# お口の防災プロジェクト — フルテキスト(LLM向け) 運営: 一般社団法人 日本オーラルヘルス協会(東京都港区南青山) サイト: https://oral-bousai.jp 学術統轄: 中久木康一(歯学博士・東北大学 大学院 歯学研究科 災害・環境歯学研究センター 特任講師) 監修状況: 本テキストの記載は、学術統轄の監修を経たことを示すものではありません。実務資料6本は「起草版(Web先行公開)」(学術監修進行中)であり、学術統轄の監修を経て正式版に更新されます。Q&Aは各問に「監修の状態」を記載しています。各内容の確認状態は、掲載ページ(各URL)の表記を正としてください。 引用ポリシー: 出典を明記のうえ自由に引用可。「お口の防災プロジェクト(日本オーラルヘルス協会)」と一次資料を併記してください。 ## 命の数字(出典を明記した統計) 査読論文・政府公表資料・公的記録を中心に、各項目に出典を明記しています(一部に報道・二次資料・推計値を含みます)。 - 24% — 阪神・淡路大震災 災害関連死の肺炎割合: 1995年、日本で初めて「災害関連死」という言葉が用いられた震災。災害関連死919人(兵庫県内)のうち、単一の疾患として最も多かったのは肺炎(約24%)だった。(出典: 神戸新聞(足立了平, 日本プライマリ・ケア連合学会誌 2011 より)・2004年5月24日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/34/3/34_245/_pdf) - 500+ — 能登半島地震 災害関連死: 2024年1月発生。災害関連死の認定は516人と直接死228人の2倍を超えた(石川502人・新潟6人・富山8人、2026年7月時点)。審査は今も継続している。(出典: 石川県「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について」第230報ほか・報道各社・2026年7月時点 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_230_0630_1400.pdf) - 39% — 歯科専門職が関わる口腔ケアによる肺炎発症率低下: 特別養護老人ホームにおいて、歯科専門職による口腔ケアを2年間継続した結果。RCT(ランダム化比較試験)。(出典: Yoneyama T, et al. The Lancet. 1999;354:515.・1999年 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(05)75550-1/fulltext) - 53% — 歯科専門職が関わる口腔ケアによる肺炎死亡率低下: 同研究(特別養護老人ホームの入所者が対象)で報告された、肺炎による死亡率の低下。この研究が検証したのは歯科専門職が関わる口腔ケアの効果であり、普段の歯磨きだけの効果を直接調べたものではない。(出典: Yoneyama T, et al. The Lancet. 1999;354:515.・1999年 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(05)75550-1/fulltext) - 80% — 高齢者肺炎に占める誤嚥性肺炎の割合: 入院した70歳以上の肺炎患者では約8割が誤嚥性肺炎と報告されている。(出典: Teramoto S, et al. J Am Geriatr Soc. 2008;56:577-579.・2008年 https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.2008.01597.x) - 90% — 阪神・淡路 災害関連死に占める60歳以上の割合: 災害関連死の犠牲は、高齢者に集中している。(出典: 神戸新聞 2004年データ(足立了平 2011 より) https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/34/3/34_245/_pdf) - 1,000億 — 歯垢1gあたりの細菌数: 歯垢1mgあたり1億個以上の細菌がいるとされる(1gに換算すると1,000億個以上)。(出典: 日本訪問歯科協会 口腔ケアマニュアル(歯垢1mgに1億個以上) https://www.houmonshika.org/oralcaremanual/m14/) - 6位 — 日本の死因順位(誤嚥性肺炎): 人口動態統計で、誤嚥性肺炎は日本人の死因の上位を占め続けている。(出典: 厚生労働省 令和2年 人口動態統計・2020年 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/gaikyouR2.pdf) - 80% — 阪神・淡路 災害関連死の発災後2ヶ月以内集中率: 災害関連死の8割が発災後2ヶ月以内に発生。避難所から応急仮設住宅への移行期が最大リスク時期。(出典: 足立了平, 日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2011;34:245-248.・2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/34/3/34_245/_pdf) ## 災害史(直接死と災害関連死) - 阪神・淡路大震災(1995): 直接死5,483人 / 災害関連死919人(兵庫県内の認定)。日本で初めて「災害関連死」という概念が生まれた震災。避難生活における肺炎死が公衆衛生課題として認識された起点。死者総数は全国で6,434人(関連死を含む)。 - 東日本大震災(2011): 直接死15,900人 / 災害関連死3,800人(2023年時点)。学術統轄・中久木康一が被災地の地域歯科保健再構築に8年間携わる起点となった震災。 - 熊本地震(2016): 直接死50人 / 災害関連死225人(2025年4月時点)。災害関連死が直接死の4倍以上にのぼった震災。東日本大震災を機に整えられた支援の仕組みが大規模に実践され、同時に新たな課題も明らかになった。 - 能登半島地震(2024): 直接死228人 / 災害関連死516人(石川・新潟・富山、2026年7月時点)。災害関連死が直接死の2倍を超えた震災(審査は今も継続中)。NHK分析で体調悪化の場所は「最初に身を寄せた避難所」が最多と判明。避難環境が繰り返し変わり、ケアの担い手が交代することの影響が課題となった。死亡経緯が公表された158名の死因は、循環器系疾患(約34%)と呼吸器系疾患(約33%)が拮抗している(令和7年版防災白書)。 ## よくある質問 URL: https://oral-bousai.jp/faq Q: 「お口の防災」とは何ですか? A: 災害時に、口腔の健康を守るための備えと対応のことです。歯ブラシや洗口液の備蓄だけでなく、乾燥対策、義歯の管理、飲み込みやすい食事の工夫など、避難生活でお口のトラブルを防ぐための総合的な取り組みを指します。 Q: なぜ災害時にお口のケアが大切なのですか? A: 災害時は水不足やストレスで口の中が乾燥し、細菌が増えやすくなります。口腔内の細菌が肺に入ると誤嚥性肺炎につながるおそれがあると考えられており、肺炎は過去の大きな震災で災害関連死の原因のひとつとして報告されています。また、義歯の紛失や破損で食事がとりにくくなると、低栄養や体力低下につながることがあります。 Q: 非常持出袋にお口のケア用品を入れたほうがいいですか? A: はい、ぜひ入れてください。折りたたみ歯ブラシ、小分けの洗口液、口腔保湿ジェル、義歯をお使いの方は義歯ケースと洗浄剤を備えておくと安心です。水が使えない時のために、口腔ケアシートもおすすめです。 Q: 水が少ない時、お口のケアはどうすればいいですか? A: 洗口液やマウスウォッシュでのうがい、口腔ケアシート(ウェットティッシュ型)での拭き取り、少量の水での歯磨きなどの方法があります。洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。口を閉じて舌を動かす体操が紹介されることもありますが、臨床的にどの程度意味があるのかは明確ではありません。行う場合も、水分補給や保湿の代わりにはなりません。 Q: 子どもの口腔ケアで気をつけることはありますか? A: お子さんは不安やストレスで口腔ケアを嫌がることがあります。楽しく取り組めるよう声かけの工夫が大切です。乳幼児(0〜5歳)には、仕上げ磨き用歯ブラシと、ガーゼまたは乳幼児用口腔ケアシートを備えてください(洗口液は誤飲のおそれがあるため使いません)。学童には、子ども用歯ブラシとフッ化物(フッ素)配合歯磨き粉の携帯サイズがあると役立ちます。避難所では甘いお菓子が配られることも多いため、可能な範囲でケアを続けてください。 Q: 誤嚥性肺炎とは何ですか? A: 食べ物や唾液が誤って気管に入り(誤嚥)、口の中の細菌が肺で炎症を起こす病気です。高齢者や飲み込む力が弱い方に起こりやすく、災害時には口腔衛生の悪化と体力低下が重なることで、リスクが高まると考えられています。 Q: 義歯(入れ歯)を使っている家族がいます。災害時に注意することは? A: 義歯は紛失しやすいため、就寝時は外して、ふた付きの容器に水を張って入れ、置き場所を毎回同じにしてください。容器に油性ペンで氏名を書いておくと、避難所での取り違えや紛失の防止に役立ちます。非常持出袋に義歯ケースと洗浄剤を入れておくと安心です。義歯が合わなくなると食事量が減り、体力が落ちることがあるため、かかりつけ歯科の連絡先も控えておきましょう。 Q: 要介護の家族がいますが、避難所でのお口のケアが不安です。 A: ケアを始める前に、できるかぎり上半身を30度以上起こし、あごを軽く引いた状態にしてください。起こせない方、起こすと体に負担がかかる方は無理をせず、担当の医療者・介護職や避難所の救護班・保健師に相談してください。口腔ケアシートやスポンジブラシがあると介助しやすくなります。ガーゼやシートで拭く場合は、指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。飲み込む力が弱っている方、自分で水を吐き出せない方に水を口に含ませると、誤嚥のおそれがあります。無理にすすがせないでください。汚れの受け皿としてティッシュやガーゼを口の中に置く方法はとらないでください。口の乾きには、口腔用保湿ジェルをごく少量(米粒から小豆大ほど)薄く塗ると楽になることがあります。塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼやスポンジブラシで必ず拭き取ってください。拭き取らずに重ね塗りを続けると、乾いて固まったジェルがはがれ、のどに落ちて誤嚥や窒息の原因になることがあります。のどの奥や上あごの奥には塗らないでください。日頃から使っているケア用品を非常持出袋にも入れておくと、避難所でも普段に近いケアが継続しやすくなります。 Q: 飲み込みにくい(むせやすい)家族がいます。避難所での食事が心配です。 A: とろみ剤があれば備蓄品に加えておくと役立ちます。使用量は製品により異なるため、必ずお使いの製品の表示を確認し、ふだん使っているとろみの段階をメモしておきましょう。ふだんの指示がある方は、そちらを優先してください。避難所では柔らかい食事が十分に手に入らないこともあるため、介護食やレトルトのやわらかい食品も備えておくと安心です。 Q: 自治体として、まず何から始めればいいですか? A: 3つのステップをおすすめしています。まず、備蓄品に口腔ケア用品が含まれているか点検すること。次に、庁内の関係部署(防災・保健・福祉・介護)で情報を共有する勉強会を開くこと。そして、次回の防災訓練にお口のケアの要素を試験的に組み込むことです。いずれも大きな予算をかけずに始められます。 Q: どの部署が担当するのが適切ですか? A: 防災危機管理課を起点に、保健福祉課、高齢者福祉課、地域包括支援センター、学校教育課(学校保健)との連携が効果的です。口腔防災は複数部署にまたがるテーマですが、だからこそ住民の健康と安全を守る横断的な取り組みとして価値があります。 Q: 予算が限られていますが、導入は可能ですか? A: はい、小さく始めることが可能です。既存の防災訓練に口腔ケアの情報提供を加える、備蓄品に少量の口腔ケア用品を追加する、職員研修(90分程度)を実施するなど、既存の仕組みに乗せる形で始められます。 Q: 要配慮者支援との関連を教えてください。 A: 高齢者、障がいのある方、要介護者は、口腔のトラブルによる健康への影響を受けやすい方々です。義歯の管理、口腔乾燥への対応、嚥下(飲み込み)機能への配慮は、要配慮者の健康リスク(誤嚥性肺炎・低栄養)の軽減を目指す具体的な施策の一つになります。要配慮者台帳に嚥下・義歯情報を加える検討も有効です。 Q: 避難所運営マニュアルに口腔ケアを組み込めますか? A: はい。避難所の開設チェックリストに口腔ケア用品の配備項目を追加する、巡回時の口腔スクリーニング手順を加える、口腔ケアブースの設置要領を盛り込むなどの形で、既存のマニュアルに段階的に組み込むことができます。 Q: 他の自治体での導入事例はありますか? A: 現在、モデル自治体でのパイロット導入を準備中です。先行事例が整い次第、導入フローや効果検証の結果を共有してまいります。ご関心のある自治体には、個別にご説明させていただきます。 Q: 歯科医療者としてどのように参画できますか? A: 地域での啓発活動への参加、自治体向け研修での講師・監修、防災訓練での口腔スクリーニングの実施、教材・コンテンツの専門的な監修など、さまざまな形で関わっていただけます。詳しくはお問い合わせください。 Q: アドバイザー認定制度について教えてください。 A: ベーシック(市民・多職種向け)、プロフェッショナル(医療従事者向け)、インストラクター(指導者向け)の3階層で、地域の担い手を育成する仕組みを設計中です。制度の詳細が確定次第、改めてご案内いたします。 Q: 多職種(介護職、栄養士、救急隊員など)も関われますか? A: はい、むしろ多職種の参画が不可欠と考えています。口腔防災は歯科だけの課題ではなく、介護、栄養、救急、行政など幅広い専門性が必要です。それぞれの視点からの参画をお待ちしています。 Q: 企業としてどのような連携が可能ですか? A: CSR/ESGの観点からのプロジェクト協賛、防災用品・口腔ケア物資の提供、社員向け防災研修での導入、BCP(事業継続計画)への口腔ケア視点の組み込み、地域貢献活動との連携など、さまざまな形があります。まずはお気軽にご相談ください。 Q: 商品やサービスの宣伝に使われませんか? A: 本プロジェクトは公衆衛生の向上を目的とした公益活動です。特定の製品の医療効果を断定する表現や過度な商業広告は、協会の基準により制限します。公益性を損なわない表現管理を徹底しており、すべての広報物は事務局の確認を経て公開されます。 ## 災害時のお口のケア(緊急ガイド) URL: https://oral-bousai.jp/emergency 監修の状態: 緊急ガイドの手順は、本プロジェクトの実務資料(起草版・監修前)をもとに再構成し、注意書きの一部は災害時のお口のQ&Aの文言にそろえたものです。資料・Q&Aとも監修前の内容で、監修を経て順次更新します。 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 のどに詰まらせて、声が出せない・咳ができない・顔色が青くなるときは、すぐに119番に連絡してください。 通信が混み合っていても、119番はつながることがあります。避難所にいる方は、救護班・保健師にも直接お伝えください。 関連: 救急車を呼ぶ目安 https://oral-bousai.jp/qa/when-to-call-119 ### 水がほとんどない——それでも歯みがきはできます 対象: 避難中の方 ※【約30ml(紙コップに指1本分ほど)の水があれば歯みがきはできます】水がないから歯みがきは無理、とあきらめないでください。約30mlの水で磨けます。被災生活で口の中の清潔が保てなくなると、肺炎や持病の悪化のリスクが高まると考えられています。肺炎には、口の中の細菌が誤って肺に入って起きる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」も含まれます。歯みがきは、その入口を減らすためにいますぐできることのひとつです。 1. 約30mlの水をコップに用意する — 紙コップに指1本分ほどの深さが目安です。この水は「すすぎ用」なので、最初に全部使わないのがコツです。 2. 歯ブラシを水で軽く濡らして磨く — 水が乏しいときは、練り歯みがき剤は使わないほうがすすぎの水を節約できます。歯と歯ぐきの境目、奥歯のかみ合わせ面を中心に、1本ずつ小刻みに磨きます。 3. 合間に歯ブラシの汚れをティッシュで拭き取る — 磨いている途中でこまめにブラシの汚れをティッシュやガーゼで拭き取ると、少ない水でも汚れを口に戻さずに済みます。 4. 残りの水を2〜3回に分けて口に含み、すすぐ — 一度に全部の水を使わず、少量ずつ2〜3回に分けて口に含み、頬を動かしてブクブクしてから吐き出す、を繰り返します。飲み込む力が弱っている方、自分で水を吐き出せない方に水を口に含ませると、誤嚥のおそれがあります。無理にすすがせないでください。 歯ブラシがないときは、清潔なガーゼやハンカチ、口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻き、歯の表面を前歯から奥歯へ順にこすって歯垢(プラーク:歯の表面につく細菌のかたまり)を拭き取ります。口腔ケアシート(歯みがきシート)は1回1枚、面を替えながら「歯の表→裏→かみ合わせ→歯ぐき・頬の内側」の順で拭くと効率的です。洗口液(マウスウォッシュ)があれば併用すると汚れが落ちやすくなります。 ※【指に巻いて拭くときの注意】ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。口の中でちぎれて残ると、窒息や誤嚥の原因になります。ガーゼやシートは指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。ご家族など、ほかの方の口を拭くときは、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。 ※【飲む水は、我慢しないでください】「トイレに行きたくないから」と水分を控えると、口が乾いて細菌が増えるだけでなく、脱水やエコノミークラス症候群(血の固まりが血管に詰まる病気)のリスクも高まります。飲む水と、お口をきれいにする水は、削らないでください。※心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 エコノミークラス症候群の予防と、すぐに救護所や119番に相談が必要なサインは、Q&A「車中泊で気をつけることは何ですか」にまとめています。 関連: 車中泊で気をつけること https://oral-bousai.jp/qa/car-overnight-precautions ※【すぐに相談が必要なサイン】片方の脚の腫れ・痛み・色の変化・左右差。急な息切れ、胸の痛み、意識が遠のく感じ(血のかたまりが肺に飛んだサインのおそれがあり、命に関わります。ためらわず救護所または119番へ) 備蓄の量や水の割り当ての考え方は「家庭向け お口の防災チェックリスト」ガイドに詳しくまとめています。 関連: 家庭向け お口の防災チェックリスト https://oral-bousai.jp/resources/household-checklist ### 入れ歯をなくした・壊れた 対象: 義歯の方 ※【「ないまま我慢」がいちばん危険です。救護班に申し出てください】噛めない状態が続くと食事量が減り、低栄養につながります。避難所の救護班・保健師に「入れ歯をなくした」と必ず申し出てください。大規模災害ではJDAT(日本災害歯科支援チーム)などの巡回歯科班が応急対応を行い、本格的な治療・調整は地域の歯科医療機関に引き継がれます。 保険証を持ち出せなくても、あきらめないでください。過去の大規模災害では、氏名等の申告で歯科受診できる特例措置が設けられています。まずは救護班・保健師に申し出てください。 1. 洗浄剤がないとき:毎食後に外して拭う — 水が足りないときは、清潔なガーゼ、または口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)で義歯の内側・外側の汚れを拭き取ります。アルコールや除菌成分・香料の入ったウェットティッシュしか手元にないときは、拭いたあとに水を含ませたガーゼで拭き直してから装着してください。口に入れたままでは清潔になりません。少なくとも1日1回は必ず外して手入れします。 2. 部分入れ歯はバネ(金属部分)を重点的に — バネの内側は汚れが残りやすい場所です。歯ブラシや細い綿棒でこすり落とします。 3. 中性洗剤を使えるのは、すすげる水があるときだけ — 義歯洗浄剤の代わりに食器用中性洗剤を薄めてブラシ洗いできますが、これは流水で十分にすすげるだけの水があるときに限ります。すすぎ水を確保できないときは洗剤を使わず、手順1の拭き取りだけにしてください。洗剤が残ったまま口に戻すと、粘膜への刺激や、吐き気・下痢の原因になることがあります。研磨剤入りの歯みがき剤は義歯を傷つけるので使いません。 ※【やってはいけないこと】熱湯に入れる(変形します)、家庭用の塩素系漂白剤に漬ける(薄めても使わないでください。金属のバネが傷み、薬液が残ると口の粘膜を痛めます)、乾いたまま放置する(ひび割れ・変形の原因になります)。この3つは避けてください。 【これ以上なくさないために】 ☐ 就寝時は外して、フタ付きの義歯ケースに水を張って入れ、置き場所を固定する(乾燥すると変形の原因になります) ☐ ティッシュに包んで置くのは厳禁(ゴミと間違えて捨てられる・踏んで割れる、といった事故が起こりやすいと考えられます) ☐ 義歯ケースに油性ペンで氏名を書く(避難所の洗面所での取り違え・紛失防止に有効です) 義歯の備えと手入れの詳細は「高齢者・介護者向け 備えガイド」にまとめています。 関連: 高齢者・介護者向け 備えガイド https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide ### 口が乾いてつらい 対象: 避難中の方 対策の基本は、保湿剤で外から補うことです。唾液腺マッサージも慣習的に紹介されています。唾液には細菌を洗い流し、粘膜を守る働きがあります。避難生活では水分の我慢・ストレス・薬の副作用が重なって唾液が減り、口がねばつき、痛み・口臭・飲み込みにくさが出ます。 1. 耳下腺(じかせん)マッサージ — 指を数本そろえて耳たぶのやや前(上の奥歯のあたりの頬)に当て、円を描くように後ろから前へ10回ほど回します。 2. 顎下腺(がっかせん)マッサージ — あごの骨の内側のやわらかい部分を、耳の下からあご先に向かって4〜5か所、親指でやさしく各5回ずつ押します。 3. 舌下腺(ぜっかせん)マッサージ — あご先のとがった部分の真下から、両手の親指で舌を押し上げるようにゆっくり10回押します。 4. 行う場合の注意 — 脱水のあるときにどれだけ唾液が増えるのか、臨床的にどの程度意味があるのかは明確ではありません。行う場合も、水分補給や保湿の代わりにはなりません。痛みや腫れがあるところは触らないでください。 【保湿用品が手に入ったら】 ☐ 口腔保湿ジェルは、ごく少量(米粒から小豆大ほど)を指や綿棒にとり、舌や頬の内側に薄く伸ばす。のどの奥や上あごの奥には塗らない(塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼやスポンジブラシで必ず拭き取る。拭き取らずに重ね塗りを続けると、乾いて固まったジェルがはがれ、のどに落ちて誤嚥や窒息の原因になることがあります) ☐ 洗口液はアルコールフリー・低刺激タイプを(アルコール入りは乾燥を悪化させることがあります) ☐ 唇の乾燥・ひび割れにはリップクリームを(唇の痛みは食事量低下につながります) ※水分は「一気に」ではなく「こまめに少しずつ」。トイレを心配して水を我慢すると、脱水・口腔乾燥・エコノミークラス症候群のすべてのリスクが上がります。むせやすい方は次のセクションのとろみ付けを活用してください。※心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 口腔乾燥対策の詳細は「高齢者・介護者向け 備えガイド」にまとめています。 関連: 高齢者・介護者向け 備えガイド https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide ### むせやすい家族がいる 対象: ご家族 避難所で配られる食品には、飲み込む力が弱った方には危険なものが少なくありません。「普段の食事ならなんとか食べられる」方ほど要注意です。まず、次の食品と食べ方に気をつけてください。 【飲み込む力が弱った方に危険な避難食】 ※注意: 乾パン・菓子パン・クラッカー(口の水分を奪ってパサつき、のどに詰まりやすい。スープや牛乳などの水分に浸して湿らせ、小さくちぎって) ※注意: 餅・こんにゃくゼリー(窒息事故の代表格。避難所では避けるのが無難です) ※注意: 板海苔・わかめ・青菜の葉(上あごや喉に貼り付きます) ※注意: カップ麺・味噌汁などの「さらさらした熱い液体」(すすり込みでむせやすい。少し冷まし、必要ならとろみ剤を) ※注意: パンとお茶を「交互に流し込む」食べ方(口の中で混ざった状態が最も誤嚥しやすくなります。飲み込んでから次の一口へ) 1. 工夫1:ふやかす・つぶす — アルファ化米は規定より多めの水でやわらかく戻す、パンはスープや牛乳に浸すなど「水分を含ませて均質にする」のが基本です。 2. 工夫2:姿勢を整える — できるだけ椅子に深く腰かけ、軽くあごを引いて食べます。寝たままの食事は最も誤嚥しやすい姿勢です。座れない場合も上体を起こし、食後すぐに横にならないでください。 3. 工夫3:一口量と交互嚥下(こうごえんげ) — 一口はティースプーン1杯程度。口の中のものを飲み込んでから、とろみ付きの水分をひと口、と交互に飲み込むと、喉に残った食べかすを流せます(口に入れたまま水分で流し込む食べ方とは違います)。 ※【このサインが出たら、すぐ救護班へ】食事中に毎回むせる、痰が増えた、微熱が続く、ぼんやりしている——は誤嚥性肺炎のサインのことがあります(高齢者は高熱が出ないことも多い)。救護班・保健師にすぐ相談してください。 とろみ剤の使い方・備蓄量の計算は「高齢者・介護者向け 備えガイド」に詳しくまとめています。 関連: 高齢者・介護者向け 備えガイド https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide ### 子どもの歯みがき 対象: ご家族 学童のお子さんには、大人と同じ「約30mlの水での歯みがき」の手順が使えます。乳幼児はガーゼでの拭き取りが基本です。年齢ごとのポイントを押さえてください。 【年齢別のポイント】 ☐ 乳幼児(0〜5歳):湿らせたガーゼでの拭き取りが基本です。歯が生える前は歯ぐきを拭きます(洗口液は誤飲のおそれがあるため使いません。乳幼児用の口腔ケアシートも使えます) ☐ 学童(6〜12歳):自分で磨ける年齢でも、災害時は不安で手が止まりがち(親が声かけ・仕上げ確認をしてあげてください) ☐ 「食べたら拭く・磨く」を家族のルールにする(水がなくてもシートやマッサージでできることがあります) 家族構成別の備えは「家庭向け お口の防災チェックリスト」ガイドにまとめています。 関連: 家庭向け お口の防災チェックリスト https://oral-bousai.jp/resources/household-checklist ### 避難が長引いたら:1日1回はていねいに 対象: 避難中の方 ※【1日1回しかできないなら、寝る前を選んでください】眠っている間に、唾液が少しずつ気管に入り込んでいることがあります。むせないため本人も周りも気づきにくく、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」と呼ばれます。これが高齢の方の肺炎の原因のひとつと考えられています。口の中を清潔にしておくと、唾液に含まれる細菌が減り、肺炎を起こしにくくなると考えられています。回数を増やせないときは、寝る前の1回をていねいに行ってください。 【避難生活の口腔ケア日課(水の目安つき)】 ☐ 朝食後:歯みがき→少量の水でうがい。義歯は外して拭き洗い(うがいは約30ml(15ml×2回)) ☐ 昼食後:うがい+口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)や清潔なガーゼで歯の表面を拭く。口が乾く人は保湿ジェル+唾液腺マッサージ(うがいは15ml×1〜2回) ☐ 夕食後〜就寝前:1日で最もていねいに。歯みがき→舌・粘膜の清掃→うがい→保湿ジェル。義歯は外して洗い、水を張ったケースで保管(うがいは約30ml(15ml×2回)) 自分でうがいができ、水をきちんと吐き出せる方であれば、30mlを一度に含むより、15mlずつ2回に分けてブクブクするほうが汚れを外に出しやすいと考えられています。むせやすい方、寝たままの方、自分で吐き出せない方には無理にうがいをさせず、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にしてください。うがいは歯みがきや拭き取りの代わりにはなりません。吐き出す先はポリ袋+ティッシュで。週1回は、口臭の悪化・舌の白い汚れ(舌苔:ぜったい)・口内炎・食事中のむせの増加がないか確認し、1つでも悪化していれば巡回歯科班や救護班に相談してください。 介助が必要な方のケア手順を含む詳細は「高齢者・介護者向け 備えガイド」の日課表にまとめています。 関連: 高齢者・介護者向け 備えガイド https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide ### 避難所を運営している方へ 対象: 避難所運営者 【開設〜運営期にお願いしたいこと】 ☐ 口腔ケアコーナーを設置する(手洗い場・給水所の近くに、鏡・照明・ゴミ袋・コップ置き場を確保。掲示文例:「歯みがき・入れ歯洗いはこちらでお願いします」) ☐ 歯ブラシは衛生上、1人1本の個別配布とし、共用しない ☐ うがい・歯みがき用の水を飲料水と別枠で見込む(目安として1人1日コップ1杯(約200ml)) ☐ 館内放送・掲示で口腔ケアを呼びかける(掲示文例:「食後と寝る前の歯みがきで、口の中を清潔に保ちましょう。口の中の細菌が減り、肺炎を起こしにくくなると考えられています。水が少ないときは洗口液や口ふきシートをご利用ください(洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください)」) ☐ 義歯(入れ歯)使用者・介助が必要な方を把握する(食事でむせる・口の乾き・義歯の紛失は要フォローのサイン) ☐ 在宅避難者・車中泊避難者にも物資配布と声かけの経路を確保する ※【断水を理由に口腔ケアを中止しないでください】少量の水を紙コップにとって歯ブラシをすすぎながら磨く、洗口液や口腔清拭シートを併用する、義歯は毎日はずして清掃する、といった代替手順があります。水が足りないことを理由に、避難者への呼びかけをやめないでください。 スクリーニング票の様式や備蓄基準は「自治体向け 導入ガイド」にまとめています。 関連: 自治体向け 導入ガイド https://oral-bousai.jp/resources/municipality-guide ### 歯科の支援を受けるには 対象: 避難中の方 大規模災害では歯科の支援チームが被災地に入ります。JDAT(日本災害歯科支援チーム)は2022年に創設され、能登半島地震(2024年)では計127チームが派遣されました。