誤って肺に入って起きる肺炎)につながるおそれがあると考えられています。
準備1. 介助する人が手をきれいにする
石けんで手を洗います。水が使えないときは手指消毒をし、できれば使い捨て手袋を使ってください。避難所では感染症が広がりやすいため、ケアする方ごとに手をきれいにします。
準備2. 声をかけて同意を得る
「これから口の中をきれいにしますね」と伝え、うなずきや表情で了解を確かめてから始めます。急に口へ手を入れられると驚いて噛み込むことがあります。強く嫌がるときは無理に始めないでください。
準備3. 本人ができることは本人にしてもらう
歯ブラシを持てる方には持ってもらい、届かないところだけを手伝います。できることを取り上げないほうが、負担も抵抗も少なくなります。
準備4. 人目とタイミングに配慮する
避難所では、混み合う時間を避け、タオルやパーティションで見えないように工夫します。口の中を人に見せることに抵抗がある方は少なくありません。
準備5. 入れ歯は先に外す
入れ歯を使っている方は、始める前に外します。外した入れ歯は口の中のケアとは別に洗ってください。
姿勢1. 上半身を30度以上起こす
始める前に、できるかぎり上半身を30度以上起こしてください。当プロジェクトの備えガイドでも、介助手順の最初に挙げている項目です。起こせない方、起こすと体に負担がかかる方は無理をせず、担当の医療者・介護職に相談してください。
姿勢2. あごを軽く引いた状態を保つ
頭が後ろに反ると、水や唾液がのどに流れ込みやすくなります。枕やクッションで、あごが軽く引けた姿勢を支えます。
姿勢3. 顔や体の向きは担当者に確認する
顔を横に向ける、または体ごと横向きにすると、口の中のものが外へ出やすくなります。ただし、どちら向きが安全かは麻痺の有無や飲み込みの状態によって変わり、このページで一律にお伝えすることはできません。座ったままの姿勢と横になった姿勢では向きの意味も異なります。普段の介助方法を、担当の医師・歯科医師・看護師・リハビリ職・介護職に確認してください。
【うがいができる方】1. 少量ずつ含んでもらう
水は一度に多く含ませず、少量を数回に分けます。含んだ水は必ず吐き出してもらい、飲み込ませないようにします。
【うがいができる方】2. 受け皿を口元に添える
コップ・洗面器・ポリ袋を口元に当てるかたちで代用できます。こぼれても構わないよう、タオルを首元に掛けておくと続けやすくなります。
【うがいができる方】3. 終わりに口の中を見る
汚れや食べかすが残っていないか、明かりを当てて確かめます。残っていても指で押し込まず、ブラシでかき出して外に出してください。
【うがいができない方】1. 水は必要最小限にする
歯ブラシやスポンジブラシの先を濡らす程度にとどめ、余分な水気をよく絞ってから口に入れます。水が多いほど、飲み込んでしまう危険が増えます。
【うがいができない方】2. 少しずつ動かす
歯の表・裏・かみ合わせ・歯ぐき・頬の内側の順に、狭い範囲を少しずつ動かします。一度に広く動かすと、汚れが口の奥へ流れやすくなります。
【うがいができない方】3. ブラシの汚れは口の外で拭き取る
ブラシに汚れがついたら、そのつど口から出し、口の外でティッシュやガーゼに拭き取ってから続けます。これが、汚れを口の外へ回収するいちばん確実な方法です。拭き取ったティッシュはその場でごみ袋に入れます。
【うがいができない方】4. 最後に口の中を確認する
明かりを当てて、食べかす・ティッシュやガーゼの切れはし・入れ歯の部品など、口の中に残っているものがないか必ず確かめます。何かを口の中に入れて使ったときは、出した数まで数えて確認してください。
1日1回しかできないときは、寝る前に
何度もできない状況では、寝る前の1回をていねいに行うことをおすすめします。物品が足りないときは、遠慮せず救護班・保健師に「スポンジブラシがない」「口腔ケアシートがほしい」と具体的に伝えてください。わがままではありません。
この回答の根拠
- 根拠の種類:
- 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です)
- 監修の状態:
- 暫定案です。専門家の確認を受けていません
- 最終更新:
- 2026-08-01
分かっていないこと:【要専門家確認】ここに書いた介助手順は、当プロジェクトの備えガイドと災害支援の場で紹介されている方法を整理したもので、監修者の確認を受けていません。効果を比較した研究は確認できていないため、この手順で誤嚥性肺炎を防げると述べているわけではありません。姿勢の角度・顔や体の向き・水の量・使う道具は、その方の麻痺の有無や飲み込みの状態によって適否が変わります。特に顔や体をどちら向きにするかは、専門的な判断が必要なため、このページでは左右を指定していません。どの方法が安全かを判断できるのは、その方を診ている医療者・介護職です。吸引などの医療的ケアの手技はこのページでは扱っていません。
参考にした資料
- 高齢者・介護者向け 備えガイド(お口の防災プロジェクト/一般社団法人 日本オーラルヘルス協会)
- 災害時のお口のケア(緊急ガイド)(お口の防災プロジェクト/一般社団法人 日本オーラルヘルス協会)
- 口の中の出血が止まらないとき(お口の防災プロジェクト/一般社団法人 日本オーラルヘルス協会)
- 災害時の口腔ケア・歯科治療 平易なQ&A(日本口腔ケア学会/HDC)
関連する質問
この情報は一般的な内容です。個々の症状の診断や治療方針を示すものではありません。 判断に迷うときは、医療者にご相談ください。緊急の場合は119番へ。