避難所の運営本部・救護班・保健師に伝えれば、こうした巡回支援につながります。「避難所で歯科に相談するのは大げさ」ではありません。遠慮なく声をかけてください。 【そのまま使える伝え方】 ☐ 入れ歯をなくした・壊れた → 救護班・保健師・避難所運営本部へ(「入れ歯をなくして食事が噛めません。歯科の巡回や相談窓口はありますか」) ☐ むせて食べられない → 食料配布の担当・保健師へ(「飲み込む力が弱く、普通の水やパンでむせます。おかゆ・やわらかい食品・とろみ剤はありますか」) ☐ 口が乾いて痛い・しゃべりにくい → 救護班・巡回の看護師へ(「口の中がカラカラで痛みがあります。口腔ケア用品(保湿ジェルやスポンジブラシ)の支援物資はありますか」) ☐ 家族の口のケアができない → 保健師・介護職の応援スタッフへ(「寝たきりの家族の口のケアの仕方を教えてください。歯科衛生士さんの巡回はありますか」) ☐ 発熱・痰の増加・元気がない → 救護班(医療)へ(「食事のたびにむせていた家族が発熱しました。誤嚥性肺炎が心配です」) ※【断られても、一度で諦めないでください】物資や巡回チームは日ごとに変わります。翌日また別の担当者に伝えてください。ご本人が言い出せない場合は、家族や隣の避難者が代わりに伝えてかまいません。「あの方、食事のたびにむせています」の一言が、支援につながるきっかけになります。支援を求めることは「わがまま」ではなく、正当な医療ニーズの申告です。 支援の求め方の詳細は「高齢者・介護者向け 備えガイド」に、支援体制の全体像は「自治体向け 導入ガイド」にまとめています。 関連: 高齢者・介護者向け 備えガイド https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide / 自治体向け 導入ガイド https://oral-bousai.jp/resources/municipality-guide ## 災害時のお口のQ&A(43問) URL: https://oral-bousai.jp/qa 各問に「根拠の種類」と「監修の状態」を記載しています。引用する際は、回答とあわせて監修の状態も示してください。 ### Q: 歯が痛みます。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】痛み方によって原因は異なりますが、痛みの強さだけで自己判断はできません。何もしていなくてもズキズキ痛む、夜に痛みで目が覚める場合は、より重い状態の可能性があります。ひどくなる前に、早めに救護班・保健師や歯科へ相談してください。市販の痛み止めは、持病・飲んでいる薬・妊娠中などによっては体に合わないことがあるため、心配な方は飲む前に救護班・保健師・薬剤師に確認してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 顔やあごが大きく腫れている - 口が開けにくい、飲み込みにくい、息がしにくい(ためらわず119番または救護所に連絡してください) - 高い熱がある - 痛み止めを飲んでもまったく効かない - 持病や妊娠、飲んでいる薬があり、市販の痛み止めを飲んでよいか分からない 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【持病のある方・妊娠中の方は、市販の痛み止めを飲む前に相談してください】腎臓・心臓・肝臓の病気がある方、胃や十二指腸の潰瘍がある(あった)方、ぜんそくで痛み止めが合わなかったことがある方、血をさらさらにする薬を飲んでいる方、妊娠中・授乳中の方は、市販の痛み止めが体に合わないことがあります。飲む前に救護班・保健師・薬剤師・かかりつけ医に相談してください。避難生活では水分が不足しやすく、脱水気味のときは特に注意が必要です。また、決められた量を超えて飲んだり、複数の痛み止めを重ねて飲んだりしないでください。 ※【むし歯の穴に薬を詰めないでください】市販の鎮痛用の液剤や飲み薬を、むし歯の穴に詰める方法が語られることがあります。しかし、かえって痛みが強くなったり、歯ぐきが荒れて炎症を起こしたりすることがあります。行わないでください。痛み止めは、飲み薬として決められた量を使ってください。 ※【自己判断で歯を抜こうとしないでください】災害時であっても、抜歯は歯科医療者が行う処置です。自分で抜こうとすると出血や感染の危険があります。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 痛み方から想定される状態の分け方、市販の痛み止めを避けたほうがよい方の範囲、受診の目安について、監修者の確認を受けていません。ここに書いた目安は診断ではありません。市販の痛み止めを飲んでよいかどうかは、持病・服用中の薬・妊娠の有無などによって変わるため、ここでは一般的な注意しか示していません。実際の原因や薬の可否は、歯科医療者・医師・薬剤師が確かめる必要があります。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/severe-toothache ### Q: 顔やあごが腫れてきました。急いだほうがよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】はい、急いでください。口が開けにくい・飲み込みにくい・息がしにくいという症状をともなうときは、命に関わる可能性があります。ためらわず119番または救護所に連絡してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 口が開けにくい - 飲み込みにくい、よだれが垂れる - 息がしにくい、呼吸が苦しい - 腫れが急速に広がっている - 高い熱をともなう 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【迷ったら連絡してください】災害時は「こんなことで呼んでよいのか」とためらいがちですが、腫れが広がって気道が狭くなると危険です。判断は医療者に委ねてかまいません。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 緊急受診が必要な症状の列挙について、監修者の確認を受けていません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/face-swelling ### Q: 口の中の出血が止まりません A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】清潔なガーゼやハンカチを出血しているところに当て、10〜20分ほど噛み続けて圧迫してください。それでも止まらないときは、救護班または119番に連絡してください。噛み込んでしまう方、自分で吐き出せない方、意識がはっきりしない方、認知症のある方、小さなお子さんには、口の中にガーゼを入れたままにせず、すぐに救護班・医療者に連絡してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 圧迫しても止まらない - 大量に出血している - 顔色が悪い・気分が悪い 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【ご自分で押さえられない方の場合】ガーゼは介助する方が指で押さえ続け、端は必ず口の外に出しておいてください。押さえている間はそばを離れないでください。噛み込んでしまう方、自分で吐き出せない方、意識がはっきりしない方には、口の中にガーゼを入れたままにせず、すぐに救護班・医療者に連絡してください。入れたまま眠らないでください。 ※【何度も確認しないでください】止まったか気になって途中でガーゼを外すと、固まりかけた血が取れて再び出血します。時間を決めて押さえ続けてください。 ※【血をさらさらにする薬を飲んでいる方へ】血をさらさらにする薬を飲んでいる方は、出血が止まりにくいことがあります。押さえる時間の目安を待たずに、早めに救護班・医療者に相談してください。服薬していることを必ず医療者に伝え、自己判断で薬をやめないでください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 圧迫止血の時間および受診の目安について、監修者の確認を受けていません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/bleeding-wont-stop ### Q: 口の中をけがしました。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】出血しているときは清潔なガーゼで押さえてください。傷が深い、開いている、異物が入っている場合は、医療者の処置が必要です。救護班に相談してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 出血が止まらない(押さえても止まらないときは、救護班または119番に連絡してください) - あごが動かない・かみ合わせがずれた - 意識がもうろうとしている(ためらわず119番に連絡してください) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【抜けた歯は捨てないでください】抜け落ちた歯は、状況によっては元に戻せることがあります。乾燥させないよう牛乳や生理食塩水に浸すか、それらがなければ本人の唾液で湿らせた状態で持参し、できるだけ早く歯科医療者に相談してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 抜けた歯の保存方法(保存液の選択・時間の目安)について、監修者の確認および公的資料の確認が済んでいません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/mouth-injury ### Q: 歯ぐきが痛い・腫れています。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】歯周病や親知らずのまわりの炎症が疑われます。痛む場所は刺激せず、やわらかい歯ブラシで歯と歯ぐきの境目をやさしく清掃し、しみない範囲で口をすすいでください。他の人の薬や以前の残り薬を自己判断で飲まないでください。発熱・寒気・口が開けにくい・唾を飲み込むとのどが痛い、のいずれかが出たら至急、医療者に連絡してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 発熱や寒気がある - 口が開けにくくなってきた - 唾を飲み込むとのどが痛い - 腫れが首やあごの下まで広がってきた - 息がしにくい、呼吸が苦しい 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【至急連絡が必要なサイン】奥歯の痛みや歯ぐきの腫れから、発熱・寒気・口が開けにくい・唾を飲み込むとのどが痛い、という症状に進んだときは危険なサインです。炎症が首やあごの奥に広がっている可能性があります。救護班・保健師、または119番へ至急連絡してください。 ※【洗口液とうがいの水について】飲み込む力が落ちている方、意識がはっきりしない方、小さなお子さんには、うがい薬・洗口液を使わないでください。飲み込んでしまったり、むせて気管に入ったりするおそれがあります。これらの方には、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にしてください。意識がはっきりしない方の口の中には手や指を入れず、口のケアのやり方を救護班・医療者に相談してください。また、うがいには必ず飲める水を使い、川の水・雨水・生活用水など飲用でない水は使わないでください。 ※【持病や飲んでいる薬を必ず伝えてください】糖尿病のある方、抗がん剤やステロイドを使っている方、骨粗しょう症などで骨に関する注射・飲み薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブなど)を使っている方は、炎症が重くなりやすかったり、治りにくかったりすることがあります。これらの治療を受けていることを、相談するときに必ず医療者へ伝えてください。自己判断で様子を見ず、早めに相談してください。 ※【他の人の薬や、以前の残りの薬を自己判断で飲まないでください】抗菌薬は、症状や持病、飲み合わせによって選び方が変わります。避難所で分けてもらった薬や、以前処方された残りの薬を自分の判断で飲むことは避けてください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 歯ぐきの痛みの原因の見立て、うがい薬・洗口液の使い方、抗菌薬の要否を相談する目安、持病や服薬がある場合の受診の急ぎ方について、監修者の確認を受けていません。ここに書いた内容は診断ではなく、実際の原因は歯科医療者が確かめる必要があります。また、冷却・禁煙・洗口といったセルフケアが災害時の歯ぐきの炎症をどの程度和らげるかについて、効果を示す研究は確認できていません。避難生活で一般に行われている対処をまとめたものです。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/gum-pain ### Q: 車中泊で気をつけることは何ですか A: こまめな水分補給と、時々からだを動かすことです。同じ姿勢が続き水分が不足すると、脚の静脈に血のかたまりができる「エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)」のリスクが高まるとされています。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 片方の脚の腫れ・痛み・色の変化・左右差 - 急な息切れ、胸の痛み、意識が遠のく感じ(血のかたまりが肺に飛んだサインのおそれがあり、命に関わります。ためらわず救護所または119番へ) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【先にお読みください — もんではいけないとき】片方の脚が腫れている、痛む、赤い・色が変わっている、熱をもっている、左右で太さが違う——このようなときは、その脚をもまないでください。すでにできた血のかたまりが動いてしまうおそれが指摘されています。すぐに救護所や医療者に相談してください。 ※【血をさらさらにする薬を飲んでいる方へ】いちばん大切な予防は薬を続けることです。持ち出せなかった、残りが少ないという場合は、早めに救護所・薬剤師・巡回の医療チームにご相談ください。 根拠の種類: 公的機関のガイドライン・行政資料に記載があります 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/car-overnight-precautions ### Q: 口やあごのことで、救急車を呼んだほうがよいのはどんなときですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 息がしにくい・呼吸が苦しい - 飲み込めない、よだれが垂れる - 口が開かない - 出血が止まらない - 意識がもうろうとしている 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【からだ全体のことは119番です】災害時は通報が集中することがありますが、命に関わる症状で連絡をためらう必要はありません。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 緊急通報の目安について、監修者の確認を受けていません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/when-to-call-119 ### Q: 歯は痛くないのですが、歯科に相談したほうがよい症状はありますか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】あります。唾を飲み込むときの痛み、口が開けにくい、顔やあごの腫れ、熱は、痛みが強くなくても急いで相談すべきサインです。痛みの強さと、炎症の重さは一致しません。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 唾を飲み込むときに痛む(嚥下痛) - 口が開けにくい、大きく開けられない(開口障害) - 顔・あご・首の腫れが広がっている - 熱がある、寒気がする、ぐったりしている - 息がしにくい、よだれが垂れて飲み込めない 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【痛みが消えた=治った、ではありません】むし歯が進んで歯の神経がだめになると、いったん痛みが消えることがあります。痛みが引いたあとに腫れや熱が出てきた場合は、炎症が広がっているおそれがあります。自己判断で様子を見ないでください。 ※【息がしにくい・飲み込めないときは119番です】あごや首の腫れが広がって空気の通り道が狭くなると、命に関わります。ためらわず119番、または避難所の救護班・保健師に連絡してください。「こんなことで」と遠慮する必要はありません。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: ここに挙げた症状と緊急度の対応づけ、および「痛みがなくても重症のことがある」という説明について、監修者の確認を受けていません。歯や歯ぐきの炎症が全身に及ぶ重い感染に至る頻度は高いものではありませんが、正確な頻度はこのページでは示していません。症状の軽重をご自身で決めず、当てはまるものがあれば救護班・保健師・歯科医療者に伝えてください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/painless-warning-signs ### Q: 避難生活で口が乾いてつらいです A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】口の乾きは、痛み・口臭・飲み込みにくさにつながります。まず、トイレを気にして水分を我慢しないでください。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。そのうえで、水を少量ずつ口に含む、マスクをつける、口腔用保湿ジェルを薄く塗る、といった工夫で楽になることがあります。ガムは、むせやすい方・飲み込みに不安のある方・認知症のある方・自分で口の中のものを出せない方・小さなお子さんには使わないでください。窒息につながります。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - ガム・食べ物・保湿ジェルの塊などが口やのどに詰まり、息が苦しそう、声が出ない、顔色が悪い(ただちに周囲の人を呼び、119番) - 水を飲んでも乾きがおさまらず、尿がほとんど出ない、ぼんやりして呼びかけへの反応が鈍い(脱水の疑い。反応が鈍いときは口から飲ませず、すぐに救護所または119番へ) - 飲水量を制限されている方で、足のむくみ・体重増加が出てきた(すぐに救護班・主治医へ)。息苦しい・横になると苦しいときは、ためらわず119番に連絡してください(つながらないときは、救護所・近くの医療救護班に伝えてください) - 痛みや腫れで水も飲み込めない、口の中や舌に白い苔状のものや広い潰瘍がある、発熱を伴う(救護所・歯科班へ) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【水分を我慢しないでください(ただし、飲水量を指示されている方は主治医の指示が優先)】トイレを気にして水分をひかえると、脱水や、動かずにいることで起こる血栓(いわゆるエコノミークラス症候群)のリスクが高まります。飲む水は削らないでください。ただし、心臓の病気・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)・肝臓の病気(腹水がある方など)で、主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。自己判断で水を増やすと、体に水がたまり、むくみや息苦しさ(溢水・肺水腫)を招くことがあります。 ※【ガムは、使ってよい人が限られます】噛むことは唾液が出るきっかけになるといわれますが、次の方には使わないでください。むせやすい方、飲み込みに不安のある方(嚥下機能が低下している方)、認知症のある方、自分で口の中のものを出せない方、介助が必要な方、小さなお子さん。飲み込んでしまったり、口の中に残ったガムがのどに詰まったりすると、窒息につながります。避難所は見守りの手が足りないことが多いため、迷うときは使わない選択をしてください。 ※【保湿ジェルの使い方と、重ね塗りの危険】1回にとる量はごく少量(米粒から小豆大ほど)です。指や綿棒、スポンジブラシにとり、舌や頬の内側に薄く伸ばします。塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼやスポンジブラシで必ず拭き取ってください。拭き取らずに重ね塗りを続けると、乾いて固まったジェルがはがれ、のどに落ちて誤嚥や窒息の原因になることがあります。のどの奥や上あごの奥には塗らないでください。むせやすい方は、ごく少量から始めて様子をみてください。 根拠の種類: 慣習的に行われていますが、根拠や臨床的意義は明確ではありません 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目には、既存の公開資料からの再構成にとどまらない実務上の工夫(マスクの着用、入れ歯の粘膜面への保湿ジェル使用、ガムの可否、歯みがき前に口を潤す手順)が含まれます。歯科・摂食嚥下の専門家の確認を受けるまでは暫定の内容として扱ってください。唾液腺マッサージは従来から慣習的にすすめられてきましたが、災害時の脱水状態における効果や臨床的意義を示す十分な根拠は確認できていません。マスク・保湿ジェルによる乾燥対策も、口腔ケアの実務で広く行われている工夫であり、避難生活での効果を数値で示した研究に基づくものではありません。飲水量は持病により制限されることがあり、本項目は主治医の指示に優先しません。薬の副作用で口が乾いている場合も、自己判断で薬をやめず医療者に相談してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/dry-mouth ### Q: 避難所で歯磨きをしてもよいのでしょうか。水を使うのが申し訳ないです A: してください。約30mlの水でできますし、口の中が不潔なままだと肺炎や口の中の感染のリスクが高まると考えられています。遠慮する必要はありません。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/brushing-in-shelter-ok ### Q: 避難生活でも、よく噛んで食べたほうがよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】むせずに普段どおり食べられている方は、一口を少なめにして、ゆっくりよく噛んでください。噛むと唾液が出て、口の中がうるおい、飲み込みやすくなります。ただし、噛むことは歯みがきや水分補給の代わりにはなりません。むせやすい方・飲み込む力が弱っている方・認知症のある方・ご自分で口の中のものを出せない方・小さなお子さんには、ガムや噛みごたえのある食べ物をすすめないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 食事中や食後にひどくむせる、咳き込みが続く、声がガラガラになる - のどに詰まって声が出せない、息ができない、顔色が変わる(ただちに119番。背中をたたくなどの手当ては、やり方を知っている方が通報と並行して行ってください。知らない場合は、119番の通信指令員の指示に従ってください) - ガム・食べ物・入れ歯を飲み込んでしまった、のどに残っている感じがある - 熱が出て、息苦しさや痰がからむ(誤嚥性肺炎のおそれ) - 痛みや入れ歯が合わないことで、食事や水分がとれない日が続いている 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【先に確認してください(噛むことをすすめてはいけない方がいます)】むせやすい方、飲み込む力が弱っている方、認知症のある方、ご自分で口の中のものを出せない方、小さなお子さんには、ガムや噛みごたえのある食べ物をすすめないでください。のどに詰まらせる、誤って飲み込むおそれがあります。入れ歯が外れやすい方も、ガムは避けてください。食べ物の固さや形で迷うときは、「飲み込む力が弱った家族に、避難所の食事で気をつけるものはありますか」の項目の内容を優先してください。ここから先は、こうした心配のない方に向けた内容です。 ※【水分の量を制限されている方へ】心臓・腎臓の病気(透析を含む)、肝臓の病気などで、飲んでよい水分の量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。自己判断で水分を増やさないでください。口の乾きがつらいときは、うがいや口をうるおす方法について救護班・保健師・医療者に相談してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目には、当プロジェクトが災害支援の実務知見をもとに整理した内容が含まれ、監修者の確認を受けていません。噛むことで唾液の分泌が促されることは広く知られていますが、避難生活でガムを噛むことが口の清潔や体調の維持にどの程度つながるかを示す研究は確認できていません。キシリトールなどの甘味料についても、災害時の環境で得られる効果の程度が明らかでないため、この項目では推奨として扱っていません。噛むことは歯みがきや水分補給の代わりにはなりません。飲み込む力が落ちている方に、噛みごたえのある食品やガムが適するかどうかを判断できるのは、実際にその方を診ている医療者・歯科医療者・言語聴覚士です。挙げた出典のうち外部資料は論点の参考にとどめており、本文の記載がその資料の推奨であることを意味しません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/chewing-and-saliva ### Q: 避難所で口臭が気になります。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】避難生活での口臭には、口の汚れと乾きが関係していると考えられています。歯ブラシで汚れを落とす、口をすすぐ、乾きを防ぐ——これらは多くの場合、まず試していただきたい対処です。歯みがき剤がなくても、歯ブラシを水で濡らして磨くだけで構いません。うがいが難しい方は無理にすすがず、汚れを口の外に拭き取ってください。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、やわらかい歯ブラシで力を入れずに磨いてください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 歯みがき後の出血が、清潔なガーゼで10〜20分押さえても止まらない - 歯ぐきから膿が出る - 頬や顎、顔が腫れてきた - 口の中の痛みに発熱を伴う - 痛みや腫れで食事や水分がとれない 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【血液をさらさらにする薬を飲んでいる方へ】抗凝固薬・抗血小板薬(血液をさらさらにする薬)を飲んでいる方は、歯ぐきからの出血が止まりにくいことがあります。やわらかい歯ブラシを使い、力を入れずに磨いてください。出血したときは清潔なガーゼで押さえながら、止まるのを待たずに早めに救護班・医療者に相談してください。ご自分で押さえられない方の場合は、ガーゼは介助する方が指で押さえ続け、端は必ず口の外に出しておいてください。噛み込んでしまう方、自分で吐き出せない方、意識がはっきりしない方には、口の中にガーゼを入れたままにせず、すぐに救護班・医療者に連絡してください。服薬していることを必ず医療者に伝え、自己判断で薬をやめないでください。 ※【うがいが難しい方・介助が必要な方へ】飲み込む力が弱っている方、自分で水を吐き出せない方に水を口に含ませると、誤嚥のおそれがあります。無理にすすがせないでください。歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にします。安全なやり方はその方の状態によって変わるため、普段の担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に確認してください。 ※【こんなときは相談してください】歯みがきと保湿を続けても強いにおいが取れない、歯ぐきが腫れて膿が出る、歯が浮いたように痛む、歯みがき後の出血が押さえても止まらない——このようなときは、歯や歯ぐきの感染や出血のトラブルが起きている可能性があります。がまんせず、救護所や巡回の歯科班、保健師に相談してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は監修者の確認を受けていません。災害時の口臭について、原因の内訳やそれぞれの対策の効果を数値で示した研究は確認できていません。ここに書いたのは口腔ケアの実務で一般的に行われている考え方であり、効果を保証するものではありません。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方への対応(やわらかい歯ブラシ、出血時は押さえながら早めに相談する)、舌清掃時の嘔吐反射への注意、うがいが難しい方への代替手順は、当プロジェクトによる暫定的な整理であり、専門家の確認が必要です。出血が止まらないときや服薬の扱いについては、必ず医療者の指示を優先してください。出典として挙げた日本口腔ケア学会の資料は、発行年・現行版・URLを確認できていません。強いにおいが続く場合は、進行した歯周病やむし歯、鼻やのど、全身の病気が背景にあることもあるため、自己判断で済ませず相談してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/bad-breath ### Q: 詰め物やかぶせ物が取れました。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】まず口の中から取り出してください。口に入れたままにすると、飲み込んだり気管に入ったりする危険があります。取れたものは捨てずに、ふた付きの容器や袋に入れて歯科への相談まで保管してください(ティッシュに包むとごみと間違えられます)。状態によっては元に戻せることもありますが、判断は歯科医療者が行います。すでに飲み込んでしまったときは、大きさや形にかかわらず、飲み込んだこと自体を医療者に伝えてください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 飲み込んだあとに、むせが続く・息がしにくい・声が出にくい・胸やのどが痛む(息が苦しい・声が出せないときはすぐ119番) - とがったもの・細長いもの・ブリッジなど大きなものを飲み込んだ - 飲み込んだあとに腹痛が続く、吐き気や嘔吐がある、黒い便や血の混じった便が出る - 取れたあとの歯が強く痛み出した - 歯ぐきが腫れてきた、顔が腫れてきた 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【自分で接着剤をつけて戻さないでください】市販の接着剤は口の中に使うものではありません。かみ合わせがずれたまま固定されると、歯や周りの歯を痛めることがあります。また、内側に汚れが残ったまま接着すると、中でむし歯が進むおそれがあります。取れたものを自分ではめ込んで様子を見るのも、外れて飲み込む危険があるため避けてください。 ※【飲み込んでしまったとき — 様子を見るだけにしないでください】小さく丸みのあるものは、自然に便とともに出ていくことが多いとされています。ただし、差し歯やポストのようにとがっているもの・細長いもの、ブリッジのように大きなものは、のどや食道・胃腸を傷つけたり、詰まったりするおそれがあります。大きさや形にかかわらず、飲み込んだこと自体を医療者(歯科・医科・避難所の救護班など)に伝え、指示を受けてください。むせが続く、息がしにくい、声が出にくい、胸やのどが痛むときは、気管に入っている可能性があるため、直ちに連絡してください。息が苦しい、声が出せない、顔色が変わるときは、ためらわず119番通報してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 取れた修復物を再び装着できるかどうかは、その状態と歯の状況によって歯科医療者が判断します。飲み込んだ場合の経過や受診の要否も、補綴物の形状・大きさやご本人の状態によって異なり、ここでの記載は一般的な注意にとどまります。口から取り出すときの顔や体の向き(どちら向きが安全かは麻痺の有無や飲み込みの状態によって変わります)、保管方法および誤飲・誤嚥時の対応について、監修者の確認を受けていません。災害時の対応としての有効性を示す研究は確認できていません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/filling-came-off ### Q: 経口補水液は自分で作れますか。作り方を教えてください A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】市販の経口補水液が手に入るなら、まずそちらを使ってください。手に入らないときは、飲める水1リットルに砂糖40グラム(大さじ約4杯半)と食塩3グラム(小さじ約2分の1)を溶かす作り方が知られています。分量は必ず守り、塩は塩化カリウムを含む減塩タイプではなく、ふつうの食塩を使ってください。意識がはっきりしない方、ぐったりしている方、飲むとすぐ吐いてしまう方には、口から飲ませないでください。乳幼児、腎臓や心臓に持病がある方、透析を受けている方、水分や塩分の制限を受けている方は、飲む前に必ず医療者に相談してください。糖尿病の方も、飲む量と種類について、救護班・保健師・かかりつけの医療者に相談してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりしている(このときは口から飲ませない) - 飲んでもすぐに吐いてしまい、水分がとれない(このときは口から飲ませない) - むせ込みが強く、飲み込めない(このときは口から飲ませない) - 半日以上、尿が出ない、または極端に量が少ない - 唇や口の中がひどく乾き、皮膚をつまむと戻りが遅い - けいれんを起こした(このときは口から飲ませず、ただちに119番) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【作る前に必ずお読みください】市販の経口補水液が手に入る場合は、そちらを優先してください。濃すぎる液も薄すぎる液も、かえって体調を悪くすることがあります。分量は必ず守ってください。乳幼児、腎臓や心臓に持病がある方、水分や塩分の制限を受けている方、透析を受けている方は、自分の判断で飲まず、必ず医療者に相談してください。糖尿病の方も、飲む量と種類について、救護班・保健師・かかりつけの医療者に相談してください。 ※【口から飲ませてはいけないとき】次のようなときは、口から飲ませないでください。むせて気管に入り、窒息や肺炎を起こす危険があります。(1)意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い(2)ぐったりして自分で座っていられない(3)飲んでもすぐに吐いてしまう(4)むせ込みが強く、飲み込めない。このようなときは無理に飲ませず、すぐに避難所の救護班・保健師に伝えるか、119番に連絡してください。 ※【飲み込みに不安がある方へ】むせやすい方、ふだんからとろみをつけた飲み物を使っている方は、無理に量を飲ませないでください。上体を起こし、少量ずつ、飲み込んだことを確かめてから次を口に入れてください。むせ込んだら中止し、支援者に相談してください。口の中が乾いていると飲み込みにくくなるため、飲む前に少量の水で口の中をうるおすと楽になることがあります。このとき、ティッシュや脱脂綿など水に濡れると崩れるものを口の中に入れないでください。かけらが残ると窒息や誤嚥の原因になります。 ※【作った液はその日のうちに】作り置きした液は雑菌が増えることがあります。その日のうちに飲みきり、残りは廃棄してください。容器は使うたびに洗ってください。レモン果汁などを少量加えると飲みやすくなりますが、味を調える程度にとどめ、砂糖と塩の量は変えないでください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 水1リットルに対する砂糖40グラム・食塩3グラムという分量、および飲ませ方について、監修者の確認を受けていません。分量を誤ると危険があるため、市販の経口補水液が入手できる場合はそちらを使ってください。乳幼児、腎臓・心臓の持病がある方、糖尿病の方、透析を受けている方、水分や塩分の制限がある方に、この作り方をそのまま用いてよいかは判断できません。必ず医療者に相談してください。この作り方が市販品と同等の効果をもつことを示す研究は確認できていません。脱水の程度や、口から飲ませてよいかどうかを、このページの内容だけで判断することはできません。迷うときは口から飲ませず、救護班・保健師・医療機関に相談してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/oral-rehydration-solution ### Q: 災害のときも歯みがきは必要ですか。ほかにやることが多くて後回しになっています A: 必要です。避難生活が続くと口の中の細菌が増えやすく、肺炎などの呼吸器の感染や口の中の炎症が起きやすくなると考えられています。完璧でなくてよいので、1日1回、寝る前だけでも続けてください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 過去の災害の経験から口のケアが重視されるようになった経緯は、災害支援の実務で共有されている知見です。避難生活のなかで口のケアを行うことによって感染症がどの程度減るかを厳密に検証した研究は限られており、ここでは効果を断定していません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/why-oral-care-in-disaster ### Q: 口のケアとは、具体的に何をすればよいのですか A: 汚れを落とす(歯みがき・拭き取り・うがい)、乾かさない(水分と保湿)、口から食べて飲む——この3つです。歯みがきだけが口のケアではありません。水が乏しくても、3つとも何らかの形で続けられます。 ※【指に巻いて拭くときの注意】ガーゼやハンカチ、シートで拭く場合は、指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。ご家族など、ほかの方の口を拭くときは、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。介助のしかたは「自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですか」の項目をご覧ください。 ※【うがいができない方に、無理に水を含ませないでください】飲み込む力が弱っている方は、うがいの水でむせることがあります。その場合は拭き取りが中心になります。吸引などの医療的な処置が必要かどうかは、必ず担当の医療者に確認してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 口の中を清潔に保つことと肺炎の起こりにくさの関係は、介助を受ける高齢者を対象とした研究が知られていますが、避難生活の場でどの程度の差が出るかを示したものではありません。また、口へのケアの刺激で飲み込む機能が改善するという説明も紹介されますが、災害下での効果は確かめられていないため、ここでは期待できる効果として書いていません。「約30ml」も実務上の目安であり、公的な基準ではありません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/what-is-oral-care ### Q: 歯ブラシがないときはどうすればよいですか A: 清潔なガーゼやハンカチ、口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻き、歯の表面を前歯から奥歯へ順にこすって汚れを拭き取ってください。ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。 ※【指に巻いて拭くときの注意】ガーゼやハンカチ、シートで拭く場合は、指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。ご家族など、ほかの方の口を拭くときは、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。介助のしかたは「自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですか」の項目をご覧ください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/no-toothbrush ### Q: 断水で水が使えません。歯磨きはどうすればよいですか A: 約30ml(紙コップに指1本分ほど)の水があれば歯磨きはできます。水は最初に全部使わず、すすぎ用に2〜3回に分けて使うのがコツです。 ※【飲む水は我慢しないでください(ただし、飲水量を指示されている方は主治医の指示が優先)】「トイレに行きたくないから」と水分を控えると、口が乾いて細菌が増えるだけでなく、脱水やエコノミークラス症候群のリスクも高まります。飲む水と、口をきれいにする水は削らないでください。ただし、心臓の病気・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)・肝臓の病気などで、主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 「約30mlで磨ける」は災害支援の実務で共有されている目安であり、必要な水量を厳密に定めた研究に基づく数値ではありません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/water-scarce-brushing ### Q: 歯磨きに必要な水はどれくらいですか A: 約30ml、紙コップに指1本分ほどの深さが目安です。大さじ2杯ほどの量です。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 実務上の目安であり、必要水量を定めた公的基準ではありません。歯の本数や口の状態によって前後します。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/how-much-water-for-brushing ### Q: うがいの水が少ししかありません。効果的な使い方はありますか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】自分でうがいができ、水をきちんと吐き出せる方であれば、同じ量の水でも一度に多く含むより、少量ずつ含んで吐き出すほうが汚れを外に出しやすいと考えられています。たとえば30mlなら、15mlずつ2回に分けます。むせやすい方、寝たままの方、自分で吐き出せない方には無理にうがいをさせず、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にしてください。うがいは歯みがきや拭き取りの代わりにはなりません。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - うがいや水分をとったあとに激しくむせ込み、咳が止まらない - うがいのあとに発熱、痰がからむ、息苦しさ、ぐったりした様子が出てきた - 水を口に入れるたびにむせる、声がガラガラになる - 口やのどが腫れて、水も飲み込めない - のどに詰まって声が出せない、顔色が変わった(ただちに119番) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【まず確認してください。うがいには別のものが2つあります】口をきれいにするのは、やや下を向いて頬を動かすブクブクうがい(洗口)です。上を向いてのどに水をためるガラガラうがいは、のどを洗うためのもので口の清掃にはなりません。飲み込む力が弱い方、むせやすい方、寝たままの姿勢の方、声かけの内容が伝わりにくい方では、水が気管に入ってしまうおそれがあります。ガラガラうがいはもちろん、ブクブクうがいも、自分で吐き出せない方には無理にさせないでください。その場合は、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にしてください。その方に合ったやり方は担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に確認してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 以下は監修者の確認を受けていない、当プロジェクトによる暫定的な整理です。「少量ずつ複数回に分けたほうが汚れを出しやすい」というのは、汚れを薄めて捨てるという考え方に基づく実務上の目安であり、回数ごとに口の中の細菌量を比べた研究に基づく数値ではありません。1回量や秒数も目安です。水が少ないときに練り歯みがき剤を控える理由は、出典資料と同じく「すすぎ水を節約できる」ためであり、練り歯みがき剤が口の渇きを強めるという説明は根拠を確認できなかったため記載していません。ブクブクうがいとガラガラうがいの区別、および飲み込む力が弱い方への注意は、安全側に配慮して当プロジェクトが加えた記載で、出典資料にそのままの記述はありません。飲み込む力が弱い方にうがいをしてよいか、どのやり方が安全かを判断できるのは、その方を診ている医療者・歯科の支援チームです。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/rinsing-with-little-water ### Q: うがい薬がありません。口の中をすすぐのに代わりに使えるものはありますか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】洗口液(マウスウォッシュ)や液体ハミガキは、口の中をすすぐ目的であれば当面の代わりになります。ただし、のどを対象とするうがい薬とは目的が異なり、のどの症状への置き換えにはなりません。手指消毒用の製品は口に使わないでください。何もなければ、水だけで口をすすぐことにも意味があると考えられています。口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - のどの痛みが強く、水も飲み込めない(ためらわず119番に連絡してください) - 息が苦しい、声が出しにくい、のどや首が腫れてきた(息が苦しいときは、ためらわず119番に連絡してください) - 高い熱が続く、ぐったりしている - 口の中に強い腫れや出血がある - 消毒薬や洗口液を誤って飲んでしまった(大量に飲んだ場合はすぐに救護班・医療者へ、意識がもうろうとしていれば119番) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください】むせやすい方、飲み込む力が弱っている方、認知症のある方、介助が必要で自分で吐き出せない方、うがいがまだできない小さなお子さんには、洗口液もうがい薬も使わせないでください。のどを鳴らすガラガラうがいも、誤って気管に入るおそれがあるため行わないでください。これらの方には、液体ですすぐのではなく、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にしてください。噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。やり方は、普段の介助方法を担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に確認してください。 ※【医療現場で使う消毒薬を、自己判断で口に使わないでください】医療機関や施設では、状況に応じて別の薬剤を使うことがありますが、それは医療者が種類と濃さを管理したうえで使うものです。自己判断で薄めて使うと、粘膜を傷めたり、飲み込んで体調を崩したりするおそれがあります。必要と感じたときは、避難所の救護班・保健師・薬剤師に相談してください。 根拠の種類: 慣習的に行われていますが、根拠や臨床的意義は明確ではありません 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: うがい薬の代わりに市販の洗口液・液体ハミガキをどこまで使えるかについて、災害時の条件で検証した資料は確認できていません。効果を示す研究も確認できておらず、ここに書いた内容は監修者の確認を受けていない暫定的な整理です。配合されている成分は製品ごとに異なり、期待できることも一様ではありません。のどを対象とするうがい薬と、口の中をすすぐ洗口液は目的が異なるため、のどの症状の対処としては代わりになりません。持病のある方、口の中に傷や強い炎症がある方、妊娠中の方、小さなお子さん、飲み込む力が弱っている方は、使う前に医療者や薬剤師に相談してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/mouthwash-substitute ### Q: 重曹水は洗口液の代わりになりますか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】代わりにはなりません。重曹水のうがいは昔から紹介されてきましたが、効果を確かめた資料をこのプロジェクトでは確認できていないため、作り方(水と重曹の量)はお伝えしていません。口のねばつきには、まず少量の水でのうがいや、濡らして固くしぼったガーゼでの拭き取りをお試しください。口の水を自分で吐き出せない方、むせやすい方には、うがいをさせないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - うがいの水や口の中のものを飲み込んでむせ込み、そのあとに発熱・息苦しさ・痰の増加が出たとき(誤嚥性肺炎のおそれがあります。医療者に相談してください) - 重曹水を多めに飲み込んでしまい、吐き気・嘔吐・おなかの張り・ぼんやりするなどの症状が出たとき - 口の中や唇に強い痛みのただれ・白い膜・止まらない出血があるとき 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【飲み込む力が弱い方に、うがいをさせないでください】口に含んだ水を自分で吐き出せない方、むせやすい方、意識がはっきりしない方、寝た姿勢のままの方には、うがいをさせないでください。水が気管に入り、誤嚥性肺炎につながるおそれがあります。自分で水を吐き出せない方、むせやすい方、寝た姿勢のままの方は、歯ブラシやスポンジブラシに付いた汚れを、そのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取る方法にとどめ、口に入れる水は最小限にします。 ※【口の中に指や布、ティッシュを入れないでください】噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。口の中でちぎれて残ると、窒息や誤嚥の原因になります。 ※【意識がはっきりしない方は、まず相談してください】意識がはっきりしない方の口の中には手や指を入れず、口のケアを行ってよいかを救護班・医療者に相談してください。安全なやり方はその方の状態によって変わるため、普段の担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に確認してください。 ※【手元に重曹しかなく、それでも使う場合に必ず守ること】掃除用・工業用の重曹は口に入れないでください。食品用と表示されたものだけを使います。口に含んだ水は飲み込まず、必ず吐き出してください。吐き出せない方には使わないでください。重曹にはナトリウム(塩分にあたる成分)が含まれます。塩分の制限がある方、腎臓や心臓の持病がある方、血圧が高い方は、使う前に担当の医療者に確認してください。粉のままの重曹で歯や舌をこすらないでください。歯や粘膜を傷めるおそれがあります。濃くすればよくなるものではありません。しみる、ひりひりする、気持ちが悪いなど、少しでも違和感があればすぐにやめてください。 根拠の種類: 慣習的に行われていますが、根拠や臨床的意義は明確ではありません 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は監修者の確認を受けていません。重曹水のうがいは慣習的に紹介されてきた方法で、災害時の口の中の細菌の量・口臭・誤嚥性肺炎などに対する効果を示した資料は確認できていません。濃さの目安も根拠をたどれなかったため、本項目では作り方(水の量と重曹の量)を記載していません。食品用重曹は食品添加物であり、口の中の症状に対する医薬品・医薬部外品ではありません。当初この項目に付けていた日本口腔ケア学会等の資料は、重曹に関する記載を原典で確認できなかったため出典から外しています(確認が取れ次第、設問番号やページまで示して記載します)。歯みがきや拭き取りの代わりにはしないでください。持病のある方、介助を受けている方は担当の医療者・歯科医療者に確認してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/baking-soda-mouth-rinse ### Q: 入れ歯をなくしてしまいました。どうすればよいですか A: 「ないまま我慢」がいちばん危険です。避難所の救護班・保健師に「入れ歯をなくした」と必ず申し出てください。噛めない状態が続くと食事量が減り、低栄養につながります。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/denture-lost ### Q: 入れ歯が壊れました。自分で直してもよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】接着剤などで自分で修理しないでください。かえって修理できなくなることがあります。破片もすべて保管したうえで、救護班・保健師または歯科医療者に相談してください。 ※【市販の接着剤は使わないでください】義歯の材料に適さない接着剤で固めると、歯科医療者による修理が困難になることがあります。割れた破片は捨てず、まとめて保管してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 自己修理を避ける理由の説明について、監修者の確認を受けていません。破片の保管方法など細部は歯科医療者の指示に従ってください。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/denture-broken ### Q: 入れ歯洗浄剤(義歯洗浄剤)がありません。入れ歯の手入れはどうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】できれば毎食後、少なくとも1日1回は必ず外して洗ってください。口に入れたままでは汚れは落ちません。水が足りないときは、清潔なガーゼや口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)で拭うだけでもかまいません。熱湯と塩素系漂白剤は、薄めても使わないでください。痛み・腫れ・出血があるときは早めに救護班や歯科医療者に相談してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 入れ歯や部分入れ歯のバネを飲み込んだ、のどや胸につかえる感じがある(息が苦しい・声が出せないときはすぐ119番) - 入れ歯が当たる部分が腫れている、膿が出ている - 押さえても口の中の出血が止まらない - 口の中の粘膜が赤く腫れて痛み、熱が出た - 入れ歯の下の粘膜に、白い斑点やしこりが2週間以上続いている - 痛みで食事や水分がとれない日が続いている 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【洗剤で洗えるのは、すすぎ水があるときだけです】食器用の中性洗剤で代用できるのは、流水で十分にすすげるだけの水があるときに限ります。すすぎ水を確保できないときは洗剤を使わず、手順2の「拭き取り」だけにしてください。洗剤が残ったまま口に戻すと、粘膜への刺激や、吐き気・下痢の原因になることがあります。水が乏しい状況では、拭き取りを第一の方法と考えてください。 ※【やってはいけないこと】熱湯に入れる(変形します)、家庭用の塩素系漂白剤に漬ける(薄めても使わないでください。金属のバネが傷み、薬液が残ると口の粘膜を痛めます)、乾いたまま放置する(ひび割れ・変形の原因になります)。この3つは避けてください。 ※【入れ歯を飲み込んだ・のどに詰まったときは】部分入れ歯やそのバネは小さく、外れて飲み込んでしまう事故が起こります。就寝時は必ず外してください。飲み込んだ、またはのどや胸につかえる感じがあるときは、自分で取り出そうとせず、すぐに医療機関に連絡してください。息が苦しい、声が出せない、顔色が変わるときは、ためらわず119番通報してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は監修者の確認を受けていません。入れ歯が飲み込む動作にも関わること、長く外したままだと入りにくくなることは、現場で言われている内容で、効果や影響を示す研究は確認できていません。洗浄の方法・頻度・代用品(ガーゼ、口腔用ウェットシート、清潔なスポンジ、中性洗剤)についても、災害支援の実務で共有されている工夫を当プロジェクトが整理したもので、比較試験で確かめられたものではなく、挙示した出典資料にそのまま記載があるわけではありません。使ってよい代用品や洗浄方法は、入れ歯の材質(金属床・軟らかい裏打ちなど)によって適否が変わることがあります。痛み・傷・粘膜の異常があるときの扱いは、実際に口の中を診た歯科医療者の指示を優先してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/denture-care-no-cleaner ### Q: 避難生活で入れ歯が合わなくなってきました A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】合わないまま我慢して使い続けないでください。まず入れ歯の内側(歯ぐきに当たる面)に食べかすが付いていないか確かめ、清潔にしてから入れ直してみてください。多くの場合、まず試していただきたい対処です。それでも当たりや痛みが続くとき、歯ぐきに傷・腫れ・膿があるときは、食事のとき以外は外して休ませ、早めに救護班・保健師・歯科医療者に相談してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 当たっている部分が腫れている、膿が出ている - 顔やあごが腫れてきた、熱が出た - 痛みで食事や水分がとれない日が続いている - 口内炎やしこり、白い斑点が2週間以上治らない - 入れ歯や部分入れ歯のバネを飲み込んだ、のどに詰まった感じがある(息が苦しいときはすぐ119番) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【持病やお薬のある方は、より早めに相談してください】骨粗しょう症の飲み薬や注射(骨の吸収をおさえる薬)を使っている方は、入れ歯が当たってできた傷が治りにくく、あごの骨のトラブルにつながることがあると指摘されています。糖尿病の方、透析を受けている方、がんの治療中の方、ステロイドや免疫をおさえる薬を使っている方も、小さな傷から感染が広がりやすいと考えられています。当てはまる方は、痛みや傷を我慢せず、早い段階で救護班・保健師・歯科医療者に伝えてください。お薬手帳など、飲んでいる薬がわかるものがあれば一緒に見せてください。 ※【自分で削る・曲げるのは避けてください】痛いところを自分で削ったり、バネを曲げたりすると、破損したり、かみ合わせが崩れてかえって痛みが強くなったりします。調整は歯科医療者に任せてください。 ※【入れ歯の内側に紙などを詰める方法は、このページでは案内しません】義歯安定剤がないときに、オブラートやティッシュペーパーを入れ歯の内側にあてる方法が紹介されることがあります。しかし、効果や安全性を確かめた報告は確認できていません。特にティッシュペーパーは唾液で崩れて細かい破片が口の中に残り、入れ歯から外れてのどへ落ちれば、のどに詰まる・気管に入るおそれがあります。飲み込む力が弱っている方、自分で入れ歯を外せない方、認知症のある方は、口の中に残ったものに気づいて自分で取り出すことができません。当たって痛いときは、この方法ではなく、食事のとき以外は外して休ませ、早めに相談してください。 ※【義歯安定剤は、使うとしても短期間に】応急的に義歯安定剤を使う方法もありますが、合わなくなった入れ歯そのものを治すものではありません。安定剤で無理に使い続けると、粘膜の傷や痛みがかえって悪化することがあります。使う場合も一時しのぎと考え、早めに歯科医療者に相談してください。介助を受けている方では、外すときに安定剤が口の中に残っていないか、介助する方が確認してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は監修者の確認を受けていません。内側を清潔にする・使わない時間をつくる・自分で削らないという対応は、災害支援の実務で共有されている知見に基づくもので、比較試験で効果を確かめたものではありません。避難生活で義歯が合わなくなる仕組みの説明、外したままの時間が長いと入りにくくなるという説明、義歯安定剤の使い方についても、監修者の確認を受けていません。骨の吸収をおさえる薬・糖尿病・透析・免疫をおさえる薬に関する注意は、一般に指摘されている事項を整理したもので、個々の方に当てはまるかは主治医・歯科医療者の判断によります。オブラートやティッシュペーパーを入れ歯の内側にあてる方法は災害時の資料で慣習的に紹介されてきましたが、有効性や安全性を検証した報告を確認できず、誤って飲み込む危険があるため、本ページでは手順として案内していません。なお、参照した学会資料のうち版や該当箇所を特定できなかったものは出典から外しています。合わなくなった原因を確かめられるのは、実際に口の中を診た歯科医療者だけです。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/denture-not-fitting ### Q: 口内炎ができて痛いです。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】多くの口内炎は1〜2週間ほどで自然に治ると考えられています。まずは口の中を清潔に保ち、乾燥を防ぎ、しみるものを避けてください。ただし、2週間以上治らない、だんだん大きくなる、出血する場合は別の病気の可能性があるため、必ず歯科・医療者に相談してください。がんの治療中の方、免疫を抑える薬やステロイドを飲んでいる方、血液の病気や糖尿病のある方は、2週間を待たず早めに相談してください。塗り薬は、手元の市販薬を添付文書の用法・対象年齢どおりに使う範囲にとどめ、ステロイドを含むものや他の人に処方された薬は自己判断で使わないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 2週間以上治らない、または少しずつ大きくなる口内炎(出血する、硬いしこりを触れる場合を含む) - がんの治療中、免疫を抑える薬やステロイドの内服中、血液の病気、コントロール不良の糖尿病がある方に口内炎ができた(2週間を待たずに相談) - 痛みで水分も食事もほとんどとれない - 38度以上の発熱を伴う - 口の中や唇に水ぶくれ・ただれが広がる - 顔やあごが腫れる、口が開けにくい、飲み込みにくい、息がしにくい(ためらわず119番または救護所に連絡してください) 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【2週間を待たずに相談していただきたい方がいます】がんの薬物療法や放射線治療を受けている方、免疫を抑える薬やステロイドを飲んでいる方、血液の病気のある方、血糖のコントロールがよくない糖尿病の方は、口内炎が短い期間で重くなったり、感染の入り口になったりすることがあります。「1〜2週間で治ることが多い」という目安は当てはまりません。痛みや白いただれに気づいた時点で、早めに救護所・巡回の医療班・かかりつけの医療者に相談してください。 ※【入れ歯・歯・矯正装置を自分で削ったり切ったりしないでください】合わない入れ歯やとがった歯を、自分でヤスリをかけたり削ったりしないでください。粘膜が裂ける、入れ歯が壊れる、削れた破片を飲み込むといった事故につながります。矯正装置が当たって痛むときも、自分で外したり切ったりしないでください。矯正用ワックスがあれば当たる部分を覆ってください。当たって痛むあいだは、その側で強く噛まないなど食べ方を工夫し、できるだけ早く歯科医療者・歯科班に相談してください(入れ歯が合わないときは「避難生活で入れ歯が合わなくなってきました」の項目もご覧ください)。 ※【塗り薬は範囲を決めて使ってください】手元にある市販の口内炎の薬は、添付文書に書かれた用法・使用部位・対象年齢を確認したうえで使ってください。一方で、ステロイドを含む塗り薬や、他の人に処方された薬を分けてもらって使うことは避けてください。ステロイドで痛みが一時的にやわらぐことはありますが、治りが早くなるとは限らず、ウイルスやカビ(真菌)が原因の口内炎ではかえって悪化することがあります。見た目だけで原因を見分けるのは難しいため、迷ったら使う前に医療者に相談してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は歯科の一般的な考え方に基づく暫定版で、専門家の監修を受けていません。口内炎にはアフタのほか、ウイルス感染、真菌(カビ)、薬の副作用、外傷、全身の病気によるものなどがあり、見た目だけでは区別できません。「1〜2週間で治ることが多い」は一般的な経過であって、すべての口内炎に当てはまるものではなく、とくに、がんの治療中の方、免疫を抑える薬やステロイドを使っている方、血液の病気やコントロール不良の糖尿病のある方では当てはまらず、2週間の経過観察は勧められません。これらの方は早めに医療者へ相談してください。栄養不足やストレスとの関連も指摘されていますが、避難生活での発症のしやすさや、ここに挙げた工夫の効果を数値で示した研究は確認できていません。市販薬を使ってよいか、手元の薬を続けてよいかは、可能な限り医療者に確認してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/mouth-ulcer ### Q: 車中泊のとき、口のケアはどうすればよいですか A: 水が少なくても、拭き取りや少量の水での歯磨きはできます。車内は乾燥しやすいため、水分補給とあわせて口の中を潤すことを意識してください。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/car-overnight-oral-care ### Q: 避難生活で誤嚥性肺炎を防ぐにはどうすればよいですか A: 口の中を清潔に保つこと、食べるときの姿勢を整えること、むせやすい食品を避けることが基本です。1日1回しかできないときは、寝る前のケアを選んでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 食事中・食後にひどくむせる、声がガラガラになる - 熱が出て、痰がからむ - 息が苦しそう(ためらわず119番に連絡してください。つながらないときは、救護所・近くの医療救護班に伝えてください) - 食事量が急に減った、ぐったりしている 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 口腔ケアと肺炎の関係については、介助者による口腔ケアを対象とした研究が知られていますが、本人が自分で行う歯磨きでどこまで差が出るかは明確ではありません。ここでは効果を断定していません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/prevent-aspiration-pneumonia ### Q: 飲み込む力が弱った家族に、避難所の食事で気をつけるものはありますか A: パン・餅・のり・ゆで卵など、口の中でまとまりにくいもの、貼りつくもの、水分の少ないものに注意してください。ふやかす・つぶす・とろみをつけるといった工夫が役立つことがあります。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - のどに詰まらせて、声が出せない・咳ができない・顔色が青くなる(すぐに119番。通信指令員の指示に従ってください) - 食事中に強くむせる - 食べ物が口に残ったままになる - 食後に声が変わる・熱が出る 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【無理に食べさせないでください】むせながら食べ続けることは危険です。食べられない状態が続くときは、救護班・保健師に相談してください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/choking-risk-foods ### Q: 自分で口のケアができない家族がいます。介助はどうすればよいですか A: 始める前にできるかぎり上半身を30度以上起こし、あごを軽く引いた状態で行ってください。起こせない方、起こすと体に負担がかかる方は無理をせず、担当の医療者・介護職に相談してください。落とした汚れは口の中に残さず外に出し、ティッシュやガーゼを口の中に置いたままにしないでください。具体的な手順は「自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですか」で説明しています。 ※【無理に口をこじ開けないでください】本人が嫌がるときは中断し、時間をおいてください。抵抗があるまま続けると、けがや誤嚥につながることがあります。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/care-for-someone-else ### Q: 自分でうがいができない家族の口のケアは、具体的にどうやればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】いちばん大事なのは、落とした汚れを口の中に残さず、外に出すことです。始める前にできるかぎり上半身を30度以上起こし、うがいができる方には少量の水を含んでもらい、必ず吐き出してもらいます。うがいができない方は、水は歯ブラシを湿らせる程度にとどめ、ブラシに付いた汚れをそのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取ってください。ティッシュやガーゼを口の中に置いたままにしてはいけません。安全なやり方はその方の状態によって変わるため、普段の介助方法を担当の医療者・介護職に確認してください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - ケアの最中や食後にひどくむせる、咳が止まらない - 熱が出て、痰がからむ - 息が苦しそう(ためらわず119番に連絡してください。つながらないときは、救護所・近くの医療救護班に伝えてください) - ガーゼで押さえても口の中の出血が止まらない - 口やあご、顔がはれてきた - 口が開かない、開けようとすると強い痛みがある - 水も飲み込めない - 口の中に入れたもの(ガーゼ・ケアシートなど)を回収できない、飲み込んだ可能性がある - 急に食事量が減った、ぐったりしている 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【口の中にものを置いたままにしない】ティッシュは濡れると崩れやすく、破片が口の中に残ると窒息や誤嚥の原因になります。汚れの受け皿としてティッシュやガーゼを口の中に置く方法はとらないでください。ティッシュを使ってよいのは、口の外でブラシに付いた汚れを拭き取るときだけです。口腔ケアシートやガーゼで粘膜を拭く場合も、指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。 ※【持病や薬がある方は、ここに注意】血液をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、歯ぐきからの出血が止まりにくいことがあります。出血したら清潔なガーゼを当てて10〜20分ほど静かに押さえます。このとき、ガーゼは介助する方が指で押さえ続け、端は必ず口の外に出しておいてください。押さえている間はそばを離れないでください。噛み込んでしまう方、自分で吐き出せない方、意識がはっきりしない方には、口の中にガーゼを入れたままにせず、すぐに救護班・医療者に連絡してください。押さえる時間の目安を待たずに、早めに救護班・医療者に相談してください。がんの治療中の方、免疫を抑える薬を使っている方、血糖のコントロールが難しい方は、粘膜の小さな傷から感染が広がることがあるため、力を入れずやさしく行い、腫れや痛みが出たら早めに相談してください。 ※【途中でやめてよい合図】むせる、息が苦しそう、顔色が悪い、強く嫌がるときは、すぐに中断して姿勢を戻してください。無理に口をこじ開けると、けがや誤嚥につながります。時間をおいて、機嫌のよいときにやり直せば十分です。 ※【吸引・経管栄養など医療的ケアを受けている方の場合】吸引や経管栄養に関わる手順は、医療者・介護者が担当する範囲です。このページでは扱いません。口のケアの可否ややり方を含め、必ず担当の医療者・訪問看護師に確認してください。避難所の救護班や保健師に、普段の医療的ケアの内容を早めに伝えておくことも大切です。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: ここに書いた介助手順は、当プロジェクトの備えガイドと災害支援の場で紹介されている方法を整理したもので、監修者の確認を受けていません。効果を比較した研究は確認できていないため、この手順で誤嚥性肺炎を防げると述べているわけではありません。姿勢の角度・顔や体の向き・水の量・使う道具は、その方の麻痺の有無や飲み込みの状態によって適否が変わります。特に顔や体をどちら向きにするかは、専門的な判断が必要なため、このページでは左右を指定していません。どの方法が安全かを判断できるのは、その方を診ている医療者・介護職です。吸引などの医療的ケアの手技はこのページでは扱っていません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/assist-oral-care-method ### Q: 経管栄養のチューブが詰まりやすいです。どうすればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】この項目は医療者・介護者向けです。詰まりを防ぐ基本は、栄養剤を注入したあとに十分な量の水でチューブを洗い流す(フラッシュする)ことです。水の量や手順は、必ず担当の医療者・訪問看護師の指示に従ってください。チューブが詰まったときに無理な力で押し込むこと、抜けたチューブを自分で入れ直すことは、絶対にしないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - チューブが抜けた、または入っている位置がずれた(自分で入れ直さず、注入もしないでください) - 注入中や注入後にむせ込む、息が苦しそう - 発熱、嘔吐、おなかの張りが続く - 水も薬もまったく通らない - 注入部の周りが赤く腫れている、出血している 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【自己判断で方法を変えないでください】必ず担当の医療者・訪問看護師の指示に従ってください。チューブの種類や太さ、使っている栄養剤、ご本人の状態によって、適切な扱いは異なります。インターネットや人づてに聞いた方法を、自己判断で試さないでください。 ※【詰まってしまったときに、無理な力をかけないでください】強い力で押し込むと、チューブが破損したり、内容物が漏れたりすることがあります。家庭にあるものを使って通そうとする方法が紹介されることがありますが、このページでは具体的な手技はご案内しません。担当の医療者・訪問看護師に連絡し、指示を受けてください。 ※【チューブが抜けたときは、自分で入れ直さないでください】正しくない場所に入ったまま栄養剤や薬を注入すると、命に関わることがあります。抜けたチューブはそのまま保管し、注入は行わずに、すぐに訪問看護ステーション・主治医へ連絡してください。連絡がつかないときは、避難所の救護班・保健師に相談するか、119番へ連絡してください。「連絡がつかないから自分で戻す」という判断はしないでください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は医療者・介護者向けの内容で、監修者の確認を受けていません。チューブの閉塞を防ぐ具体的な手技(洗い流す水の量、薬の注入方法、詰まったときの解除方法、抜けたときの再挿入など)は、個々の状況によって異なるため意図的に記載していません。必ず担当の医療者・訪問看護師の指示に従ってください。災害時に閉塞をどの程度防げるかを示した資料は見当たりません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/tube-feeding-clog ### Q: 避難生活で、特に口のケアに気をつけたほうがよいのはどんな人ですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】自分では歯みがきができない方、飲み込む力が弱った方、以前に肺炎で入院したことのある高齢者は、特に気をつけてください。介助してくれる人がいるかどうかを、避難生活の早いうちに確認しておくと安心です。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 食事中・食後に強くむせ、そのあとに熱が出た - 痰がからむ - 息づかいが荒い(ためらわず119番に連絡してください。つながらないときは、救護所・近くの医療救護班に伝えてください) - ぐったりしている(すぐに避難所の救護班・保健師に伝えるか、119番に連絡してください) - 急に食べる量が減った、飲み込めなくなった 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【口から食べていない方も、口のケアは必要です】チューブなどで栄養をとっている方は、口を使わない分だけ唾液が減り、口の中が汚れやすくなります。どこまで行ってよいか、吸引が必要かどうかは状態によって異なります。手順は医療者・介護者向けの内容ですので、必ず担当の医師・看護師・歯科医療者に確認してください。 根拠の種類: 学術的な報告がありますが、災害時にそのまま当てはまるとは限りません 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 気づかないうちに唾液が気管に入ること(不顕性誤嚥)と肺炎の関連、および肺炎を繰り返しやすいという記述は、高齢者医療の学術報告に基づくものですが、災害時の避難生活を対象に検証されたものではありません。ここに挙げた対象者の範囲と、個々の方への当てはまり方について、監修者の確認を受けていません。該当するか迷う場合は、自分で判断せず救護班・保健師にご相談ください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/who-needs-oral-care-most ### Q: 歯のことで困ったとき、どこに相談すればよいですか A: 避難所にいる方は、まず救護班・保健師に伝えてください。自宅や車中泊の方は、地域の歯科医師会に電話すると、対応できる歯科医院の情報が得られることがあります。 根拠の種類: 手順・連絡先などの事務的情報です(医学的主張は含みません) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/where-to-consult-dental ### Q: 近くの歯科医院が開いているか調べる方法はありますか A: 地域の歯科医師会に電話すると、対応できる歯科医院の情報が得られることがあります。自治体の災害情報ページや避難所の掲示にも、診療再開の情報が出ることがあります。 根拠の種類: 手順・連絡先などの事務的情報です(医学的主張は含みません) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/is-dental-clinic-open ### Q: 入れ歯ケース(義歯ケース)がありません。入れ歯は何に入れて保管すればよいですか A: ふたがしっかり閉まり、水がこぼれない容器であれば代用できます。食品用の密封できる容器(パチッと留まるもの)が実用的です。乾燥させないよう水を張ってください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 分かっていないこと: 容器の選び方は災害支援の実務知見に基づくもので、製品試験に基づく比較ではありません。 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/denture-case-alternative ### Q: 非常持出袋(防災バッグ)に入れておく歯科用品は何ですか A: 歯ブラシ、口腔ケアシート(歯みがきシート)、洗口液の小分け、口腔保湿ジェルが基本です。義歯を使う方は義歯用品も加えてください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/prepare-emergency-bag ### Q: 入れ歯を使っています。何を備えておけばよいですか A: ふたが密閉できる容器(水がこぼれないもの)、義歯洗浄剤、義歯用ブラシを備えてください。容器には油性ペンで氏名を書いておくと、避難所での取り違えを防げます。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/prepare-denture-user ### Q: 服薬情報や医療情報は、どのように保存しておけばよいですか A: お薬手帳をスマートフォンで撮影して保存しておいてください。義歯や医療機器を使っている方は、その状態も撮影しておくと、支援者に伝えるときに役立ちます。 根拠の種類: 手順・連絡先などの事務的情報です(医学的主張は含みません) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/prepare-medical-info ### Q: 子どもがいる家庭では、何を備えておけばよいですか A: 乳幼児には、仕上げ磨き用歯ブラシと、ガーゼまたは乳幼児用口腔ケアシートを備えてください(洗口液は誤飲のおそれがあるため使いません)。学童には、子ども用歯ブラシとフッ化物(フッ素)配合歯磨き粉の携帯サイズがあると役立ちます。避難所では甘いお菓子が配られることも多いため、可能な範囲でケアを続けてください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 当プロジェクトの実務資料(起草版・学術統轄の監修前)から再構成したものです。専門家の確認はまだ受けていません 最終更新: 2026-07-31 URL: https://oral-bousai.jp/qa/prepare-children ### Q: 歯ブラシはどれくらいで交換すればよいですか A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】使った日数ではなく毛先の状態で判断してください。ブラシを裏側から見て毛が輪郭からはみ出していたら交換の目安です。毛が抜け始めたものや柄にひびが入ったものは、毛や破片が口の中に残るおそれがあるため使わないでください。歯ブラシは人と共有しないでください。替えが手に入らないときは、救護班や保健師に不足を伝えてください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 歯ブラシの毛や破片を飲み込んだあとに、むせが続く、息苦しい、声がかすれる、発熱があるときは、我慢せず救護所や医療機関に相談してください。 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【毛が抜ける歯ブラシ・壊れた歯ブラシは使わないでください】毛束が抜け始めた歯ブラシや、柄にひびが入った歯ブラシは、毛や破片が口の中に残ることがあります。飲み込むと、のどに詰まったり気管に入ったりするおそれがあります。ほかに歯ブラシがなくても使わず、口腔ケアシートやガーゼで拭う方法に切り替えてください。介助して磨くときは、磨く前と磨いたあとに毛の抜けがないかを必ず確かめてください。 ※【歯ブラシを人と共有しないでください】歯ぐきから出血していることがあり、唾液や血液が付いた歯ブラシを使い回すことは避けてください。家族どうしでも同じです。1本しかない場合でも共有せず、指にガーゼや口腔ケアシートを巻いて口の中を拭う方法に切り替えてください。 根拠の種類: 災害支援の実務で共有されている知見です(学術的根拠は限定的です) 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: この項目は監修者の確認を受けていません。「毛先が広がったら交換」は歯科で広く共有されている目安ですが、交換までの日数を災害時の条件で定めた基準はありません。毛の開きによって汚れの落ち方がどれだけ変わるかを示した研究は確認できていないため、程度は書いていません。保管の仕方(乾かしてからしまう、共有しない)は衛生上の一般的な注意として記載しており、これによって災害時の感染や肺炎が減ることを示した研究も確認できていません。避難生活では交換できないことも多く、その場合は交換できないことを気に病むより、手元の歯ブラシで磨き続けることを優先してください。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/toothbrush-replacement-timing ### Q: 避難生活でジュースやお菓子ばかりです。むし歯が心配です A: 【暫定案です。専門家の確認を受けていません】非常時は、まず水分とエネルギーを確保することが優先です。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。甘いものを我慢しすぎる必要はありません。そのうえで、砂糖が多く歯にくっつきやすいものは食べる回数を減らし、食べたあと・飲んだあとに水やお茶をひと口含む。これが、多くの場合まず試していただきたい対処です。なお、ガム・タブレット・あめ・かたいままの果物は、のどに詰まらせる危険があります。5歳くらいまでのお子さんや、飲み込む力が弱くなっている方には与えないでください。 次のようなときは、すぐに医療者へ連絡してください: - 食べもの(ガム・タブレット・あめ・果物など)をのどに詰まらせ、声が出ない、息ができない、顔色や唇の色が悪い(ただちに119番。背中をたたくなどの手当ては、やり方を知っている方が通報と並行して行ってください。知らない場合は、119番の通信指令員の指示に従ってください) - 食べたあと・飲んだあとに強くむせ込み、そのあと発熱・咳・息苦しさ・ぐったりした様子が出てきた - 糖尿病の方で、甘い飲み物を続けたあとに強いのどの渇き・尿の量が増える・意識がぼんやりするなどの変化が出た - 顔やあごが腫れてきた、熱を伴う強い歯の痛みが出てきた、痛みで食事や水分がとれない 息がしにくい、飲み込めない、口が開かない、出血が止まらない、意識がもうろうとする——このようなときは、ためらわず119番に連絡してください。 避難所にいる方は救護班・保健師へ。判断に迷うときは119番に連絡してかまいません。 ※【のどに詰まらせない工夫を先に】ガム・タブレット・あめ・グミ・かたいままの果物は、窒息の原因になりやすい食べものです。5歳くらいまでのお子さん、飲み込む力が弱くなっている方、意識がはっきりしないときには与えないでください。避難所では救急車の到着が遅れることがあり、詰まらせたときの危険が普段より大きくなります。食べるときは座って、落ち着いた姿勢で食べてください。歩きながら食べたり、寝たまま食べたりしないでください。 ※【ガム・タブレットを使えない方がいます】ガムやタブレットは、のどに詰まらせる危険があるため、5歳くらいまでのお子さん、飲み込む力が弱くなっている方、認知症などで飲み込んだかどうか確認しにくい方には与えないでください。ガムは飲み込んでしまうことがあり、口の中に残っていないかを最後まで確認できる方だけが使ってください。 根拠の種類: 慣習的に行われていますが、根拠や臨床的意義は明確ではありません 監修の状態: 暫定案です。専門家の確認を受けていません 分かっていないこと: 糖を口にする回数や時間とむし歯の関係は広く知られていますが、この項目には根拠の強さが異なる内容が混ざっています。「食べたあとに水やお茶をひと口含む」「りんごなどで粘着性の食べかすを落とす」は慣習的に紹介されている対処で、効果を示す研究は確認できていません。代用糖についても、災害時にどの程度むし歯を減らせるかを示した資料はありません。窒息に関する注意(おおむね5歳未満・嚥下機能が低下した方にガム、タブレット、あめ、かたいままの果物を与えない)は、一般的な窒息予防の考え方にもとづく安全側の記載で、災害時のデータにもとづくものではありません。糖尿病・心不全・腎不全・透析中の方の水分と糖分については、個別の指示が優先されます。この項目は監修者の確認を受けていません。 最終更新: 2026-08-01 URL: https://oral-bousai.jp/qa/sweets-and-cavities --- # 資料: 家庭向け お口の防災チェックリスト(一般のご家庭向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/household-checklist 非常持出袋に「歯ブラシ1本」を。避難生活で口の中を清潔に保ち、肺炎などのリスクに備える第一歩です。 ## なぜ非常持出袋に「口腔ケア用品」なのか 水や食料の次に見落とされがちなのが、お口のケア用品です。 地震や水害で助かった命が、避難生活の中で失われることがあります。これを「災害関連死」と呼びます。阪神・淡路大震災(1995年)では、死者6,434人のうち919人(兵庫県内の認定)が災害関連死でした。そのうち約24%が肺炎によるもので、災害関連死の9割が60歳以上、8割が発災後2か月以内に集中していました。 災害後に増える肺炎の多くは「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」と考えられています。お口の中の細菌が、唾液や食べ物と一緒に誤って気管に入り、肺で炎症を起こす病気です。高齢者の肺炎の8割以上がこの誤嚥性肺炎で、誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位(厚生労働省・令和2年人口動態統計)です。断水で歯磨きができない、水を控えて口が乾く、避難疲れで体力が落ちる——災害時はこの病気が起きる条件がそろってしまいます。東日本大震災(2011年)でも、石巻市の災害関連死の26.9%が肺炎であったとされています。 ▶ 39% — 特別養護老人ホームで、歯科専門職が関わる専門的な口腔ケアを2年間続けた比較試験では、肺炎の発症率が39%、肺炎による死亡率は53%低下しました。専門的ケアの効果を調べた研究で、普段の歯みがきの効果を直接調べたものではありません。(出典: Yoneyama et al., The Lancet, 1999) ※【この資料でできること】歯垢(プラーク)1mgには約1億個の細菌がいます。断水中でもお口を清潔に保つ準備は、家庭で今日からできます。この資料では「何を・いくつ・どこに」備え、「どう使うか」まで具体的にご案内します。 ## 基本の備蓄リスト:1人3日分の品目と数量 政府は最低3日分、できれば1週間分の備蓄を推奨しています。口腔ケア用品も同じ考え方で揃えましょう。 首相官邸の防災啓発では、食料・飲料水は最低3日分(大規模災害では1週間分が望ましい)、飲料水は1人1日3リットルが目安とされています。口腔ケア用品はかさばらず軽いので、まず「非常持出袋に3日分」、余裕があれば「自宅備蓄に1週間分」の二段構えがおすすめです。以下は1人3日分の基本セットです。 品目 | 1人3日分の数量 | 選び方の基準 歯ブラシ | 1本(+自宅備蓄に予備1本) | ヘッドが小さめ・毛のかたさ「ふつう」か「やわらかめ」。キャップ付きなら衛生的 口腔ケア用ウェットシート(歯みがきシート) | 9枚以上(1日3回×3日) | 指に巻いて使うタイプ。ノンアルコール・無香料が家族全員で使いやすい 洗口液(マウスウォッシュ)または液体ハミガキ | 携帯サイズ1本(約100ml) | 1回の使用量は製品表示(多くは10〜20ml)に従う。アルコールフリー・低刺激タイプを選ぶ。口に含んだものを自分で吐き出せない方、うがいがまだできない小さなお子さんには使わない。お子さんが使うときは大人が見守る 口腔保湿ジェル(保湿剤) | 小容量チューブ1本 | 口の乾燥(ドライマウス)対策。高齢者がいる家庭は必須級 デンタルフロス・歯間ブラシ | 3日分(フロスは1巻でOK) | 普段使っているサイズと同じものを。手指を清潔にしにくい避難生活では、ハンドル付きフロス(糸ようじタイプ)が使いやすい 紙コップ・小型のコップ | 1個 | すすぎ用の水30mlを量る目安になる。目盛り付きなら便利 ティッシュ・ガーゼ | 適量 | ティッシュは歯ブラシの汚れを口の外で拭き取るためのもの(濡れると崩れるため口の中には入れない)。ガーゼは指に巻いて歯を拭く代用に ※【液体製品は「使用期限」と入れ替え時期に注意】洗口液・液体ハミガキには使用期限の表示がない製品が多いですが、これは「未開封・常温保管で製造から3年間は品質が保たれる」設計だからです(花王・ライオン・サンスター各社Q&A)。備蓄品は購入日をマジックで本体に書き、未開封でも3年以内、開封後は半年〜1年以内を目安に入れ替えましょう。色やにおいに異常があれば使わないでください。 【水の割り当ての目安(口腔ケア分)】 ☐ 歯磨き後のすすぎ用:1回約30ml × 1日3回 × 3日 = 1人約270ml(余裕をみて300ml)(500mlペットボトル1本を「口腔ケア専用」と決めて持出袋へ) ☐ 義歯(入れ歯)の洗浄・保管用:別途1日コップ1杯ほど(約200ml)を目安に(義歯使用者がいる家庭のみ) ☐ 飲料・調理用の1人1日3Lとは別枠で考える(口腔ケア用は少量なので、専用ボトルを分けておくと迷いません) ## 家族構成別カスタマイズ 基本セットに、家族それぞれの事情に合わせた「追加の一品」を足します。 対象 | 追加する品目 | ポイント 乳幼児(0〜5歳) | ガーゼまたは乳幼児用口腔ケアシート、仕上げ磨き用歯ブラシ | 湿らせたガーゼでの拭き取りが基本。歯が生える前は歯ぐきを拭く。洗口液は誤飲のおそれがあるため使わない 学童(6〜12歳) | 子ども用歯ブラシ、フッ化物(フッ素)配合歯磨き粉の携帯サイズ | 自分で磨ける年齢でも災害時は不安で手が止まりがち。親が声かけ・仕上げ確認を 成人 | 基本セットのまま | 仕事先・車にも歯ブラシとシートを1セットずつ分散配備すると安心 高齢者 | 口腔保湿ジェル(多めに)、スポンジブラシ、とろみ剤 | 唾液が減り誤嚥リスクが最も高い層。食後のケアと保湿を最優先に 義歯(入れ歯)使用者 | 保管容器、義歯用ブラシ、義歯洗浄剤(1日1錠×日数分)、義歯安定剤 | 就寝時は外して容器の水中で保管。ティッシュに包むと誤って捨てられる事故が起こりやすい。避難用は水が漏れない食品用密封容器や、二重にしたジッパー付き保存袋が便利。義歯安定剤は合わなくなった入れ歯そのものを治すものではありません。使う場合も一時しのぎと考え、早めに歯科医療者に相談してください 矯正治療中 | 歯間ブラシ(装置まわり用)、矯正用ワックス、顎間ゴムを使っている方は未開封の予備を1袋(サイズや種類が指示されているため、市販の輪ゴムでは代用できません) | 装置が粘膜に当たって痛むときはワックスで覆う方法があります。ワイヤーやブラケットが外れたりゆるんだりしても、自分で切る・外す・付け直すことはせず、歯科医療者に相談してください(ワイヤーから完全に外れたブラケットは、飲み込む前に口から取り出し、ふた付きの容器に保管してください)。かかりつけ矯正歯科の連絡先をメモしておく ※【お薬手帳と一緒に「お口の情報メモ」を】「義歯を使用」「矯正装置あり」「かかりつけ歯科医院名と電話番号」「治療中の歯」を1枚のメモにして、お薬手帳と一緒に持出袋へ。避難先で歯科支援チームの診察を受けるとき、正確に伝えられます。 ## 水が少ないときの口腔ケア実践手順 約30ml(紙コップに指1本分ほど)の水があれば歯磨きはできます。手順を覚えておきましょう。 - 手順1:約30mlの水をコップに用意する — 紙コップに指1本分ほどの深さが目安です。この水は「すすぎ用」なので、最初に全部使わないのがコツです。 - 手順2:歯ブラシを水で軽く濡らして磨く — 水が乏しいときは、練り歯磨き粉は使わないほうがすすぎの水を節約できます。歯と歯ぐきの境目、奥歯のかみ合わせ面を中心に、1本ずつ小刻みに磨きます。 - 手順3:合間に歯ブラシの汚れをティッシュで拭き取る — 磨いている途中でこまめにブラシの汚れをティッシュやガーゼで拭き取ると、少ない水でも汚れを口に戻さずに済みます。 - 手順4:残りの水を2〜3回に分けて口に含み、すすぐ — 一度に全部の水を使わず、少量ずつ2〜3回に分けて口に含み、頬を動かしてブクブクしてから吐き出す、を繰り返します。飲み込む力が弱っている方、自分で水を吐き出せない方に水を口に含ませると、誤嚥のおそれがあります。無理にすすがせないでください。 歯ブラシがない場合は、清潔なガーゼやハンカチ、口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻き、歯の表面を前歯から奥歯へ順にこすって歯垢を拭き取ります。ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。指に巻いたガーゼやシートは端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。洗口液や液体ハミガキを併用すると汚れが落ちやすくなります(洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください)。口腔ケアシートは1回1枚、面を替えながら「歯の表→裏→かみ合わせ→歯ぐき・頬の内側」の順で拭くと効率的です。ご家族など、ほかの方の口を拭くときは、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。 - 唾液腺マッサージ①:耳下腺(じかせん) — 耳たぶの少し前、上の奥歯のあたりに指4本を当て、後ろから前へ円を描くように5〜10回程度を目安に、優しく回します。唾液には細菌を洗い流し、粘膜を守る働きがあります。ただし、このマッサージでどれだけ唾液が増えるのか、臨床的にどの程度意味があるのかは明確ではありません。行う場合も、水分補給や保湿の代わりにはなりません。痛みや腫れがあるところは触らないでください。 - 唾液腺マッサージ②:顎下腺(がっかせん) — あごの骨の内側のやわらかい部分に親指を当て、耳の下からあごの先まで5か所ほどを順に5〜10回程度を目安に、軽く押します。 - 唾液腺マッサージ③:舌下腺(ぜっかせん) — あごの先の真下に両手の親指をそろえて当て、舌を突き上げるようにゆっくり5〜10回程度を目安に押します。 ※【この手順の位置づけ(出典と根拠)】「少ない水での歯磨き」は新潟県・日本口腔ケア学会などが災害時向けに紹介している方法を、「唾液腺マッサージ」は介護・口腔ケアの現場で広く紹介されている方法を参考に構成しています(出典は本資料末尾に明記)。いずれも、災害時の有効性を検証した学術研究が確立している方法ではなく、水や物資が限られる状況での次善策としての紹介です。水と歯磨きの環境が確保できる場合は、通常の歯磨きを優先してください。 ※【水分を我慢しないでください】「トイレに行きたくないから」と水分を控えると、口が乾いて細菌が増えるだけでなく、脱水やエコノミークラス症候群(血の固まりが血管に詰まる病気)のリスクも高まります。飲む水と、お口をきれいにする水は、削らないでください。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。 ## 循環備蓄と年2回の点検 「しまい込んで期限切れ」を防ぐ仕組みが、循環備蓄と点検日の固定です。 循環備蓄とは、普段使う物を少し多めに買い置きし、使った分だけ買い足していく備蓄方法です(政府広報オンラインでも紹介されている方法です)。口腔ケア用品は日用品なので、この方法に向いています。「洗面所の在庫が最後の1個になったら買い足す」をルールにすれば、家に常に新しい予備がある状態を保てます。 - 点検日を年2回、カレンダーに固定する — おすすめは9月1日(防災の日)と3月11日。家族の記憶に残りやすく、防災報道が多い時期なので意識も高まります。スマホのリマインダーに毎年繰り返しで登録しましょう。 - 点検①:期限と状態の確認 — 洗口液・保湿ジェル・義歯洗浄剤の購入日表示を確認し、未開封3年・開封後半年〜1年を過ぎたものは普段使いに回して新品と交換。歯ブラシは毛先の開きがなくても年1回は交換します。 - 点検②:家族構成の変化を反映 — 子どもの歯ブラシのサイズアップ、矯正治療の開始・終了、義歯の使用開始など、この1年の変化をリストに反映します。 - 点検③:置き場所の再確認 — 非常持出袋(玄関)、自宅備蓄(洗面所や納戸)、車・職場の分散分がそれぞれ揃っているか、家族全員が場所を言えるかを確認します。 【点検日にやることチェック】 ☐ 液体製品を点検した(期限表示のない製品が一般的。購入から約3年を目安に入替) ☐ 期限が近い物は普段使いに回し、新品を補充した ☐ 家族の年齢・治療状況の変化をリストに反映した ☐ 持出袋・自宅・車の3か所の中身を照合した(車内は夏に高温になり劣化が早い(特にデンタルフロスは変性する)。点検時に状態を確認し、傷んだものは入れ替えを) ☐ 次回の点検日をリマインダーに登録した ## 避難所に着いたら最初にすること 避難初日の行動が、その後の体調を左右します。お口に関する初動を決めておきましょう。 【避難初日のお口の初動チェック】 ☐ 給水場所と、うがい・歯磨きをしてよい場所(排水場所)を確認する(避難所運営側の案内に従います) ☐ 口腔ケア用品の配布があるか、運営本部・救護班に聞く(支援物資に歯ブラシが含まれることは多いですが、届くまで数日かかる場合があります) ☐ 義歯をなくした・壊れた場合は、我慢せず救護班に申し出る(食べられないことは体力低下に直結します。応急対応や歯科支援チームへの取り次ぎが受けられます) ☐ 「食べたら拭く・磨く」を家族のルールにする(水がなくてもシートやマッサージでできることがあります) ☐ 1日1回は時間をかけて、ていねいに磨く時間を確保する(回数を増やせないときは、寝る前の1回をていねいに行ってください) 避難所には歯科の支援が入ります。2004年の中越地震では、発災5日目から25日間・のべ115か所の避難所を巡回し、のべ1,226名が口腔ケアを受けました。2016年の熊本地震の被災地でも、約1か月で900人超が歯科的アセスメント(お口の状態の確認)を受け、応急歯科治療・口腔ケア・保健指導の支援が行われています。2022年にはJDAT(日本災害歯科支援チーム)が創設され、2024年の能登半島地震では計127チームが派遣されました。「避難所で歯科に相談するのは大げさ」ではありません。遠慮なく声をかけてください。 ※【特に気を配りたい人】高齢のご家族、飲み込む力が弱い方、要介護の方は、誤嚥性肺炎のリスクが最も高いグループです。本人任せにせず、家族が1日1回「お口を見せて」と声をかけ、食後のケアと保湿を手伝ってください。熊本地震(2016年)では直接死50人に対し災害関連死は225人と約4.5倍、能登半島地震(2024年)では災害関連死516人(2026年7月時点・審査継続中)が直接死228人の2倍を超えました。避難生活に入ってからの健康管理が、とても大切です。 ## 今すぐ確認:10項目チェック表 この資料を閉じる前に、1分でできる現状チェックです。7個以上チェックがつけば合格ラインです。 【わが家のお口の防災 10項目】 ☐ 1. 非常持出袋に家族全員分の歯ブラシが入っている ☐ 2. 口腔ケアシート(歯みがきシート)を1人9枚以上備えている ☐ 3. 携帯サイズの洗口液または液体ハミガキがある ☐ 4. 口腔ケア専用の水(500mlペットボトル1本など)を分けて備えている ☐ 5. 高齢の家族の分に、口腔保湿ジェルを備えている(該当者がいる場合) ☐ 6. 義歯ケースと義歯洗浄剤を備えている(該当者がいる場合) ☐ 7. 液体製品に購入日を書いてある ☐ 8. 年2回の点検日(9/1・3/11など)をリマインダーに登録している ☐ 9. かかりつけ歯科医院の名前と連絡先を家族が言える・メモしてある ☐ 10. 「30mlの水での歯磨き」と「唾液腺マッサージ」のやり方を家族に説明できる ※【チェックが6個以下だった方へ】まずは項目1〜3だけで大丈夫です。歯ブラシ・シート・携帯洗口液の3点は、ドラッグストアで数百円から揃い、今日の買い物で完了します。完璧を目指すより、今週中に「3点セット」を持出袋に入れることから始めてください。 ## お口の防災プロジェクトについて この資料は、一般社団法人日本オーラルヘルス協会「お口の防災プロジェクト」が作成しました。 私たちは、災害時の口腔ケアを通じて、避難生活での誤嚥性肺炎などの健康リスクを減らすことを目指し、家庭・自治体・企業・施設向けの啓発資料の提供、備蓄品の選定支援、防災訓練での口腔ケア講習などを行っています。 【こんなご相談を受け付けています】 ☐ 町内会・自主防災組織での口腔ケア講習会の開催 ☐ 高齢のご家族がいる家庭の備蓄品選びの個別相談 ☐ 学校・PTA向けの防災教育教材の提供 ※【ご相談・お問い合わせ】備蓄品の選び方や講習会のご依頼は、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。この資料の印刷・回覧・防災訓練での配布も歓迎します。 ### 出典 - 阪神・淡路大震災の災害関連死(肺炎 約24%) — 神戸新聞(2004年) - 東日本大震災・石巻市の災害関連死のうち肺炎が占めたとされる割合(26.9%) — 石巻市 災害関連死の死因分析 - 専門的口腔ケアで肺炎発症率39%低下・肺炎死亡率53%低下 — Yoneyama T, et al. Oral care and pneumonia. The Lancet. 1999 - 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位 — 厚生労働省 令和2年(2020年)人口動態統計 - 高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎 — 日本呼吸器学会 - 熊本地震(2016年)の被災地の歯科支援実績(アセスメント927人ほか) — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書 - 中越地震の避難所巡回口腔ケア(発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集 - JDAT創設(2022年)・能登半島地震で計127チーム派遣 — 日本歯科医師会 災害歯科保健医療対策 https://www.jda.or.jp/dentist/disaster/ - 災害時の歯とお口のケア(備えておくこと・自分でできること) — 日本歯科医師会 テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/ - 少ない水(約30ml)での歯磨き手順・少量ずつ2〜3回に分けたすすぎ・ハンカチでの清拭 — 新潟県「災害時の口腔ケアについて」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kenko/disaster-oral-care.html - 災害時の口腔ケア・歯科治療Q&A(歯ブラシがない場合の代用・洗口液の併用) — 日本口腔ケア学会 https://www.oralcare-jp.org/saigai_qa/ - 食料・飲料水は最低3日分(推奨1週間分)・飲料水1人1日3L — 首相官邸「災害が起きる前にできること」 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html - 循環備蓄の始め方 — 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/article/202103/entry-10236.html - 液体ハミガキ・洗口液の使用期限(未開封で製造から約3年が目安) — 花王 製品Q&A https://www.kao.com/jp/qa/detail/16502/ - ハミガキ剤・洗口剤の使用期限の考え方 — ライオン よくいただくご質問 https://qa.lion.co.jp/faq/show/321 - 唾液腺マッサージ(耳下腺・顎下腺・舌下腺)の方法 — ピジョンタヒラ「機能的口腔ケア(唾液腺マッサージ・嚥下体操など)」 https://www.pigeontahira.co.jp/column/dentistry032/ - 液体ハミガキ・洗口液の使用期限(未開封3年設計) — サンスター 製品Q&A https://jp.sunstar.com/inquiry/qa-mouth-wash/qa_003.html --- # 資料: 高齢者・介護者向け 備えガイド(高齢者ご本人・ご家族・介護職向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/senior-caregiver-guide 阪神・淡路大震災では災害関連死の9割が60歳以上。入れ歯・とろみ剤・保湿ジェルなど、高齢の方の避難生活に向けた「お口の備え」をまとめた実務ガイドです。 ## なぜ災害時、高齢者の「お口」が命に関わるのか 地震そのものを生き延びた後、避難生活の中で亡くなる「災害関連死」。その最大級の原因が肺炎であり、高齢者に集中しています。 災害関連死とは、建物の倒壊などによる直接死ではなく、避難生活の負担や環境悪化で亡くなることを指します。阪神・淡路大震災(1995年)では死者6,434人のうち919人(兵庫県内の認定)が災害関連死で、その約24%が肺炎でした。しかも災害関連死の9割が60歳以上、8割が発災後2か月以内に起きています。 ▶ 26.9% — 東日本大震災・石巻市の災害関連死のうち、肺炎が占めたとされる割合(出典: 石巻市 災害関連死の死因分析) なぜ肺炎が増えるのか。鍵は「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。誤嚥性肺炎とは、口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に誤って気管から肺に入り、そこで炎症を起こす肺炎です。歯垢(プラーク)1mgには約1億個の細菌がいます。避難所では①水が足りず歯磨きの回数が減る、②入れ歯を洗えない、③水分を控えて口が乾き細菌が増える、④疲労と低栄養で飲み込む力・咳で押し返す力が落ちる——この4つが同時に起こり、眠っている間に細菌を含む唾液を少しずつ誤嚥することがあります。高齢者の肺炎の8割以上は誤嚥性肺炎で、誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位です。 ※【専門的な口腔ケアで肺炎が減ったという研究があります】特別養護老人ホームで行われた2年間の比較試験(Yoneyama et al., The Lancet 1999)では、歯科専門職が関わる専門的口腔ケアにより肺炎の発症率が39%、肺炎による死亡率が53%低下しました。この研究が検証したのは専門的ケアの効果であり、ご本人や介助者による普段の歯磨きの効果を直接調べたものではありません。災害後は肺炎などのリスクが高まると考えられており、日常的な口のケアは、そのリスクを抑えるための対策のひとつです。歯ブラシ1本・水1杯から始められる備えです。 ## 義歯(入れ歯)の防災——なくさない・洗える・すぐ持ち出せる 過去の震災では「入れ歯を家に置いたまま避難した」「就寝中の地震で入れ歯が見つからない」という声が多数ありました。入れ歯を失うと噛めず、低栄養から一気に体力が落ちます。 【今夜からできる義歯の防災チェック】 ☐ 就寝時は外して、フタ付きの義歯ケースに水を張って入れ、置き場所を固定する(枕元の同じ場所に。乾燥すると変形の原因になります) ☐ ティッシュに包んで置くのは厳禁(ゴミと間違えて捨てられる・踏んで割れる、といった事故が起こりやすいと考えられます) ☐ 非常持ち出し袋に「予備の保管容器」「義歯用ブラシ」「義歯洗浄剤1週間分(7錠)」を入れる(市販の義歯ケースは水が漏れるものが多いため、避難用にはフタがパチッと閉まる食品用の密封容器がおすすめ。水を入れたままポケットや枕元に置け、半透明で中身が見えるので誤って捨てられにくい) ☐ ジッパー付き保存袋(フリーザーバッグ)を数枚、非常持ち出し袋に入れておく(二重にすれば義歯と水を入れて持ち歩ける保管容器の代わりに。名前が書けて中身も見え、かさばらないので家庭にも自治体の備蓄にも向きます) ☐ 作り替えで不要になった古い義歯を捨てずに、予備として非常持ち出し袋へ ☐ 義歯ケースに油性ペンで氏名を書く(避難所の洗面所での取り違え・紛失防止に有効です) ☐ 避難時は「メガネ・お薬手帳・入れ歯」を1つのポーチにまとめておく - 洗浄剤がないときの手入れ(1)毎食後に外して拭う — 水が足りないときは、清潔なガーゼ、または口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)で義歯の内側・外側の汚れを拭き取ります。アルコールや除菌成分・香料の入ったウェットティッシュしか手元にないときは、拭いたあとに水を含ませたガーゼで拭き直してから装着してください。口に入れたままでは清潔になりません。少なくとも1日1回は必ず外して手入れします。 - (2)部分入れ歯はバネ(金属部分)を重点的に — バネの内側は汚れが残りやすい場所です。歯ブラシや細い綿棒でこすり落とします。 - (3)中性洗剤を使えるのは、すすげる水があるときだけ — 義歯洗浄剤の代わりに食器用中性洗剤を薄めてブラシ洗いできますが、これは流水で十分にすすげるだけの水があるときに限ります。すすぎ水を確保できないときは洗剤を使わず、(1)の拭き取りだけにしてください。洗剤が残ったまま口に戻すと、粘膜への刺激や、吐き気・下痢の原因になることがあります。研磨剤入りの歯磨き粉は義歯を傷つけるので使いません。 - (4)やってはいけないこと — 熱湯に入れる(変形します)、家庭用の塩素系漂白剤に漬ける(薄めても使わないでください。金属のバネが傷み、薬液が残ると口の粘膜を痛めます)、乾いたまま放置する(ひび割れ・変形の原因になります)は避けてください。 ※【入れ歯をなくしてしまったら】「ないまま我慢」が一番危険です。噛めないと食事量が減って低栄養になります。避難所の救護班・保健師に「入れ歯をなくした」と必ず申し出てください。大規模災害ではJDAT(日本災害歯科支援チーム)などの巡回歯科班が応急対応を行い、その後の本格的な治療・調整は地域の歯科医療機関に引き継がれます。過去の大規模災害では保険証を持ち出せなくても氏名等の申告で歯科受診できる特例措置が設けられています。 ## 口腔乾燥対策——保湿ジェルと唾液腺マッサージ 避難所ではトイレを控えるために水分を我慢しがちです。口が乾くと細菌が増えやすくなり、誤嚥性肺炎につながるおそれがあると考えられています。 唾液には細菌を洗い流し、粘膜を守る働きがあります。避難生活では水分制限・ストレス・降圧薬や睡眠薬などの副作用が重なり、唾液が減って口の中がねばつき、痛み・口臭・飲み込みにくさが出ます。対策の基本は、保湿剤で「外から補う」ことです。唾液腺マッサージも広く紹介されていますが、臨床的にどの程度意味があるのかは明確ではありません。 【備蓄しておく保湿用品(1人あたりの目安)】 ☐ 口腔保湿ジェル 1本+予備1本(米粒大〜小豆大のごく少量を指に取り、舌や頬の内側に薄く伸ばします(のどの奥や上あごの奥には塗らないでください)。塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼやスポンジブラシで必ず拭き取ってください。拭き取らずに重ね塗りを続けると、乾いて固まったジェルがはがれ、のどに落ちて誤嚥や窒息の原因になることがあります。) ☐ 洗口液(アルコールフリー・低刺激タイプ)1本(アルコール入りは乾燥を悪化させることがあります。口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください) ☐ リップクリーム 1本(唇の乾燥・ひび割れは食事量低下につながります) ☐ 液体の口腔ケア用品は購入年月を油性ペンで書いておき、未開封で約3年を目安に入れ替える(期限表示があればそれに従う・循環備蓄)(開封後は早めに使い切ります。期限切れの液体は変質のおそれがあります) 1. 耳下腺(じかせん)マッサージ — 指を数本そろえて耳たぶのやや前(上の奥歯のあたりの頬)に当て、円を描くように後ろから前へ10回ほど回します。 2. 顎下腺(がっかせん)マッサージ — あごの骨の内側のやわらかい部分を、耳の下からあご先に向かって4〜5か所、親指でやさしく各5回ずつ押します。 3. 舌下腺(ぜっかせん)マッサージ — あご先のとがった部分の真下から、両手の親指で舌を押し上げるようにゆっくり10回押します。 4. 行う場合の注意 — 唾液腺マッサージは慣習的に紹介されている方法ですが、臨床的にどの程度意味があるのかは明確ではありません。行う場合も、水分補給や保湿の代わりにはなりません。痛みや腫れがあるところは触らないでください。 ※水分は「一気に」ではなく「こまめに少しずつ」。トイレを心配して水を我慢すると、脱水・口腔乾燥・エコノミークラス症候群のすべてのリスクが上がります。ただし、心臓・腎臓(透析を含む)・肝臓の病気などで主治医から飲水量を指示されている方は、その指示を優先してください。むせやすい方は次のセクションのとろみ付けを活用してください。 ## むせ・嚥下への備え——姿勢・とろみ剤の備蓄量と危険な避難食 「普段の食事ならなんとか食べられる」方ほど要注意です。避難所で配られる食品は、飲み込む力が弱った方には危険なものが少なくありません。 ※【まず「食べる姿勢」から——床置きの食事はむせやすい】床に座り、床に置いた皿へ猫背で首を伸ばして「迎えに行く」ような姿勢は、むせやすくなります。避難所でもできるだけ椅子や台に腰かけ、段ボールを重ねて簡易テーブルを作るなどの工夫で食事の高さを上げ、姿勢を整えて、あごを引いて食べられるようにしましょう。 とろみ剤(とろみ調整食品)は、水やお茶に混ぜて飲み込みやすい濃度にする粉末です。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「学会分類2021(とろみ)」では、とろみを3段階に分けています。使用量は製品により異なるため、必ずお使いの製品の表示を確認し、普段使っている段階をメモしておきましょう。 段階(学会分類2021) | 状態の目安 | 使用量の目安(水100mLあたり) 段階1:薄いとろみ | ストローで容易に吸える。フレンチドレッシング状 | 約1g 段階2:中間のとろみ | とんかつソース状。スプーンを傾けるととろとろ流れる | 約2g 段階3:濃いとろみ | ケチャップ状。スプーンを傾けても形状がある程度保たれる | 製品により大きく異なる(必ずお使いの製品の表示を確認) ※【とろみ剤の備蓄量の計算式】「1日の水分量(mL)÷100 × 段階ごとのグラム数 × 日数」で計算できます。例えば1日1,000mLの水分に中間のとろみ(2g/100mL)を付けるなら、1日約20g、1週間で約140g。3gスティックなら約50本が1週間分の目安です。個包装スティックは避難所で計量不要なので備蓄に向いています。とろみ剤にも賞味期限があるため、普段使いしながら買い足す循環備蓄にしましょう。 【飲み込む力が弱った方に危険な避難食】 ※注意: 乾パン・菓子パン・クラッカー(口の水分を奪ってパサつき、のどに詰まりやすい。スープや牛乳などの水分に浸して湿らせ、小さくちぎって) ※注意: 餅・こんにゃくゼリー(窒息事故の代表格。避難所では避けるのが無難です) ※注意: 板海苔・わかめ・青菜の葉(上あごや喉に貼り付きます) ※注意: カップ麺・味噌汁などの「さらさらした熱い液体」(すすり込みでむせやすい。少し冷まし、必要ならとろみ剤を) ※注意: 酸味の強いジュース・柑橘類(酸味の刺激でむせを誘発することがあります) ※注意: パンとお茶を「交互に流し込む」食べ方(口の中で混ざった状態が最も誤嚥しやすくなります。飲み込んでから次の一口へ) - 配給食を食べやすくする工夫(1)ふやかす・つぶす — アルファ化米は規定より多めの水でやわらかく戻す、パンはスープや牛乳に浸す、レトルト粥を備蓄に加える、など「水分を含ませて均質にする」のが基本です。 - (2)姿勢を整える — できるだけ椅子に深く腰かけ、軽くあごを引いて食べます。寝たままの食事は最も誤嚥しやすい姿勢です。座れない場合も上体を起こし、食後すぐに横にならないでください。 - (3)一口量と交互嚥下 — 一口はティースプーン1杯程度。口の中のものを飲み込んでから、とろみ付きの水分をひと口、と交互に飲み込む「交互嚥下」で、喉に残った食べかすを流します(口に入れたまま水分で流し込む食べ方とは違います)。 - (4)むせが続く・発熱したら — 食事中に毎回むせる、痰が増えた、微熱が続く、ぼんやりしている——は誤嚥性肺炎のサインのことがあります(高齢者は高熱が出ないことも多い)。救護班・保健師にすぐ相談してください。 ## 要介護者の避難用口腔ケアセット——吸引が必要な方まで 介護度が高い方ほど自分では口の汚れを訴えられません。「介護用品の袋」とは別に「口腔ケアの袋」を作っておきます。 品目 | 数量の目安(1人・7日分) | 用途・メモ 歯ブラシ(小さめヘッド・やわらかめ) | 2本 | 1本は予備。ヘッドが小さいと介助磨きしやすい スポンジブラシ(使い捨て) | 14本(1日2本) | 粘膜・舌・上あごの清掃用。再利用は細菌繁殖のもと 口腔保湿ジェル | 1〜2本 | ケアの前に塗ると乾いた汚れがふやけて取りやすい 口腔ケア用ウェットティッシュ(ノンアルコール) | 1〜2パック | 断水時の拭き取りケアの主役 洗口液・液体歯磨き(低刺激) | 1本 | 歯磨き後の仕上げ、水節約に(口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わない) 紙コップ+ポリ袋 | コップ7個・袋10枚 | 袋をコップや洗面器代わりの吐き出し受けに 使い捨て手袋 | 14枚以上 | 介助者の感染対策。1ケア1枚 ガーゼ・綿棒 | 適量 | 拭き取り・細部の清掃に ペンライト | 1本 | 暗い避難所で口の中を確認するため 義歯ケース・義歯ブラシ・洗浄剤 | 各1(洗浄剤7錠) | 義歯使用者のみ とろみ剤(個包装) | 3gスティック約50本 | 中間のとろみ・水分1日1,000mLで計算した例 ※【たんの吸引が必要な方は「電源の備え」までがセットです】電動吸引器を使っている方は、停電で使えなくなることを前提に、①手動式(手押し・足踏み式)吸引器を1台、②吸引カテーテルの予備(1日の使用本数×7日分)、③モバイルバッテリーや車のシガーソケットから給電する手段、④吸引時に使う水(水道水が使えない場合はペットボトル水)を用意してください。かかりつけの訪問看護ステーションと「停電時に誰がどう対応するか」を事前に文書で決めておきます。 【モノ以外の備え】 ☐ 市区町村の「個別避難計画」の作成を、担当ケアマネジャーや市区町村に相談する(要介護度が高い方は自治体から作成を勧められます。ご本人が希望すれば広く対象になり得る仕組みです) ☐ 福祉避難所(介護が必要な人向けの避難所)の場所と開設条件を市区町村に確認する(制度上、福祉避難所は一般避難所などで自治体職員に相談したうえで案内される仕組みで、直接行っても受け入れてもらえないことがあります。ただし個別避難計画で避難先として定められた場合は、直接避難できます) ☐ 普段の口腔ケア手順・義歯の有無・食形態・とろみの段階を1枚のカードに書き、お薬手帳と一緒に保管する(介助者が変わっても同じケアが続けられます。カードは家族のスマホでも撮影しておくと安心です(電池切れに備え、紙のカードも一緒に持ち出してください)) ## 避難所での口腔ケア日課表——朝・昼・夜の具体手順 避難生活では「いつ・何を・どれだけの水で」を決めておくと、疲れていてもケアが途切れません。 時間帯 | やること | 水の目安 朝食後 | 歯磨き(またはスポンジブラシで粘膜清掃)→少量の水でうがい。義歯は外して拭き洗い | うがい約30mL(15mL×2回)※自分で吐き出せる方のみ 昼食後 | うがい+口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)や清潔なガーゼで歯の表面を拭く。口が乾く人は保湿ジェル+唾液腺マッサージ | うがい15mL×1〜2回※自分で吐き出せる方のみ 夕食後〜就寝前 | 1日で最も丁寧に:歯磨き→舌・粘膜の清掃→うがい→保湿ジェル。義歯は外して洗い、水を張ったケースで保管 | うがい約30mL(15mL×2回)※自分で吐き出せる方のみ ※【就寝前のケアが最重要です】眠っている間に、唾液が少しずつ気管に入り込んでいることがあります。むせないため本人も周りも気づきにくく、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」と呼ばれます。これが高齢の方の肺炎の原因のひとつと考えられています。口の中を清潔にしておくと、唾液に含まれる細菌が減り、肺炎を起こしにくくなると考えられています。1日1回しかケアできない状況なら、就寝前を選んでください。 1. 少ない水でのうがいのコツ — 自分でうがいができ、水をきちんと吐き出せる方であれば、コップに30mLの水を用意したら、一度に使わず15mLずつ2回に分けてブクブクうがいをする方が、汚れを外に出しやすいと考えられています(日本口腔ケア学会)。吐き出す先はポリ袋+ティッシュで。むせやすい方、寝たままの方、自分で吐き出せない方には無理にうがいをさせないでください。水は歯ブラシを湿らせる程度にとどめ、ブラシに付いた汚れをそのつど口の外でティッシュやガーゼに拭き取ってください。 2. 歯ブラシが使えないとき — 口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)やガーゼを指に巻き、歯の表面と歯ぐきの境目、頬の内側、上あご、舌の順に拭き取ります。液体歯磨きや洗口液を併用すると汚れが落ちやすくなります(洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください)。指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。介助で行う場合、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わず、担当の医師・歯科医師・看護師・介護職に相談してください。 3. 介助が必要な方のケア手順 — ①声をかけ上体を起こす(最低30度)②保湿ジェルをごく少量(米粒から小豆大ほど)とり、舌や頬の内側に薄く伸ばして湿らせる(のどの奥や上あごの奥には塗らない。前に塗ったジェルが残っていれば、先に湿らせたガーゼやスポンジブラシで拭き取る)③スポンジブラシは水を含ませてよく絞ってから、奥から手前へ回転させながら拭う④拭き取った汚れを飲み込ませないよう、こまめにブラシをティッシュで拭く⑤最後に保湿ジェルをごく少量、舌や頬の内側に薄く伸ばす(のどの奥や上あごの奥には塗らない。次に塗るときは、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼやスポンジブラシで必ず拭き取ってから)。 4. 週1回の「お口チェック」 — ペンライトで、口臭の悪化・舌の白い汚れ(舌苔)・口内炎・義歯による傷・食事中のむせの増加を確認します。1つでも悪化していれば巡回歯科班や救護班に相談を。 ## 介護施設・在宅介護者のためのBCP視点 介護施設・事業所は2024年4月から災害・感染症BCP(業務継続計画)の策定が義務化されました。そのBCPに「口腔ケア」の1ページを加え、災害時にも口腔ケアが途切れない体制をつくりましょう。 BCP(Business Continuity Plan:業務継続計画)とは、災害時にもサービスを止めない・早く復旧するための計画です。多くの施設のBCPは食事・排泄・与薬は押さえていても、口腔ケアが抜け落ちがちです。中越地震(2004年)では発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名への避難所巡回口腔ケアが行われ、熊本地震(2016年)の被災地でも約1か月で900人超の歯科的アセスメントと250人超への口腔ケアが実施された報告があります。外部支援が到着するまでの数日間を自力でつなぐ準備が、施設側に必要です。 【BCPに追記する口腔ケア項目】 ☐ 備蓄リストにスポンジブラシ・保湿ジェル・とろみ剤・義歯洗浄用品を追加(利用者数×最低3日、できれば7日分)(食料・飲料水と同じ棚で一元管理し、期限を年1回点検) ☐ 利用者ごとの「口腔情報一覧」を紙で保管(義歯の有無・食形態・とろみ段階・吸引の要否・かかりつけ歯科。停電でPCが使えない前提で紙に) ☐ 協力歯科医療機関との災害時連絡手順(誰が・どの手段で・何を依頼するか)を明文化 ☐ 断水時の口腔ケア手順書(本ガイドの日課表を流用可)を各フロアに掲示 ☐ 年1回の防災訓練に「断水想定の口腔ケア演習」を組み込む ☐ 在宅介護では、ケアマネジャー・訪問看護・訪問歯科と「発災後72時間の役割分担」を共有しておく 様式例:利用者口腔情報カード(1人1枚) | 記入例 氏名・生年月日 | 山田花子・1938年5月1日 義歯 | 上:総義歯/下:部分義歯(就寝時は外す) 食形態・とろみ | 全粥・きざみとろみあん/水分は中間のとろみ(2g/100mL) むせ・嚥下の注意 | さらさらの水でむせる。食後1時間は座位保持 吸引 | 不要(痰がらみ時は体位ドレナージ) かかりつけ歯科・連絡先 | ○○歯科クリニック 000-000-0000 ※BCP未策定の介護事業所には2024年度介護報酬改定で基本報酬の減算規定が設けられています。口腔ケアの追記は既存BCPへの1ページ追加で済み、監査対応と利用者の健康管理の両方に活かせます。 ## 周囲へ支援を求めるときの伝え方 避難所で「入れ歯のこと、口のことくらいで言い出せない」という遠慮から、相談が遅れることがあります。口の困りごとは堂々と申し出てよい医療ニーズです。 大規模災害では歯科の支援チームが被災地に入ります。JDAT(日本災害歯科支援チーム)は2022年に創設され、能登半島地震(2024年)では計127チームが派遣されました。避難所の運営本部・救護班・保健師に伝えれば、こうした巡回支援につながります。「誰に・何を・どう伝えるか」を型として覚えておきましょう。 被災地で実際に多い口の困りごとは、「口腔乾燥」「口内炎」、そして「義歯が合わない・痛い」です。また、普段は義歯なしでも食べられていた方が、食品を選べず調理もできない避難所では「食べられない」状態になることがあります。こうした噛む力の弱さは、避難生活で表面化することがあります。遠慮せず、早めに伝えてください。 困りごと | 伝える相手 | そのまま使える伝え方 入れ歯が合わない・痛い(壊れた・なくした場合も) | 救護班・保健師・避難所運営本部 | 「入れ歯が合わなくて(壊れて・なくして)食事が噛めません。歯科の巡回や相談窓口はありますか」 むせて食べられない | 食料配布の担当・保健師 | 「飲み込む力が弱く、普通の水やパンでむせます。おかゆ・やわらかい食品・とろみ剤はありますか」 口が乾いて痛い・口内炎ができた | 救護班・巡回の看護師 | 「口の中がカラカラで、痛み(口内炎)があります。口腔ケア用品(保湿ジェルやスポンジブラシ)の支援物資はありますか」 家族の口のケアができない | 保健師・介護職の応援スタッフ | 「寝たきりの家族の口のケアの仕方を教えてください。歯科衛生士さんの巡回はありますか」 発熱・痰の増加・元気がない | 救護班(医療) | 「食事のたびにむせていた家族が発熱しました。誤嚥性肺炎が心配です」 【伝わりやすくするコツ】 ☐ 「困りごと+してほしいこと」を1文ずつで伝える(例:「噛めない」+「やわらかい食品がほしい」) ☐ 口腔情報カード(前セクションの様式)やお薬手帳を見せながら話す(とろみの段階など、口頭では伝わりにくい情報が正確に伝わります) ☐ 断られても一度で諦めない(物資や巡回チームは日ごとに変わります。翌日また別の担当者に伝えてください) ☐ ご本人が言い出せない場合は家族・隣の避難者が代わりに伝えてよい(「あの方、食事のたびにむせています」の一言が、支援につながるきっかけになります) ※支援を求めることは「わがまま」ではなく、正当な医療ニーズの申告です。過去の災害でも、申し出をきっかけに応急歯科治療や保健指導につながった例があります。遠慮せず、声を上げてください。 ## 備えの点検は、私たちと一緒に 「お口の防災プロジェクト」(一般社団法人日本オーラルヘルス協会)は、災害時の口腔ケアを通じて、避難生活での誤嚥性肺炎などの健康リスクを減らすことを目指して活動しています。 本ガイドのチェックリストを使ってご家庭・施設の備えを点検し、足りないものは次の買い物から少しずつそろえてください。介護施設・自治体・地域包括支援センター向けには、BCPへの口腔ケア項目の組み込み支援、職員向け研修(断水時の口腔ケア実技を含む)、備蓄品リストの個別監修を行っています。「うちの利用者構成だと何をどれだけ備えればよいか」といった個別のご相談も歓迎します。 ※【ご相談窓口】研修・監修・講演のご依頼、資料の配布利用のご相談は、お問い合わせページからお寄せください。本ガイドは印刷して避難袋に入れる・施設内に掲示するなど、防災目的で自由にお使いいただけます。 ### 出典 - 阪神・淡路大震災の災害関連死919人(兵庫県内)の分析(肺炎約24%・60歳以上9割・2か月以内8割) — 神戸新聞(2004年) - 専門的口腔ケアによる肺炎発症率39%低下・肺炎死亡率53%低下(特養での2年間RCT) — Yoneyama T, et al. Oral care and pneumonia. The Lancet. 1999 - 東日本大震災・石巻市の災害関連死のうち肺炎が占めたとされる割合(26.9%) — 石巻市 災害関連死の死因分析 - 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位 — 厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計 - 高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎 — 日本呼吸器学会 - 学会分類2021(とろみ)3段階と使用目安量(水100mLあたり薄い約1g・中間約2g。濃いとろみは製品差が大きい) — 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食学会分類2021/栄養指導Navi 使用目安量一覧 https://healthy-food-navi.jp/navi_wp/wp-content/themes/navi/images/search/bunrui/bunrui2021-05.pdf - 義歯洗浄剤がないときの代替手入れ(拭き取り・中性洗剤・綿棒)、少量の水でのうがいは15mLずつ2回に分けるのが目安(自分で吐き出せる方)、義歯は1日1回以上外して洗う — 日本口腔ケア学会「災害時の口腔ケア・歯科治療 平易なQ&A」 https://www.oralcare-jp.org/saigai_qa/ - 唾液腺マッサージの手順(回数は歯科医療機関・自治体公開資料で広く用いられる目安) — 国立がん研究センター東病院 口腔内炎症時のケア資料ほか歯科医療機関公開資料 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/advice/040/002_kounaienn.pdf - 災害時の避難所口腔ケア支援の実務手順 — 日本歯科衛生士会「災害歯科保健活動 歯科衛生士実践マニュアル」(2021) https://www.jdha.or.jp/pdf/outline/saigaimanual2021.pdf - 介護事業所のBCP策定義務化(2024年4月〜)と未策定時の基本報酬減算(令和6年度介護報酬改定) — 厚生労働省 介護施設・事業所における業務継続ガイドライン/令和6年度介護報酬改定 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html - 熊本地震(2016年)の被災地の支援実績(歯科的アセスメント927人・応急歯科治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人) — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書 https://jsdphd.umin.jp/pdf/nkkk/oralcare.pdf - 中越地震での避難所巡回口腔ケア(発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集 - JDAT(日本災害歯科支援チーム)2022年創設・能登半島地震で計127チーム派遣 — 日本歯科医師会 災害歯科医療対策 https://www.jda.or.jp/disaster/ - 熊本地震(2016年。直接死50人・災害関連死225人)・能登半島地震(2024年。直接死228人・災害関連死516人、2026年7月時点)の災害関連死データ — 内閣府・石川県 公表資料 --- # 資料: 自治体向け 導入ガイド(自治体防災・保健担当者向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/municipality-guide 避難所の口腔ケア体制を、国の計画・指針と先行事例をもとに、予算ゼロの一歩から地域防災計画に組み込むための実務ガイドです。 ## なぜ、いま自治体に「お口の防災」が必要か 災害関連死の主要な死因の一つである肺炎のリスクは、被災後の口腔健康管理の継続で下げられると考えられています。 災害関連死とは、建物倒壊や津波などの直接の被害ではなく、避難生活の身体的負担や環境悪化が原因で亡くなることをいいます。阪神・淡路大震災(1995)では死者6,434人のうち919人(兵庫県内の認定)が災害関連死とされ、熊本地震(2016)では直接死50人に対し災害関連死は225人と約4.5倍、能登半島地震(2024)では直接死228人に対し災害関連死は516人(2026年7月時点・審査継続中)と2倍を超え、災害関連死が直接死を上回る災害が続いています。 ▶ 約24% — 阪神・淡路大震災の災害関連死919人(兵庫県内)のうち、肺炎が占めた割合。災害関連死の9割は60歳以上、8割は発災後2か月以内に発生しました(出典: 神戸新聞(2004)) 東日本大震災(2011)でも、石巻市の災害関連死の26.9%が肺炎であったとされています。高齢者の肺炎の8割以上は、口の中の細菌を含む唾液や食べ物が誤って気管に入ることで起きる「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」です。歯垢(プラーク)1mgには約1億個の細菌が含まれ、断水で歯磨きができない避難所は、この細菌が増える条件がそろっています。 ▶ 39%低下 — 特別養護老人ホームでの2年間の比較研究(RCT)で、歯科専門職が関わる専門的口腔ケアにより肺炎発症率が39%、肺炎による死亡率が53%低下しました(出典: Yoneyama et al., The Lancet 1999) ※【担当者に伝えたい結論】耐震化や津波避難と違い、口腔ケアは「発災後に、現場で、低コストで」実行できる避難生活の健康管理です。必要なのは大規模予算ではなく、計画への位置づけ・少量の備蓄・受援ルートの3点です。本ガイドはその3点を整備する手順を示します。 ## 国の計画・指針における口腔衛生の位置づけ(庁内説明・議会答弁に使える根拠) 「なぜ市が歯のことまでやるのか」への答えは、国の計画・指針にすでに書かれています。国の計画・指針の記載を、文書名・年次つきで整理します。 避難所の口腔衛生対策は、自治体独自の上乗せ施策ではなく、災害対策基本法から避難所運営ガイドラインまで一貫して位置づけられた「国の方針に沿った取組」です。予算要求や議会説明では、次の表の文書名と記載箇所をそのまま引用できます。 文書(所管・年次) | 口腔衛生・歯科に関する記載 災害対策基本法 第86条の6(平成25年6月改正で新設) | 災害応急対策責任者に、避難所における「生活環境の整備に必要な措置」を講ずる努力義務を規定。避難所の保健衛生対策の法的根拠です 防災基本計画(中央防災会議・令和7年7月1日修正) | 「各災害に共通する対策編」で、都道府県が協力を得る医療チームとして日本災害歯科支援チーム(JDAT)を、JMAT・JRAT・JDA-DAT等と並べて明記 避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)(内閣府防災担当・平成28年4月策定、令和6年12月改定) | 「病気の予防」の項目に「口腔衛生管理」を明記。市町村向けチェックリストに「1-6 正しい口腔ケアの周知・指導を実施する」(担当:保健・医療担当) 避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(内閣府防災担当・平成25年8月策定、令和6年12月改定) | 備蓄しておくことが望ましい品目として「石鹸、歯磨用品、ティッシュペーパー、トイレットペーパー等の日用品」を例示。歯科医師等の職能団体による人的支援スキームを都道府県と連携して活用することが望ましいと記載 地方公共団体における歯科保健医療業務指針(厚生労働省医政局長通知・令和6年3月、同年4月適用) | 「災害時歯科保健医療体制の確保」の項で、都道府県に対し、大規模災害時の歯科医療の確保と避難所等における口腔衛生管理のため、歯科医師会・歯科衛生士会・歯科技工士会・大学歯学部等と連携した体制整備・災害時対応マニュアルの作成・人材育成に努めることを求めています 大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の強化について(厚生労働省・令和8年通知) | 都道府県に保健医療福祉調整本部の設置と、保健医療福祉活動チームの受援・派遣調整体制の整備を求める技術的助言。歯科支援チームの派遣調整も、この県の調整本部の枠組みの中で行われます なお、災害時の保健医療福祉体制は、一般に国—都道府県—市町村の階層で組み立てられており、広域調整・専門職チームの派遣調整・関係団体との協定は都道府県の役割です(保健所設置市・特別区は上記指針の直接の宛先でもあります)。市町村の計画と受援は、都道府県の体制と接続する形で設計してください。 ※【答弁・起案にそのまま使える整理】「避難所における口腔衛生管理は、内閣府の避難所運営ガイドライン(令和6年12月改定)において病気の予防対策として市町村が取り組むべき事項とされており、防災基本計画(令和7年7月修正)にも日本災害歯科支援チーム(JDAT)との連携が位置づけられています。本市の取組はこれらに基づき、県の保健医療福祉調整体制と連携して行うものです。」 あわせて、誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位(厚生労働省・令和2年人口動態統計)です。平時から高齢化率の高い自治体ほど、避難生活での肺炎リスクの高い住民を多く抱えていることになります。 ## 先行事例に学ぶ「動いた仕組み」 巡回の規模感、受援の要、地元への引き継ぎ方。3つの実例から、自治体が準備すべき型が見えてきます。 新潟県中越地震(2004)では、発災5日目から25日間にわたり避難所巡回口腔ケアが実施され、115か所・のべ1,226名に対応しました(厚生労働科学研究・中久木班報告集)。ここから得られる計画上の目安は「発災後おおむね1週間以内に巡回を開始できる体制を、あらかじめ決めておく」ことです。 ▶ 1,226名 — 中越地震で発災5日目から25日間・115か所の避難所巡回口腔ケアが対応した人数(出典: 厚生労働科学研究 中久木班報告集) 熊本地震(2016)の被災地では、2016年4〜5月の約1か月で歯科的アセスメント927人、応急歯科治療46人、口腔ケア252人、保健指導242人という支援が展開されました(日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書)。この活動を支えた形の一つが、地元の歯科関係者がコーディネーターとなり、外部支援チームと行政・避難所をつなぐ「地元コーディネーター方式」です。外部チームは入れ替わっても、地元コーディネーターが要支援者情報と活動方針を引き継ぐことで、支援が途切れにくくなります。ただし、この形が取れるかどうかは地域の体制や被災状況によって大きく異なります。 熊本地震の被災地での支援実績(2016年4〜5月) | 人数 歯科的アセスメント(口の状態の確認) | 927人 応急歯科治療 | 46人 口腔ケア | 252人 保健指導 | 242人 東日本大震災の被災地では、発災直後から歯科保健チームによる活動が約10年間継続され、その間に乳幼児歯科健診・フッ化物洗口事業・子育て歯科相談会などの歯科事業が、地元の保健センターを中心とする体制のもとで展開されるようになった例があります(活動報告会記事、2021年)。外部支援は「いつか終わる」前提で、平時の歯科保健事業として地元に着地させる設計が重要です。 ※【3事例に共通する成功要因】(1)発災前から連絡先と役割が決まっていた、(2)地元の専門職が外部支援の窓口(コーディネーター)になった、(3)支援終了後の姿(地元移行)を早期に描いた。この3点は、次章以降の計画文言・受援体制にそのまま反映できます。 ## 地域防災計画への組み込み:4ステップと文言例 計画修正は年1回の防災会議サイクルに乗せれば、追加予算なしで実現できます。 - ステップ1:現状確認(1週間) — 自団体の地域防災計画・避難所運営マニュアルのPDFを「口腔」「歯科」「歯」で全文検索します。記載がない、または「歯科医療救護」(治療)のみで「口腔衛生管理」(予防)がない場合が修正対象です。あわせて県の地域防災計画の歯科関連記載と、県歯科医師会と県の協定の有無を確認します。 - ステップ2:修正案の作成(2〜4週間) — 下の文言例をベースに、予防対策編(備蓄・協定)と応急対策編(避難所での実施・受援)の2か所に追記する案を作ります。根拠として第2章の国資料一覧を添付します。 - ステップ3:関係課・関係機関協議(1〜2か月) — 防災担当課と保健担当課(保健センター)の共管とし、郡市歯科医師会・県歯科医師会に文案を照会します。県レベルの調整では、歯科医師会とともに歯科衛生士会や大学歯学部等も連携先になります(国の歯科保健医療業務指針も、都道府県にこれらとの連携体制整備を求めています)。都道府県ごとに災害歯科保健医療連絡協議会を設ける取組も進められています。協議の場で、発災時の連絡窓口(誰から誰へ要請するか)を担当者名レベルまで具体化しておきます。 - ステップ4:防災会議への付議 — 年次の地域防災計画修正議案に含めて防災会議に付議します。修正理由は「防災基本計画(令和7年7月修正)および内閣府避難所運営ガイドライン(令和6年12月改定)との整合」で足ります。 ※【地域防災計画 文言例(そのまま調整して使えます)】【予防対策編】「市は、避難生活に起因する災害関連死を防止するため、避難所等における口腔衛生管理を含む避難者の健康管理体制をあらかじめ整備する。このため、○○県歯科医師会・○○郡市歯科医師会との連携体制の構築を図るとともに、歯ブラシ・洗口液等の口腔ケア用品を避難所の備蓄品目に位置づける。」【応急対策編】「市は、避難所開設後速やかに、保健師等による巡回活動に口腔衛生管理を位置づける。市は、必要と認めるときは、県を通じて日本災害歯科支援チーム(JDAT)等の歯科保健医療支援の派遣を要請する。」 ※「歯科医療救護(治療)」と「口腔衛生管理(予防)」は別物です。自治体計画には、身元確認・応急治療の記載はあっても、避難所での口腔衛生管理(予防)の記載がない場合が少なくありません。修正のポイントはこの一語の追加です。 ## 避難所運営マニュアルへの追加項目(文例・様式例つき) マニュアルには「いつ・誰が・何をするか」を時系列で書き込みます。以下は追記用のチェックリストと様式例です。 【開設時(発災〜24時間):施設管理・衛生班】 ☐ 口腔ケアコーナーを設置する(手洗い場・給水所の近くに、鏡・照明・ゴミ袋・コップ置き場を確保。文例:「歯みがき・入れ歯洗いはこちらでお願いします」) ☐ 備蓄の口腔ケア用品(歯ブラシ・洗口液・清拭シート)を搬出し、配布方法を決める(歯ブラシは衛生上、1人1本の個別配布とし、共用しない) ☐ うがい・歯磨き用の水を飲料水と別枠で見込む(目安として1人1日コップ1杯(約200mL)。給水計画に明記) 【運営期(〜1週間):保健・救護班】 ☐ 物資配布時に歯ブラシを全員に配布し、館内放送・掲示で口腔ケアを呼びかける(掲示文例:「食後と寝る前の歯みがきで、口の中を清潔に保ちましょう。口の中の細菌が減り、肺炎を起こしにくくなると考えられています。水が少ないときは洗口液や口ふきシートをご利用ください(洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください)」) ☐ 義歯(入れ歯)使用者・介助が必要な方を把握する(下の口腔スクリーニング票を受付名簿とあわせて運用) ☐ 保健師等の巡回項目に「口の状態」を追加する(食事でむせる・口の乾き・義歯の紛失は要フォローのサイン) 【長期化時(1週間〜):保健・救護班】 ☐ 歯科支援チーム(JDAT等)受入れ時の活動場所・電源・水・情報共有方法を提供する ☐ 要フォロー者リストを支援チームに引き継ぎ、チーム交代時も同じ様式を使い続ける ☐ 在宅避難者・車中泊避難者にも物資配布と声かけの経路を確保する 避難者口腔スクリーニング票(様式例) | 記入欄 氏名・年齢・居住スペース | (  ) 義歯の使用 | なし / 上 / 下 / 紛失・破損あり 食事のとき、むせることがある | はい / いいえ 口の痛み・強い乾きがある | はい / いいえ 歯みがきが自分でできる | できる / 一部介助 / 全介助 特記(かかりつけ歯科・服薬など) | (  ) ※【断水時の考え方】水が足りないことを理由に口腔ケアを中止しないでください。少量の水を紙コップにとって歯ブラシをすすぎながら磨く、洗口液や口腔清拭シートを併用する、義歯は毎日はずして清掃する、といった代替手順をマニュアルに明記しておくと、現場が迷いません。 ## 備蓄基準の目安:避難者100人あたりの品目・数量表 内閣府の取組指針(令和6年12月改定)は「歯磨用品」等の日用品備蓄を望ましいと例示しています。以下は当プロジェクトが推奨する具体的な数量の目安です。 前提条件:避難者100人・発災後7日分、高齢者を3割(うち義歯使用者20人・歯磨きに介助が必要な方5人)と想定した目安です。地域の高齢化率・避難所の性格(学校・福祉施設等)に応じて増減してください。算定の考え方を示してあるので、人数を入れ替えれば独自の基準を作れます。 品目 | 数量(100人・7日分) | 算定の考え方 | 備考 歯ブラシ(大人用) | 110本 | 1人1本+予備1割 | 個包装・キャップ付き。共用禁止 歯ブラシ(子ども用) | 15本 | 避難者の1割強を子どもと想定 | 学校避難所では増量 液体歯磨・洗口液 | 500mL×30本 | 1人1回10mL×1日2回×7日=14L | 断水時の歯磨き補助に。使用期限に注意(下記) 口腔清拭シート(ノンアルコール) | 700枚 | 1人1日1枚×7日 | 歯磨きできない場面の代替 スポンジブラシ(使い捨て) | 105本 | 要介助者5人×1日3本×7日 | 要介護高齢者・嚥下障害者のケア用 義歯洗浄剤 | 140錠 | 義歯使用者20人×1日1錠×7日 | 義歯ケースとセットで 義歯ケース(名前記入欄つき) | 20個 | 義歯使用者20人×1個 | 紛失・誤廃棄の防止に必須 使い捨て手袋 | 200枚 | 介助者用(1ケア1組×交代要員分) | 感染対策と兼用可 紙コップ | 1,500個 | 1人1日2個×7日+予備 | うがい・給水と兼用 ※【液体口腔ケア用品には使用期限があります】洗口液・液体歯磨などの液体製品は、法令上、製造から3年を超えて品質が安定なものには使用期限の表示義務がなく、外装に期限記載のない製品が一般的です(メーカー各社は未開封で製造から約3年を目安としています)。備蓄箱の外側に購入年月を大書きし、年1回の防災点検で確認のうえ、購入から3年をめどに介護予防教室や防災訓練の配布物として使い切り、新品を補充する「循環備蓄」を仕組みにしてください。歯ブラシ等の乾物も高温多湿を避けて保管します。 【備蓄運用のチェック】 ☐ 備蓄場所は避難所ごとの分散配備か、集中備蓄なら発災当日に搬送できるか ☐ 品目・数量・期限を防災担当課と保健担当課の双方が台帳で共有しているか ☐ 流通備蓄(協定による調達)に口腔ケア用品が含まれているか(薬局・卸との協定品目リストに「歯ブラシ・洗口液・義歯洗浄剤」を明記) ## 受援体制:JDATと歯科医師会協定の確認ポイント 支援は「来てくれる」ものではなく「受け入れる準備をした自治体に速く届く」ものです。 日本災害歯科支援チーム(JDAT)は、日本歯科医師会等による災害歯科支援の全国的な仕組みとして2022年に創設され、能登半島地震(2024)では計127チームが派遣されました。防災基本計画(令和7年7月修正)でも、都道府県が協力を得る医療チームの一つとしてJDATが明記されています。市町村の役割は、県を通じた派遣要請のルートと、受け入れ環境をあらかじめ整えておくことです。あわせて、都道府県ごとに歯科医師会・歯科衛生士会・大学歯学部・病院歯科等が参画する災害歯科保健医療連絡協議会を設け、平時からチームの育成と調整を行うことが提言されています。体制の整い方は都道府県によって異なるため、自団体の県の状況を確認するところから始めてください。 ▶ 127チーム — 能登半島地震(2024)で派遣されたJDATのチーム数。2022年創設の全国的な災害歯科支援の仕組みです(出典: 日本歯科医師会) - 受援フロー1:要請 — 市の災害対策本部(保健担当)が避難所の口腔スクリーニング結果をもとに必要性を判断し、県の保健医療福祉調整本部へ歯科支援を要請します。要請の判断基準(例:要介助者○人以上、断水○日以上)をマニュアルに書いておくと初動が速くなります。 - 受援フロー2:調整 — 県の保健医療福祉調整本部が派遣調整を行います。県内で対応できる規模の災害では、県が県歯科医師会と直接調整して完結します。災害救助法が適用される広域災害では、県→国(厚生労働省)→日本歯科医師会→各都道府県歯科医師会という依頼ルートが基本です(災害救助法を使わない小規模災害は、災害対策基本法に基づき県内で対応します)。市側は活動拠点(水・電源・駐車場所)、避難所リスト、口腔スクリーニング票を用意して待ち受けます。 - 受援フロー3:活動と引き継ぎ — 過去の災害では、地元の歯科医師会関係者がコーディネーターを担う形が機能した例があります。ただし地域の高齢化や被災の状況によっては地元だけでは担えない場合も多く、その際は県や外部チームがコーディネートを補完する前提で設計します。外部チームの交代時も同一様式で要フォロー者情報を引き継ぎ、終了時は平時の歯科保健事業(保健センター)への引き継ぎまでを受援の完了と定義します。 【県歯科医師会・郡市歯科医師会との協定 確認ポイント】 ☐ 協定の有無と範囲(「身元確認」「医療救護」のみか、「避難所の口腔衛生管理(予防)」まで含むか) ☐ 要請ルート(市→県→県歯科医師会か、市→郡市歯科医師会への直接要請も可能か。夜間休日の連絡先) ☐ 費用負担(災害救助法適用時の費用弁償の扱い、適用前・適用外の場合の負担者) ☐ 活動条件(市が提供するもの(場所・水・電源・移動手段・宿泊)と持参してもらうもの(ポータブルユニット等)の切り分け) ☐ 情報共有(活動報告の様式と個人情報の取り扱い(要配慮者名簿情報の提供条件)) ☐ 訓練条項(年1回以上の連絡訓練・合同研修の実施が書かれているか) ## 要配慮者対策:名簿と「義歯・嚥下」の視点 阪神・淡路の災害関連死の9割は60歳以上でした。守るべき人を平時から特定しておくことが最大の対策です。 災害対策基本法に基づき、市町村には避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられ、個別避難計画の作成も努力義務とされています。この既存の仕組みに「口の情報」を1〜2項目加えるだけで、発災後の口腔ケア優先順位づけが可能になります。新しい名簿を作る必要はありません。 ※【「避難所の外」も自治体の守備範囲です】災害関連死は、避難所だけでなく、病院や介護施設、そして電気や水の止まった自宅——支援の目が届きにくい場所——でも起きています。令和7年7月施行の災害救助法等の改正により、在宅避難者・車中泊避難者への支援も救助の対象として明確に位置づけられました。口腔ケア用品の配布・保健師等の巡回・歯科支援チームの活動計画は、避難所の中だけでなく、在宅避難・車中泊を含む被災地域で生活するすべての住民を対象に設計してください。要支援者名簿・個別避難計画との連動が、その足がかりになります。 【平時に把握しておきたい項目(個別避難計画・ケアマネ経由の調査に追加)】 ☐ 義歯の使用(上・下・部分)と就寝時の取り扱い(避難時に義歯を置いてくる例が想定されるため、非常持出品リストに「義歯・義歯ケース」を明記して周知) ☐ 嚥下障害(飲み込みの障害)・食形態の指定の有無(とろみ剤・ミキサー食の要否は食料備蓄計画にも直結します) ☐ 口腔ケアの自立度(自立/一部介助/全介助) ☐ かかりつけ歯科医院名(発災後の被災状況確認と治療再開の導線になります) 対象 | 避難所での初動対応 義歯使用者 | 保管容器(食品用密封容器やジッパー付き保存袋)と洗浄剤を配布。義歯を外さない・洗わないのは多くが環境要因です——外して入れる容器と置き場所がない、プライバシーが保たれ両手を使える流水の洗面所がない。容器の配布と義歯洗浄スペースの確保をセットで行い、そのうえで個別に声かけ。破損・不適合は歯科支援チームへの優先つなぎ対象 嚥下障害のある方 | 食事時の姿勢(座位・あご引き)を介助者に伝達。むせが増えたら保健師へ報告。とろみ剤の在庫を保健班が管理 歯磨き全介助の方 | スポンジブラシで1日1回以上の清掃を介助者が実施。手袋着用 認知症のある方 | 本人のペースで誘導し、家族・介助者に清掃状況を確認。拒否がある場合は清拭シートで代替 ※福祉避難所の運営マニュアルには、一般避難所より一段高い基準(スポンジブラシ・吸引器周辺の衛生管理・食形態対応)を書き込みます。指定福祉避難所の協定施設に、平時から口腔ケア物品の在庫状況を確認しておくと確実です。 ## 平時の啓発と訓練への組み込み 備蓄と計画は、訓練で動かして初めて機能します。既存の行事に「10分」足すことから始められます。 【既存事業への追加メニュー(新規予算ほぼ不要)】 ☐ 総合防災訓練:避難所開設訓練に「口腔ケアコーナー設置」を1項目追加(備蓄箱からの搬出・掲示・配布までを衛生班が実演。所要10〜15分) ☐ 住民向け:非常持出品の啓発物に「歯ブラシ・洗口液・義歯ケース」を明記(広報紙の防災特集・出前講座のスライドに1ページ追加) ☐ 職員向け:避難所運営研修に口腔ケアの講義を組み込む(郡市歯科医師会に講師派遣を依頼。協定の訓練条項の実績にもなります) ☐ 要配慮者向け:介護予防教室・通いの場で「災害時のお口の守り方」を実施(期限が近い備蓄洗口液の配布先としても活用(循環備蓄)) ☐ 受援訓練:県・県歯科医師会との連絡訓練(要請様式の伝達演習)を年1回(9月の防災週間・11月の訓練シーズンに合わせると定着します) 訓練の効果測定は「避難所運営マニュアルどおりに口腔ケアコーナーを何分で設置できたか」「スクリーニング票を何人分記入できたか」など、数えられる指標で記録します。翌年度の計画修正・予算要求の根拠資料になります。 ※啓発の軸となるメッセージはひとつで足ります。「避難所でも、食後と寝る前の歯みがきで口の中を清潔に」。口の中の清潔は、肺炎などのリスクを抑えるための対策のひとつです。職員向けの背景としては、特別養護老人ホームで行われた比較試験(Yoneyama et al., The Lancet 1999)で、歯科専門職が関わる専門的口腔ケアにより肺炎の発症率が39%低下したことが報告されています。ただし、この研究が検証したのは専門的ケアの効果であり、本人による普段の歯みがきの効果を直接調べたものではありません。 ## 小さく始めるロードマップ:予算ゼロから全域展開へ 最初の一歩に予算は要りません。3つのフェーズで、無理なく全域展開までつなげます。 - フェーズ0:予算ゼロで始める(今年度内) — (1)地域防災計画・避難所マニュアルを「口腔」で全文検索して現状把握、(2)第4章の文言例で計画修正案を起案、(3)県歯科医師会との協定内容と県の受援ルートを確認、(4)避難所運営研修に口腔ケアの回を追加。ここまで既存事務の範囲で実施できます。 - フェーズ1:モデル避難所1か所(翌年度) — 拠点となる指定避難所1か所に第6章の備蓄(100人・7日分で数万円規模)を配備し、開設訓練で口腔ケアコーナー設置とスクリーニング票の運用を検証します。検証結果を様式・マニュアルに反映し、議会・財政部局への説明材料にします。 - フェーズ2:全域展開(2〜3年目) — 全指定避難所への備蓄配備と福祉避難所の上乗せ基準の整備、個別避難計画への口腔項目の追加、県・歯科医師会との年次受援訓練の定例化まで広げます。災害時の仕組みを平時の歯科保健事業と接続させることが持続の条件です。 一般社団法人日本オーラルヘルス協会「お口の防災プロジェクト」では、本ガイドの内容について、地域防災計画・避難所マニュアルの文言案の個別レビュー、備蓄品目リストの地域実情に合わせた調整、職員研修・住民啓発講座への講師協力、歯科医師会との協定づくりの論点整理を無償相談から承っています。 ※【担当者向け相談窓口】「まず自分の自治体の計画に何が足りないか知りたい」という段階からで構いません。お問い合わせページのフォームより、自治体名と現在の検討状況をお知らせください。防災担当・保健担当のどちらの部署からのご相談にも対応します。 ### 出典 - 防災基本計画(令和7年7月1日修正)— 日本災害歯科支援チーム(JDAT)を医療チーム派遣の協力主体として明記 — 中央防災会議・内閣府 https://www.bousai.go.jp/taisaku/keikaku/kihon.html - 避難所運営ガイドライン(平成28年4月策定、令和6年12月改定)—「病気の予防」に口腔衛生管理、チェックリスト1-6「正しい口腔ケアの周知・指導を実施する」 — 内閣府(防災担当) https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_guideline.pdf - 避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(平成25年8月策定、令和6年12月改定)— 歯磨用品等の備蓄例示、歯科医師等職能団体の支援スキーム活用 — 内閣府(防災担当) https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf - 災害対策基本法 第86条の6(避難所における生活環境の整備等) — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223/ - 地方公共団体における歯科保健医療業務指針(令和6年3月・医政局長通知、同年4月適用)—「災害時歯科保健医療体制の確保」で歯科医師会・歯科衛生士会・歯科技工士会・大学歯学部等との連携体制整備を都道府県に要請 — 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001267309.pdf - 大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の強化について(令和8年通知・技術的助言)— 都道府県の保健医療福祉調整本部と活動チームの受援・派遣調整体制 — 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001684743.pdf - 阪神・淡路大震災の災害関連死分析(肺炎約24%・60歳以上9割・2か月以内8割) — 神戸新聞(2004) - Yoneyama et al. Oral care and pneumonia(専門的口腔ケアで肺炎発症率39%低下・肺炎死亡率53%低下) — The Lancet, 1999 - 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位 — 厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計 - 高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎 — 日本呼吸器学会 - 中越地震における避難所巡回口腔ケア(発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集 - 熊本地震(2016年)の被災地の歯科支援実績(アセスメント927人ほか)と地元コーディネーター方式 — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書 https://jsdphd.umin.jp/ - 被災地における10年間の地域歯科保健医療活動の報告会記事(2021年3月) — クインテッセンス出版 歯科ニュース https://www.quint-j.co.jp/articles/topics/4941 - JDAT(日本災害歯科支援チーム)の創設(2022年)と能登半島地震での127チーム派遣 — 日本歯科医師会 災害歯科医療対策 https://www.jda.or.jp/disaster/ --- # 資料: 歯科医療者向け 参画ガイド(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/dental-professional-guide 災害時の歯科保健支援に、あなたの専門性を——研修受講から自院のBCPまで、今日から動ける参画ロードマップ。 ## なぜ、災害時に歯科専門職の手が必要なのか 災害時の口腔ケアは「快適さ」だけの問題ではなく、避難生活での誤嚥性肺炎などの健康リスクに関わる問題です。 阪神・淡路大震災(1995年)では、死者6,434人のうち919人(兵庫県内の認定)が災害関連死でした。その約24%が肺炎で、災害関連死の9割が60歳以上、8割が発災後2か月以内に集中しています。断水で歯みがきができず、口腔内で増殖した細菌(歯垢1mgに約1億個)を含む唾液や食物を誤嚥することで起こる誤嚥性肺炎——ここに歯科専門職が介入できる余地があると考えられます。 ▶ 39%低下 — 特別養護老人ホームでの専門的口腔ケアによる肺炎発症率の低下。肺炎による死亡率は53%低下(2年間のランダム化比較試験)(出典: Yoneyama et al., The Lancet 1999) 東日本大震災(2011年)でも、石巻市の災害関連死の26.9%が肺炎であったとされています。誤嚥性肺炎は平時でも日本人の死因第6位(厚労省 令和2年人口動態統計)で、高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎(日本呼吸器学会)です。災害時は、このリスクが高まると考えられています。 ※【この資料の立場——「支援」の前に、まず「防災」を】歯科医療者への一番のお願いは、支援に行くことではなく、防災です。自院が被災しても地域への歯科保健医療の提供を続けられる備え(BCP)を一人ひとりの歯科医療者が持てば、外部からの歯科支援はそもそもほとんど必要なくなります。そのうえで支援に関わるなら、研修を受け、要請と調整に基づく枠組み(JDAT等)で動くことが原則です——要請によらない自発的な「駆けつけ支援」は、善意であっても受援側の大きな調整負担になります。本資料は、自院の点検項目・研修の申込先・地域での動き方まで具体的に示します。 ## フェーズ別に見る歯科専門職の役割の全体像 災害医療は時間経過(フェーズ)で求められる機能が変わります。歯科の出番は「72時間以降」に本格化しますが、各フェーズに固有の役割があります。 フェーズ | 時期の目安 | 歯科専門職の主な役割 | 具体的なアウトプット例 超急性期 | 発災〜72時間 | 自身と家族・スタッフの安全確保、自院の被害確認、地区歯科医師会への安否・被害報告 | 安否報告(EMIS等の様式に準拠)、診療再開可否の一次判定 急性期 | 72時間〜1週間 | JDATの活動開始。避難所の口腔スクリーニング、応急歯科治療(疼痛・義歯不適合・外傷)、口腔ケア用品の配布と使い方指導 | 避難所ごとの要支援者リスト、応急処置記録、保健師への申し送り 亜急性期 | 1週間〜1か月 | 要配慮者(高齢者・要介護者・障害児者)への継続的口腔ケア、義歯の修理・新製、避難所の食形態への助言、誤嚥性肺炎ハイリスク者の抽出 | 巡回口腔ケアの定期スケジュール、多職種カンファレンスでの情報共有 慢性期 | 1か月以降 | 地元歯科医療機関への引き継ぎ、応急仮設住宅・在宅への巡回、地域の歯科保健事業の再建支援 | 引き継ぎ様式(未処置者リスト・ケア継続計画)、撤退計画 中越地震(2004年)では、発災5日目から25日間にわたり避難所115か所をのべ1,226名に対して巡回口腔ケアが実施されました(厚労科研 中久木班報告集)。「急性期の応急処置」で終わらず、亜急性期の継続巡回まで設計されていたことが特徴です。 ※【最初の1〜2週間を支えるのは「地元」——外からは、ほぼ入れない】発災直後はDMAT(災害派遣医療チーム)等の救命医療が最優先で、道路も物流も寸断されるため、最初の1〜2週間に現地で動けるのは、多くの場合「一緒に被災した地元の歯科」だけです。だからこそ、この時期に本当に効くのは外からの支援ではなく、あなた自身の自院BCPと、自分の周囲の避難者を地元自治体とともに支える動きです。外部の歯科専門職が個人判断で被災地に向かうと、かえって受援側の負担になります。まず自分・家族・スタッフ・自院の安全と情報報告に徹し、組織的な派遣要請を待つのが原則です。 ## JDATの仕組みと参加方法——登録までの具体的ステップ JDAT(Japan Dental Alliance Team:日本災害歯科支援チーム)は、2022年3月に日本災害歯科保健医療連絡協議会が創設した全国組織です。発災後おおむね72時間以降、避難所等での応急歯科医療と口腔衛生を中心とした公衆衛生活動を担います。 能登半島地震(2024年)では計127チームのJDATが派遣され、創設後初の大規模実働となりました。参加の入口は日本歯科医師会が運営する研修体系です。歯科医師だけでなく、歯科衛生士・歯科技工士・行政職・歯科関連企業従事者・歯科医師会職員も研修対象に含まれています。 ※【まずは「知っておく」ところから】JDATの研修への参加の道筋は、所属の歯科医師会を通じたものが中心です。本資料は「まずJDATという仕組みを知り、関心があれば歯科医師会に意思表示しておく」ことをおすすめする立場です。あなたにとっての最優先は、いつでも、自院のBCPと、被災直後に自分の周囲を支える力にあります。 研修名 | 対象 | 形式 | ポイント 災害歯科保健医療eラーニング(基礎編・標準編) | 歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・行政職従事者・歯科商工協会加盟企業従事者・歯科医師会等の職員 | オンデマンド(無料) | 日本歯科医師会HPのWEBフォームから編ごとに申込。最初の一歩に最適 JDAT標準研修会 | 災害歯科保健医療に携わる歯科専門職 | 講義+実地演習。中央開催+令和6年度から地域開催も開始 | 厚労省補助金事業。関係機関と「共通言語」で動ける人材を各都道府県歯科医師会に配置することが目的。開催情報は所属の歯科医師会を通じて案内されます JDATアドバンス研修会 | 標準研修修了者 | 集合研修 | 全国7ブロック単位のリーダー、地区歯科コーディネーター機能を担う人材を養成 JDATロジスティクス基礎研修会 | JDAT活動予定者 | eラーニング | 能登半島地震の初動の教訓から新設。移動・宿営・物資・通信など後方支援の基礎 1. eラーニング(基礎編)を申し込む — 日本歯科医師会ホームページの災害歯科保健医療対策ページからWEBフォームで申込みます。受講料は無料です。まず全体像と用語(CSCA・トリアージ・保健医療福祉調整本部など)を押さえます。 2. eラーニング(標準編)を修了する — 避難所での活動手順、記録様式、多職種連携の実務を学びます。基礎編とは別に登録が必要です。 3. 所属の都道府県歯科医師会に意思表示する — JDATの派遣は都道府県歯科医師会単位で編成されます。「災害時に協力可能」である旨を登録し、標準研修会の開催案内を受け取れるようにします。会員でない場合も、まず地区歯科医師会に問い合わせてください。 4. JDAT標準研修会を受講する — 開催の形式や頻度は年度・地域によって異なります。開催案内を逃さないよう、都道府県歯科医師会への登録を済ませておきましょう。図上演習(机上シミュレーション)で発災時の判断を体験します。 5. 訓練・アドバンス研修でスキルを維持する — 都道府県の防災訓練への参加、アドバンス研修(リーダー・コーディネーター養成)、アドバンス更新編eラーニングで知識を更新し続けます。 ※【歯科衛生士・歯科技工士の方へ】JDATは歯科医師だけのチームではありません。避難所での口腔ケア実務は歯科衛生士が中核であり、義歯対応では歯科技工士の機動力が命綱になります。日本歯科衛生士会も「災害歯科保健活動 歯科衛生士実践マニュアル」を公開しています。 ## 「災害歯科コーディネーター」という要のポジション 支援チームがいくら集まっても、采配役がいなければ避難所に届きません。都道府県・地区レベルで歯科支援を差配するのが災害歯科コーディネーターです。 災害歯科コーディネーターは、都道府県の保健医療福祉調整本部(災害時に保健・医療・福祉の資源配分を統括する行政の司令塔)や災害医療コーディネーターと連携し、①被災地の歯科ニーズの集約、②JDATチームの受け入れと避難所への割り当て、③地元歯科医師会・行政・多職種との調整を担います。ただし、これは行政が任命する公的な職ではなく、実務上は災害協定の関係から歯科医師会の関係者が担うのが一般的です。JDATアドバンス研修会は、地区コーディネーター機能を担える人材の育成を目標の一つに掲げています。 【コーディネーターを目指す人が平時に整えておくこと】 ☐ 自分の都道府県の「保健医療福祉調整本部」の体制図と、歯科の位置づけを確認する(都道府県の地域防災計画(自治体HPで公開)に記載があります) ☐ 都道府県歯科医師会の災害対策委員会・警察歯科委員会の担当者と顔の見える関係をつくる(発災時に「初めまして」では調整が回りません) ☐ 管内の避難所指定施設・福祉避難所のリストと、歯科的ハイリスク者が集まりやすい施設を把握する ☐ JDATアドバンス研修会の受講要件(標準研修修了)を満たしておく ☐ 県境を越えたブロック単位(全国7ブロック)の合同訓練に参加する(受援(支援を受ける側)の練習が最も不足しがちです) ## 平時にできる地域活動——訓練・研修・ケア会議に歯科を組み込む 発災後にゼロから始める支援より、平時に地域へ埋め込んだ仕組みのほうが、発災後に動きやすくなります。個人の診療所単位で今日から着手できます。 【地域活動の3つの入口】 ☐ 自治体の防災研修・避難所運営研修の講師を引き受ける(市町村の防災担当課・健康増進課に「災害時の口腔ケアと誤嚥性肺炎予防」の講義(30〜60分)を提案。本プロジェクトの資料はそのまま教材に使えます) ☐ 地域の防災訓練に「口腔の健康チェックブース」を出展する(住民が自分の口のリスクを知る機会になり、歯科医院の災害時の役割の周知にもなります) ☐ 地域ケア会議・在宅医療介護連携推進会議に歯科として参加する(要介護高齢者の平時のケア情報が、発災時のハイリスク者リストの土台になります) 1. 防災訓練ブースの企画書を出す(訓練の2〜3か月前) — 市町村の防災担当課に、目的(誤嚥性肺炎予防の啓発)・内容(口腔チェックと相談)・必要スペース(机2台・椅子4脚程度)・従事者数(歯科医師または歯科衛生士2名以上)を1枚にまとめて提出します。地区歯科医師会経由だと通りやすくなります。 2. 物品を準備する — 目安として、ペンライト2本、使い捨てグローブ(想定来場者数×1双+2割)、手指消毒液、デンタルミラー(ディスポーザブル)、記録票(氏名・年齢・義歯の有無・口腔乾燥の有無・かかりつけ歯科の有無の5項目程度)、配布用リーフレット。 3. 1人3分のスクリーニングを回す — 問診(むせの自覚・義歯の状態)→視診(乾燥・汚れ・動揺歯)→ワンポイント指導(水が少ないときの歯みがき法、義歯は外して寝る等)の3ステップ。治療行為は行わず、要精査者にはかかりつけ受診を勧めます。 4. 結果を地域に返す — 集計(来場者数・義歯使用率・口腔乾燥の該当率など)を防災担当課と地域包括支援センターに報告します。翌年の訓練への継続出展と、避難所運営マニュアルへの「口腔ケア物資・歯科職の役割」の追記を提案する材料になります。 ※【訓練は「避難所運営者に口腔ケアを覚えてもらう場」】発災直後の避難所に歯科職は常駐できません。訓練を通じて、避難所運営スタッフ自身が「水・歯ブラシ・口腔ケア用ウェットティッシュを物資リストに入れる」「食後の口腔ケアを声かけする」ようになることが、歯科職が現地に着くまでの空白を埋めます。 ## 自院の災害対策——BCP・機材点検・患者データ保全 被災地の歯科医院が早期再開できるかどうかは、地域の口腔の健康の回復速度を直接左右します。自院の継続こそが、歯科医療者にできる最大の災害貢献です。「守る・開く・届ける・続ける」の枠組み(『歯科医院の防災対策ガイドブック』医歯薬出版)で自院を点検しましょう。 BCP(事業継続計画:被災後も中核業務を止めない・早く戻すための事前計画)というと大げさに聞こえますが、歯科診療所の場合は「①人と建物を守る」「②早期に診療を開く」「③地域に専門性を届ける」「④経営を続ける」の4点をA4数枚で決めておくことです。年1回、スタッフミーティングで見直す日(例:防災の日の週)を固定するのが継続のコツです。 【設備・機材の点検チェックリスト(年1回+大きな地震の後)】 ☐ 診療ユニットの固定状態と、周囲の転倒物(キャビネット・技工物棚)の固定(L字金具・耐震ジェルで対応。ユニット自体より「上から落ちてくる物」の被害が多発します) ☐ コンプレッサー・バキュームモーターの転倒防止と、停電時の再起動手順の掲示 ☐ 薬品棚・小器具棚の扉ラッチ(開き戸ストッパー)の作動確認 ☐ 給水・排水の元栓の位置をスタッフ全員が言えるか確認(漏水は機材被害を拡大させます) ☐ スタッフ用備蓄:飲料水(1人1日3Lを目安に3日分)・簡易トイレ・懐中電灯・モバイルバッテリー ☐ 患者・スタッフの安否確認手段(連絡網・SNSグループ)と、休診情報の発信手順(HP・院外掲示) ☐ 口腔ケア物資の院内在庫を「地域への提供分」も見込んで把握(洗口液・保湿ジェル等の液体用品は購入年月の一覧表を作り、未開封で約3年を目安に年1回の入替(循環備蓄:日常使用しながら補充する備蓄法)を仕組み化します(期限表示があればそれに従う)) データの種類 | リスク | 対策 | 頻度の目安 紙カルテ | 水損・流失・焼失 | 浸水想定区域では下段保管を避ける。重要ページ(初診時記録・補綴歴)のスキャン化 | 新規分は随時、既存分は計画的に レセコン・電子カルテ | 端末損壊・電源喪失 | 外付けHDD等へのバックアップに加え、遠隔地保管(クラウドまたは自宅等への持ち出し媒体)を併用 | 日次(自動化を推奨) デンタル・パノラマX線画像 | サーバ損壊 | 画像サーバのバックアップを診療録と同じ計画に含める | 日次〜週次 技工指示書・補綴物記録 | 散逸 | 補綴歴が身元確認の照合資料になることを踏まえ、カルテと紐づけて保存 | 随時 ※【東日本大震災の教訓】津波でカルテやX線写真が流失した地域では、身元確認に必要な生前歯科資料の収集が困難を極めました(静岡県歯科医師会コラム)。患者データの遠隔地バックアップは、自院の経営継続だけでなく、地域の身元確認能力を守る公共的な備えでもあります。 ## 身元確認(歯科所見)への協力という、歯科にしかできない役割 歯は人体で最も硬く、火災や水損の後も残ることが多いため、歯科所見は指紋・DNAと並ぶ身元確認の柱です。ご遺体を家族の元に返す仕事は、歯科専門職に固有の社会的使命です。 ▶ のべ2,600名 — 東日本大震災の発災から5か月間に全国から動員された歯科医師数。約8,750体の歯科所見の記録・照合にあたった(出典: 静岡県歯科医師会コラム「歯の情報(歯科所見)による身元確認」) 身元確認は、ご遺体の歯科所見(デンタルチャート)の採取と、生前の歯科診療記録との照合という2つの作業から成ります。日本歯科医師会は「大規模災害時の歯科医師会行動計画」の別添として「身元確認マニュアル」(令和7年5月改訂版)を公開しており、記録様式や警察との連携手順が標準化されています。多くの都道府県歯科医師会には警察歯科医会・警察歯科委員会があり、平時から研修会を開催しています。 【協力に向けて平時にできる準備】 ☐ 日々のカルテに歯式・補綴物・欠損状態を正確に記載する習慣を徹底する(「生前記録の質」がそのまま照合の成否を決めます。省略記載は災害時に牙をむきます) ☐ 都道府県歯科医師会の警察歯科(身元確認)研修会を受講する(デンタルチャート採取の実習を含む研修が各地で開催されています) ☐ 日本歯科医師会「身元確認マニュアル」改訂版に目を通し、標準様式を知っておく ☐ 自院の診療録・X線画像のバックアップ体制を整える(前セクション参照) ☐ ご遺体の歯科所見採取・身元確認業務は精神的負荷が大きいことを知り、従事後のセルフケア・ピアサポートの窓口を確認しておく ## 被災地に学ぶ「継続支援」の作法——撤退までを設計する 災害支援で最も難しいのは「始め方」ではなく「終わり方」です。地元の力を奪わず、必要な間だけ、確実に手渡して引く。2つの実例にその作法が凝縮されています。 熊本地震(2016年)の被災地では、2016年4〜5月の支援活動で歯科的アセスメント927人・応急歯科治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人が実施されました(日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書)。注目すべきは数字の構造です。応急治療(46人)に対し、アセスメントと予防的介入(口腔ケア・保健指導で約500人)が大きく上回っています。災害歯科支援では「治療」だけでなく、口腔ケアや保健指導などの公衆衛生活動が大きな比重を占めていたことがうかがえます。 東日本大震災の被災地では、地元の歯科医療者を核に歯科保健チームが組織され、全国の支援者が長年にわたり伴走した例があります。乳幼児歯科健診やフッ化物洗口事業など地元の歯科保健事業の再建に至り、外部支援者が主役を奪わず、地元の保健センター・開業医が事業主体であり続けたことが継続の条件でした。 ※【現実は「きれいな撤退」を許さないこともある】感染症の流行や地域側の事情によって、支援が予定より早く途切れることは現実に起こります。地元の体制づくりを見届ける前に支援が終われば、仕組みは残りません。地域側の窓口を担っていた担当者が、交代したり失われたりすることもあります。だからこそ、撤退の設計と並行して、担い手を早めに複線化し、地元に仕組みそのものを残しておくことが要になります。 1. 入口で出口を決める — 支援開始時に「地元歯科医療機関の再開」「行政の歯科保健事業の再開」など撤退条件を言語化し、受援側と共有します。期限ではなく条件で区切るのがポイントです。 2. 初日から記録を引き継ぎ可能な形式で残す — 個人メモではなく、標準様式(スクリーニング票・処置記録・要フォローリスト)で記録します。後続チームと地元が読めない記録は存在しないのと同じです。 3. 意思決定の主語を地元に置く — 巡回先の優先順位や事業の取捨選択は、地元歯科医師会・行政・保健師が決め、外部支援者は選択肢と根拠を提供する側に回ります。 4. 常駐支援から間欠支援へ段階的に薄める — 毎日→週1回→月1回→年数回の報告会参加、と支援密度を計画的に下げ、その都度「地元だけで回ったこと」を確認します。 5. 撤退後も「呼ばれたら戻れる」細い線を残す — 完全な関係断絶ではなく、報告会や周年行事での再訪といった細く長い接点を残すことが、次の災害への備えにもなります。 ※【支援は「引き算」で設計する】支援量を増やす計画は誰でも作れます。プロの支援者は「自分たちがいなくても回る状態」から逆算して、減らし方を先に設計します。 ## お口の防災プロジェクトでの参画メニュー 本プロジェクト(一般社団法人日本オーラルヘルス協会)は、災害時の口腔ケアを通じて、避難生活での誤嚥性肺炎などの健康リスクを減らすことを目指し、自治体・施設・住民向けの資料整備と研修を進めています。歯科専門職の参画を次の3つの形でお願いしています。 参画メニュー | 主な内容 | 想定される関わり方 監修 | 住民向け・自治体向け資料の医学的監修、地域の実情に合わせた改訂への助言 | 資料単位でのレビュー(オンライン完結可) 講師 | 自治体職員研修・避難所運営研修・住民向け講座での講義や実技指導 | 年数回程度から。教材・スライドはプロジェクトで用意 地域アドバイザー | お住まいの地域での防災訓練ブース出展支援、地域ケア会議への同行、自治体との橋渡し | 地域単位での継続的な関与 「JDATの研修はこれから」という段階の方も歓迎です。本ガイドのセクション5(平時の地域活動)で紹介した取り組みを、教材・様式の提供やノウハウ共有で後押しします。逆に、災害支援経験の豊富な先生には、実例に基づく資料改訂や後進の指導をお願いしたいと考えています。 ※【ご相談・お申し込み】参画のご相談は、お問い合わせページからお願いします。所属・職種と、ご関心のあるメニュー(監修・講師・地域アドバイザー)をお書き添えください。折り返し担当者からご連絡します。 ### 出典 - 災害歯科保健医療対策(JDAT研修体系・災害歯科コーディネーター研修・身元確認マニュアル) — 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/dentist/disaster/ - 日本歯科医師会の災害歯科医療対策(JDAT創設・発災後72時間以降の活動位置づけ) — 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/disaster/ - 大規模災害時の歯科医師会行動計画 別添 身元確認マニュアル 改訂版(令和7年5月) — 日本歯科医師会 災害時対策・警察歯科総合検討会議 https://www.jda.or.jp/dentist/disaster/pdf/identity-manual_R07.pdf - 歯の情報(歯科所見)による身元確認(東日本大震災でのべ2,600名・約8,750体) — 静岡県歯科医師会コラム https://s8020.or.jp/column/20200106/index.html - 被災地の歯科保健チーム、10年間の地域歯科保健医療活動の報告会を開催(2021年) — クインテッセンス出版 デンタルトピックス https://www.quint-j.co.jp/articles/topics/4941 - 歯科医院の防災対策ガイドブック(守る・開く・届ける・続けるの枠組み) — 医歯薬出版 https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=444140 - 災害歯科保健活動 歯科衛生士実践マニュアル(2021) — 日本歯科衛生士会 https://www.jdha.or.jp/pdf/outline/saigaimanual2021.pdf - Oral care and pneumonia(専門的口腔ケアで肺炎発症率39%低下・肺炎による死亡率53%低下) — Yoneyama T, et al. The Lancet 1999 - 阪神・淡路大震災 災害関連死の分析(災害関連死の約24%が肺炎) — 神戸新聞 2004 - 熊本地震(2016年)の被災地の歯科支援実績(アセスメント927人ほか) — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書 - 中越地震における避難所巡回口腔ケア(115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集 - 令和2年 人口動態統計(誤嚥性肺炎は死因第6位) — 厚生労働省 --- # 資料: 学校向け 防災教育教材 — 授業でそのまま使える「お口の防災」指導キット(教職員・養護教諭・教育委員会向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/school-education-kit 避難所になる学校だからこそ、45分の授業と1枚のワークシートで、子どもと家庭、そして地域の「お口の備え」を始められます。 ## 1. なぜ学校で「お口の防災」なのか 学校は日本の防災の最前線です。全国の公立学校の91.7%(文部科学省・令和6年11月時点)が避難所に指定されており、発災時には子どもだけでなく地域の高齢者が体育館に集まります。 文部科学省の調査(令和6年11月1日時点)では、全国の公立学校の91.7%が災害時の避難所に指定されています。つまり多くの先生方は、発災時に「教育者」と「避難所運営の協力者」の両方の立場に立つことになります。そのとき体育館で最初に不足するのが水であり、水不足で真っ先に後回しにされるのが歯みがきです。 口の中を清潔に保てないと、歯垢(プラーク)の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気管へ入り、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:飲み込む機能が落ちた人に起きやすい肺炎)のリスクが高まると考えられています。阪神・淡路大震災では災害関連死919人(兵庫県内)のうち約24%が肺炎で、災害関連死の9割が60歳以上、8割が発災後2か月以内に集中しました。東日本大震災でも、石巻市の災害関連死の26.9%が肺炎であったとされています。 ▶ 39% — 特別養護老人ホームでの専門的口腔ケアにより肺炎発症率が39%低下、肺炎による死亡率は53%低下(2年間のランダム化比較試験)(出典: Yoneyama et al., The Lancet, 1999) 学校で教える意味は2つあります。第一に、学校避難所に集まる地域の高齢者を守る「担い手」を育てられること。第二に、子どもが学んだことは家庭に持ち帰られ、非常持出袋の中身が実際に変わることです。防災教育は「子どもから家庭へ、家庭から地域へ」広がる数少ない伝達経路です。 ※【この教材キットの構成】小学校中学年向け45分授業案、中学生向け45分授業案(避難所シミュレーション型)、家庭持ち帰りワークシート、養護教諭向け保健室運用ガイド、学校歯科医との連携手順、避難訓練への組み込み例の6点セットです。すべて本ページの内容だけで実施できます。 ## 2. 学習指導要領との接続 — 「特設の時間」を作らなくても実施できます 「お口の防災」は新しい教科ではありません。既存の保健学習・特別活動・防災教育の交点に位置づけられます。 文部科学省の学校防災のための参考資料「『生きる力』を育む防災教育の展開」(平成25年3月改訂)は、防災教育を特定の教科に限定せず、各教科・特別活動を横断して系統的に行うことを求めています。一方、歯・口の健康づくりは文部科学省後援の「生きる力を育む歯・口の健康づくり推進事業」(日本学校歯科医会)などを通じて学校保健の柱として位置づけられています。この2つの「生きる力」が交わる点が、お口の防災です。 校種・学年 | 教科・領域の位置づけ | お口の防災との接続点 小3・4 | 体育科(保健領域)「健康な生活」/学級活動(歯みがき指導) | 毎日の歯みがき習慣+「水が使えない日」の歯みがきを1コマ追加 小5 | 体育科(保健領域)「けがの防止」 | 災害時の安全確保の学習に「その後の生活と健康」の視点を接続 小6 | 体育科(保健領域)「病気の予防」 | 細菌と病気の関係の学習で誤嚥性肺炎に触れる 中学(第2学年中心) | 保健体育科(保健分野)「傷害の防止」—自然災害による傷害の防止 | 「二次災害・災害後の健康被害」として災害関連死と口腔ケアを扱う 小・中共通 | 特別活動(避難訓練・学校行事)/総合的な学習の時間 | 避難訓練への組み込み(第8節)、地域高齢者との交流学習 ※【指導案の根拠として引用できる記述】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 保健体育編は、自然災害による傷害が「災害発生時だけでなく二次災害によっても生じること」「災害に備えておくこと、安全に避難することによって防止できること」を指導内容として明記しています。災害関連死とその予防(口腔ケアを含む)は、この「二次災害への備え」の具体例として位置づけられます。職員会議や教育課程届出の際の根拠にお使いください。 ## 3. 授業案① 小学校中学年(45分)「みずがなくても、はみがき名人」 体育科(保健)または学級活動で実施できる1コマです。準備物は少なく、実習中心で構成しています。 【準備物(30人学級の場合)】 ☐ 紙コップ 35個(児童数+予備。うがい実習用) ☐ 500mLペットボトルの水 3本程度(1人あたり約30mL(紙コップに指1本分ほど)。35人分で約1L+こぼれ等の予備) ☐ 清潔なガーゼまたは口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの) 35枚(「拭き取りケア」体験用) ☐ 掲示用カード3枚(「1おく」「ブクブク」「ふきとり」と大書したもの) ☐ 家庭持ち帰りワークシート(第5節の様式)人数分(まとめで配付) 1. 導入(10分)クイズで細菌の数を実感させる — 発問1「みがき残しのよごれ(歯垢)1mg、米つぶより小さいかたまりに、細菌は何個いるでしょう? ①1万個 ②100万個 ③1億個」。挙手で予想させてから答え(約1億個)を提示します。続けて発問2「大きな地震で水道が止まりました。歯みがきはどうしますか?」。「しない」「そのまま」という素直な反応を板書に残しておくと、まとめで学びの変化が見えます。 2. 展開1(12分)なぜ災害のとき歯みがきが大事かを知る — 「お口の細菌が、ねている間などにのどから肺に入ると、肺炎という病気になることがある。とくにおじいちゃん・おばあちゃんは重くなりやすい」と説明します。発問3「学校が避難所になったら、体育館にはだれが来るかな?」→「近所の人」「おとしより」を引き出し、「きみたちの歯みがきの知識が、家族やご近所を守る」と価値づけます。恐怖をあおる写真は使わず、「お口をきれいにすることで、かかる危険を下げる工夫ができる病気」であることを伝えてください。 3. 展開2(15分)実習「水が少ないときの3つのわざ」 — わざ①ブクブクうがい:約30mL(紙コップに指1本分ほど)の水を一度に使わず、少量ずつ口に含み、ほおを大きく動かして2〜3回に分けてうがいする練習。わざ②ふきとりケア:ガーゼを指に巻き、歯の表面と歯ぐきをやさしく拭く体験(実際に自分の口で)。ガーゼは指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめるよう伝えます。わざ③つばパワー:よくかんで食べると、つばが出て口の中がうるおうことを伝えます。あわせて、よくかむことは歯みがきの代わりにはならないこと、水が少なくても歯ブラシやガーゼでよごれを取ることは続けることも伝えます。机間指導では「歯の裏側もね」と個別に声かけします。 4. まとめ(8分)家庭への橋渡し — 発問4「今日おうちに帰ったら、まず何をする?」。ワークシートを配付し、「非常持出袋に家族全員の歯ブラシを入れて、おうちの人とチェックしてくる」宿題を予告します。導入で板書した「しない」「そのまま」に線を引き、「今日のみんなはもう答えが変わったね」と締めくくります。 板書計画(黒板の配置) | 内容 中央上(めあて) | みずがなくても、お口をきれいにできる名人になろう 左(導入) | クイズ:よごれ1mg=細菌 約1おく個!/「水が止まったら…?」子どもの最初の予想 中央(展開) | お口のばいきん→のど→はい→はいえん(矢印図)/まもれる相手:かぞく・ごきんじょ 右(3つのわざ) | ①ブクブク(少しの水で2〜3回)②ふきとり(ガーゼで歯と歯ぐき)③つばパワー(よくかんで食べる・歯みがきの代わりにはならない) 右下(まとめ) | きょうの宿題:非常持出袋に歯ブラシ! ## 4. 授業案② 中学生(45分)「避難所運営シミュレーション — 口腔ケア班をつくろう」 保健体育科「傷害の防止(自然災害による傷害の防止)」または総合・学活で実施する、グループワーク型の1コマです。 1. 導入(8分)データで問いを立てる — 能登半島地震(2024年)の数字を板書:直接死228人・災害関連死516人(2026年7月時点・審査継続中)。発問1「地震そのもので亡くなった人より、助かった後に亡くなった人のほうが2倍以上多い。なぜだと思う?」。班で1分相談→数班指名。熊本地震(2016年)も直接死50人に対し災害関連死225人と約4.5倍だった事実を重ねます。 2. 展開1(10分)災害関連死のメカニズムと、避難所でできる口のケア — 阪神・淡路大震災では災害関連死の約24%が肺炎で、9割が60歳以上だったこと、高齢者の肺炎の8割以上は誤嚥性肺炎(口の細菌が気管に入って起こる肺炎)であることを説明します。そのうえで、特別養護老人ホームで行われた2年間の比較試験(Yoneyama et al., The Lancet 1999)で、歯科専門職が関わる専門的口腔ケアにより肺炎の発症率が39%、肺炎による死亡率が53%低下したことを示します。あわせて「この研究が検証したのは専門的ケアの効果であり、普段の歯磨きの効果を直接調べたものではない」ことも伝え、発問2「避難所で口のケアを続けられるようにするには、誰が・何をできるだろう?」と投げかけます。 3. 展開2(20分)シミュレーション:300人の避難所の口腔ケア計画 — 設定:「本校体育館に300人が避難。断水中。飲料水は1人1日3Lのみ。あなたたちは避難所運営本部の口腔ケア班」。各班に役割カード(下表)を配り、A4計画シート1枚に①配る物と数量 ②水の使い方のルール ③声かけを優先する人 ④掲示物の文面、の4点を15分で立案させます。正解は一つではないことを事前に伝えます。 4. まとめ(7分)発表と価値づけ — 各班1分で発表(4〜5班)。教師は「入れ歯の人への配慮に気づいた班」「水を歯みがきに割り当てるルールを作った班」を具体的に称賛します。最後に、熊本地震(2016年)では歯科チームが927人の口のアセスメントと252人の口腔ケアを行った実例と、JDAT(日本災害歯科支援チーム・2022年創設)が能登半島地震で計127チーム派遣された事実を紹介し、「専門家が来るまでの数日間を支えるのは、避難所にいる中学生かもしれない」と結びます。 役割カード(班に1セット) | カードに書く配慮事項のヒント 82歳男性・総入れ歯・一人暮らし | 入れ歯の洗浄と保管、夜間の外し忘れ、食事のむせ 生後8か月の乳児を連れた母親 | 乳児の口腔ケア(ガーゼ)、母親自身のケア時間の確保 車いす利用の68歳女性 | 水場まで移動できない→席まで届ける仕組み 日本語が不慣れな外国人観光客 | ピクトグラム掲示、多言語の一言カード 部活帰りで被災した本校生徒 | 運営の担い手としての役割を与える ※【実施上の注意】家族を災害で亡くした生徒が在籍する可能性に必ず配慮してください。実施前に学級担任・養護教諭と情報共有し、導入の死者数の提示は淡々と事実として扱い、写真や映像による情緒的な演出は避けます。途中退室を認める旨を冒頭で伝えておくと安心です。 ## 5. 家庭への持ち帰りワークシート「わが家の非常持出袋に歯ブラシを」 授業の学びを家庭の備蓄に変換する宿題です。印刷して配れるよう、様式をそのまま掲載します。 宿題の内容は一つだけ、「おうちの人と一緒に非常持出袋を開けて、家族全員分の歯ブラシを入れる」です。所要時間は10分程度。持出袋がない家庭のために「まずはジッパー付き袋に歯ブラシと下のチェック品を入れて玄関へ」という代替行動も明記します。 ワークシート様式(A4・1枚) | 記入欄 ① 家族の名前と歯ブラシチェック | 名前/歯ブラシを入れた(はい・いいえ)を家族の人数分(5行) ② 追加チェック(あてはまる家族がいれば) | 入れ歯の人→入れ歯洗浄剤・保管ケース/歯みがき粉なしでもみがけることを知っているか(はい・いいえ) ③ 水がないときのわざを家族に説明できた? | ブクブクうがい・ふきとりケア・つばパワーの3つに○ ④ おうちの人からひとこと&サイン | 自由記述1行+保護者サイン欄 ⑤ 点検日の約束 | 次に持出袋を点検する日(例:9月1日の防災の日/避難訓練の日)を家族で決めて記入 【ワークシート裏面に載せる「家庭向けミニ解説」】 ☐ 歯ブラシは1人1本+携帯用に1本。ケース入りか、通気する袋で(濡れたまま密閉するとかえって不衛生になります) ☐ 洗口液・液体ハミガキは期限表示がない製品が多いので、購入年月を本体に油性ペンで書いておく(未開封で約3年、開封後は半年〜1年以内を目安に入れ替えます(期限表示があればそれに従う)。年1回の点検日に確認を) ☐ 水がなくても、歯みがき粉なしのブラッシングだけで歯垢は落とせます(歯垢1mgには約1億個の細菌がいます) ☐ 高齢の家族がいる場合は、口腔ケア用ウェットティッシュを人数×3日分(誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位(厚労省 令和2年人口動態統計)です) ※【回収後のひと工夫】サイン欄の回収率をそのまま「家庭の備蓄が実際に変わった割合」として学校保健委員会・学校だよりで報告できます。「4年2組は31家庭中28家庭の持出袋に歯ブラシが入りました」という具体的な数字は、翌年度の実施継続の最良の根拠になります。 ## 6. 養護教諭向け — 学校避難所での保健室機能と口腔ケア 発災後、保健室は避難所の救護・保健の拠点になります。平時の備蓄と、発災後72時間の動きをここで決めておきます。 過去の災害では、歯科専門職の支援が軌道に乗るまで数日かかっています。中越地震(2004年)で避難所巡回口腔ケアが始まったのは発災5日目で、そこから25日間・115か所・のべ1,226名に及びました。裏を返せば、最初の数日間の口腔衛生は学校側、実務上は養護教諭が要になります。 備蓄品目 | 数量の目安 | 備考 歯ブラシ(大人用) | 想定避難者数×1本+1割の予備 | 体育館の指定収容人数を基準に。個包装品を選ぶ 歯ブラシ(子ども用) | 全校児童生徒数の2割分 | 在校時間帯の被災を想定した最低ライン 洗口液または液体ハミガキ | 想定避難者数×3日分(1回量は製品表示に従う。例:1回10mLなら500mLボトル1本で約50回分) | 購入から約3年を目安に、避難訓練日に年1回点検・入替(循環備蓄) 口腔ケア用ウェットティッシュ | 想定避難者数×3日分(1人1日2枚換算) | 水が全く使えない期間の主力。アルコール不使用の口腔用を選ぶ 紙コップ | 想定避難者数×3日分(1人1日2個換算) | うがい・入れ歯保管の代用にも 使い捨て手袋・ガーゼ | 各1箱以上 | 介助が必要な避難者・乳幼児のケア用 入れ歯洗浄剤・保管ケース | 想定避難者数の1割分 | 災害関連死の9割が60歳以上という事実に対応する重点品目 【発災後72時間のアクション(保健室)】 ☐ 開設当日:口腔ケア物品を受付横に配置し、掲示物「食後と寝る前の歯みがきで口の中を清潔に」を貼り出す(「もらいに来る」より「目に入る」配置が実行率を上げます) ☐ 1日目夜まで:ハイリスク者の把握を開始(判断基準:65歳以上/入れ歯使用/食事でむせる/要介護・障害で自力ケアが難しい/飲水を控えている人) ☐ 2〜3日目:ハイリスク者に1日1回以上の口腔ケアの声かけ・介助を割り当てる(中学生ボランティア(第4節の授業経験者)に「配布と声かけ」を任せられます) ☐ 3日目まで:市町村保健師・学校歯科医へ状況報告し、歯科支援チームの派遣要否を伝える(報告様式は「避難者数/ハイリスク者数/物品残量」の3点で十分です) ▶ 26.9% — 東日本大震災・石巻市の災害関連死のうち、肺炎が占めたとされる割合(出典: 石巻市 災害関連死の死因分析) ## 7. 学校歯科医との連携の進め方 学校歯科医は「健診の先生」で終わらせず、防災教育と避難所対応のパートナーとして年間計画に位置づけます。 1. 4月:学校保健計画に1行加える — 「災害時の口腔保健(授業・訓練・備蓄)」を学校保健計画に明記し、学校歯科医に共有します。文部科学省後援の「生きる力を育む歯・口の健康づくり推進事業」(日本学校歯科医会)の枠組みで取り組めば、教育委員会への説明も通りやすくなります。 2. 6月:歯科健診の機会に10分の打合せ — 議題は3つに絞ります。①本キットの授業へのゲストティーチャー参加の可否 ②備蓄品目リスト(第6節)への助言 ③発災時の連絡手段(電話不通時の代替を含む)の確認。 3. 秋:授業・学校保健委員会での登壇 — 第3節・第4節の授業の展開1(メカニズム説明)を学校歯科医が担当すると、教員の負担が下がり専門性も上がります。学校保健委員会ではワークシート回収率(第5節)を報告し、次年度の位置づけを協議します。 4. 通年:発災時の役割分担を文書化 — 「学校歯科医は発災後、地区歯科医師会・JDAT(日本災害歯科支援チーム。2022年創設、能登半島地震で計127チーム派遣)との連絡窓口を担う」「養護教諭は避難者の口腔ハイリスク者リストを提供する」という2行だけでも、危機管理マニュアルに書いてあるかどうかで初動が変わります。 ※【外部支援は「来る」前提で準備できます】熊本地震の被災地では2016年4〜5月の約1か月間に歯科的アセスメント927人・応急歯科治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人の支援が行われました(日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書)。学校側の役割は支援チームの代わりになることではなく、到着までの数日間をつなぎ、到着後は名簿と場所を提供して受け入れることです。 ※【始めやすい入口:すでにある「口腔保健の担当」から】昼休みの歯みがきやフッ化物洗口を実施している学校(多くは小学校)では、フッ化物洗口を担当する口腔保健係の教員や輪番の担当がすでに置かれていることがあります。ゼロから担当を新設するより、こうした既存の担い手に「災害時の口腔保健」を1つ加えてもらう形が、最も無理なく始められます。まずは自校に口腔保健の担当がいるかを確認してみてください。 ## 8. 避難訓練への組み込み例 — 追加時間ゼロから始める 新しい訓練を増やす必要はありません。既存の避難訓練・引き渡し訓練に30秒〜10分の要素を足すだけで定着します。 既存の訓練・行事 | 追加する要素 | 追加所要時間 毎学期の避難訓練(講評時) | 校長・安全主任の講評に一言「持出袋に歯ブラシは入っていますか。災害の後は肺炎のリスクが高まると考えられています。お口を清潔に保つことは、そのリスクを抑えるための対策のひとつです」 | 30秒 引き渡し訓練 | 保護者に第5節のワークシート(またはA5チラシ版)を手渡し配布 | 0分(配布のみ) 防災の日(9/1)前後の学級活動 | 非常持出袋の中身点検リストに「歯ブラシ・口腔ケア用品」の行を追加し、点検結果を挙手で確認 | 5分 宿泊型防災訓練・防災キャンプ | 消灯前に「水が少ないときの歯みがき」を全員で実践(第3節の3つのわざ) | 10分 給食後の予告なし訓練 | 訓練後に「今、口の中に食べかすがある状態で一晩過ごすとどうなるか」を保健指導につなげる | 5分 職員研修(年1回) | 第6節の72時間アクションの読み合わせと備蓄点検・洗口液の期限確認 | 15分 ※【定着のコツは「点検日を固定する」こと】備蓄の期限確認・家庭のワークシート再配布・職員読み合わせを、すべて「防災の日に合わせた避難訓練の日」に固定してください。担当者が異動しても行事に紐づいた業務は残ります。文部科学省の防災教育参考資料が求める「系統的・組織的な防災教育」を、最小の運用コストで満たせます。 ## 9. 教材データ・出前授業のご相談(お口の防災プロジェクト) 本ページの授業案・ワークシートは、そのまま印刷してお使いいただけます。学校での実施を協会がお手伝いします。 一般社団法人日本オーラルヘルス協会「お口の防災プロジェクト」では、災害時の口腔ケアを通じて、避難生活での誤嚥性肺炎などの健康リスクを減らすことを目指し、学校向けの支援を行っています。本キットの授業案の指導案データ(板書計画・ワークシート様式を含む)の提供、歯科専門職によるゲストティーチャー・出前授業、教職員研修(15〜60分)、備蓄品目リストの学校規模別カスタマイズについて、お気軽にご相談ください。 【こんなご相談を受けています】 ☐ 教育委員会単位での教材配布・研修会の企画(域内の学校歯科医会との調整もお手伝いします) ☐ 授業実施後のアンケート設計と効果のまとめ方(ワークシート回収率を活用した報告様式の例をご提供します) ☐ 学校避難所の口腔ケア備蓄の初期設計(収容想定人数に合わせた数量表を作成します) ※【お問い合わせ】ご相談は、お問い合わせページからお寄せください。学校名・校種・想定している実施時期(例:2学期の避難訓練に合わせたい)をお書き添えいただくと、初回のご案内がスムーズです。 ### 出典 - 阪神・淡路大震災の災害関連死分析(災害関連死の約24%が肺炎、9割が60歳以上、8割が2か月以内) — 神戸新聞(2004) - 専門的口腔ケアによる肺炎発症率39%低下・肺炎死亡率53%低下(特養での2年間RCT) — Yoneyama T, et al. Oral care and pneumonia. The Lancet, 1999 - 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位 — 厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計 - 高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎 — 日本呼吸器学会 - 東日本大震災・石巻市の災害関連死のうち肺炎が占めたとされる割合(26.9%) — 石巻市 災害関連死の死因分析 - 全国の公立学校の91.7%が避難所に指定(令和6年11月1日時点) — 文部科学省「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/bousai/1420458.htm - 防災教育を各教科・特別活動横断で系統的に行う枠組み — 文部科学省 学校防災のための参考資料「『生きる力』を育む防災教育の展開」(平成25年3月改訂) https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai03.pdf - 保健分野「傷害の防止」における自然災害による傷害(二次災害を含む)の防止の指導内容 — 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 保健体育編(文部科学省) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387016.htm - 学校における歯・口の健康づくりの位置づけ(文部科学省後援「生きる力を育む歯・口の健康づくり推進事業」) — 日本学校歯科医会・文部科学省(歯科保健教育) https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1353638.htm - 熊本地震(2016年)の被災地の歯科支援実績(アセスメント927人・応急歯科治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人) — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書(2016) - 中越地震での避難所巡回口腔ケア(発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集(2004) - JDAT(日本災害歯科支援チーム)2022年創設・能登半島地震で計127チーム派遣 — 日本歯科医師会 JDAT活動報告 - 能登半島地震の直接死228人・災害関連死516人(2026年7月時点)、熊本地震(2016)の直接死50人・災害関連死225人 — 各災害の政府・自治体公表データ --- # 資料: 企業向け 連携ガイド(企業の総務・人事・CSR/サステナビリティ担当向け・起草版・学術監修進行中) URL: https://oral-bousai.jp/resources/corporate-partnership-guide 水・食料の隣に「歯ブラシ1本」を加えるだけで、帰宅困難者対策・健康経営・ESG開示の3つを同時に前進させる実務ガイドです。 ## 1. なぜ企業に「お口の防災」か——オフィス備蓄の盲点 水・食料・簡易トイレは備えたのに、歯ブラシがない。多くのオフィス備蓄に共通する抜け穴です。 東京都の被害想定(令和4年5月公表)では、都心南部直下地震の発生時に約453万人の帰宅困難者が生じるとされています。発災後3日間、従業員はオフィスに留まることが原則です。この3日間、断水や水の節約で歯磨きが後回しになると、口の中で細菌が急増します。歯垢(プラーク)1mgには約1億個の細菌が含まれており、これが唾液とともに気管に入ることで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:食べ物や唾液が誤って気管に入り、細菌が肺で炎症を起こす病気)のリスクが高まります。 ▶ 約24% — 阪神・淡路大震災の災害関連死919人(兵庫県内の認定)のうち、肺炎が占めた割合。災害関連死の9割が60歳以上、8割が発災後2か月以内に発生しました。(出典: 神戸新聞 2004) 「高齢者の話であって、現役世代中心のオフィスには関係ない」と思われがちですが、企業にとっての論点は3つあります。第一に、館内待機する従業員・来訪者には高齢者や持病のある方も含まれます。第二に、被災生活で口の中の清潔が保てなくなると感染症のリスクが高まると考えられており、避難生活での体調不良は事業再開の人的リソースを直接削ります。第三に、従業員の家族——特に高齢の親——こそ最大のリスク層であり、家庭への展開(第6章)まで含めて初めて「従業員を守るBCP」が完成します。 ※【経営会議向けの要約】口腔ケア用品の備蓄追加は、既存の防災予算の数%程度の追加で実行できる一方、向き合うリスクは、災害関連死の主要な死因の一つである肺炎です。水・食料と違い保管スペースもごく小さく、BCP・健康経営・ESG開示の3領域で同時に成果として計上できます。 ※【備える対象は、自社の従業員だけではありません】発災時に企業が館内に抱えるのは、自社の従業員だけとは限りません。商談中の取引先の要人や、来店中の顧客が帰宅困難になれば、その場にいる企業がその方々の安全も担うことになります。店舗・サービス業では顧客が、自走式立体駐車場をもつ商業施設では、自治体の一時(いっとき)避難施設・津波避難ビルとして周辺住民が集まることもあります。医療・福祉・保育など、脆弱性の高い方を預かる事業所ではなおさらです。口腔ケア用品の備蓄量は、従業員数だけでなく『発災時に自社が抱えうる人数』で見積もっておくと安心です。 ※【事業を止めない備えが、地域を支える力になる】とくに地方では、車を失うと支援も移動も立ち行かなくなります。駐車場の浸水対策(かさ上げ・浸水前に高台へ動かすルールの事前決定)は、事業継続の生命線です。また能登半島地震では、被災した事業所へグループの別拠点から物資を満載した車が、寸断された道路に板やがれきを渡しながら丸一日以上かけてたどり着いた、といった声も聞かれました。グループ企業・取引先との相互応援の取り決めは、災害時に最も頼れる備えの一つです。自社が続くことは、従業員とその家族、そして地域を守る力になります。 ## 2. BCPへの組み込み——条例の「3日分備蓄」に口腔ケアを加える 東京都帰宅困難者対策条例の努力義務は「飲料水・食糧その他災害時における必要な物資」。この「その他」に口腔ケア用品を位置づけます。 東京都帰宅困難者対策条例(平成24年制定・平成25年4月施行)は、事業者に対し、従業者の一斉帰宅の抑制と、施設内待機のための3日分の備蓄(努力義務)を定めています。東京都のハンドブックが示す目安は1人あたり水9L(1日3L×3日)・主食9食(1日3食×3日)・毛布1枚などで、罰則はありませんが、災害時の安全配慮義務の観点からも実施が強く推奨されます。この既存の枠組みに口腔ケア用品を追加するだけなので、新しい制度対応は不要です。 品目 | 従業員100人・3日分の目安 | 積算根拠・備考 歯ブラシ(キャップ付き) | 100本 | 1人1本。水がなくても、磨いてブラシの汚れをティッシュで拭き取るだけでも、何もしないよりは汚れを減らせると考えられています 洗口液(ノンアルコールタイプ推奨) | 500mLボトル×12本(約6L) | 1人1回10mL×1日2回×3日=60mL/人。刺激の少ないノンアルコールは高齢者・口内炎のある人も使えます(口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください) 口腔ケア用ウェットシート | 約900枚(30枚入×30パック) | 1人1日3枚×3日。断水時に歯・歯ぐき・舌を拭う歯磨きの代替手段 紙コップ | 300個 | うがい用に1人1日1個 義歯洗浄剤・義歯ケース | 在籍状況に応じて若干数 | 義歯(入れ歯)使用者・高齢の来訪者対応。義歯の汚れは、誤嚥性肺炎につながるおそれがあると考えられています 携帯用オーラルケアセット(歯ブラシ+小分け洗口液) | 100セット | 帰宅開始時に配布する持ち出し用。徒歩帰宅は長時間に及びます ※【使用期限(入れ替え時期)の管理を忘れずに】洗口液などの液体製品は外装に使用期限の記載がないものが一般的で、メーカー各社は未開封で製造から約3年を目安としています(表示のある製品はそれに従ってください)。備蓄台帳に購入年月の欄を設け、年1回の防災訓練にあわせて点検し、購入から3年をめどに社内配布して買い足す「循環備蓄」で運用すると、廃棄ロスなく管理できます。歯ブラシも高温多湿を避けて保管し、点検時に劣化を確認します。 【BCP文書への書き込みチェックリスト】 ☐ 備蓄品リストに口腔ケア用品6品目を追記(上の表をそのまま転記できます) ☐ 配布トリガーを明記(例:震度6弱以上の地震で館内待機を決定した時点で、衛生班が初日夜から配布) ☐ 災害対策本部の衛生班の任務に「口腔ケア用品の配布と声かけ」を明記(「食後と就寝前に口を清潔に」の館内アナウンス例文も用意) ☐ 義歯使用者・要配慮者の把握方法を決める(本人申告ベースで可。個人情報は衛生班のみ閲覧) ☐ 帰宅開始時の携帯セット配布を帰宅ルールに追記 ☐ 備蓄台帳に使用期限(入れ替え時期)の欄を追加し、点検日を年間防災計画に組み込む ## 3. 健康経営との接続——歯科健診と防災教育の一石二鳥 健康経営優良法人認定の基礎となる「健康経営度調査」には、歯科検診に関する設問が実在します。防災とセットで設計すれば投資が二重に効きます。 経済産業省の健康経営度調査(健康経営銘柄・健康経営優良法人〔大規模法人部門〕の認定基礎データ)では、法定健診以外の健診・検診の取組を問う設問があり、「定期健康診断項目への組み込み」「費用補助」等を選んだ場合の該当検診項目の選択肢に「歯科検診」が明記されています(2026年度調査票)。また、健康経営に関与する専門職を問う設問の選択肢にも「歯科医師」「歯科衛生士」が含まれています。つまり、職域での歯科・口腔の取組は、認定申請書に書ける正式な評価対象です。 ▶ 39%低下 — 特別養護老人ホームでの専門的口腔ケアにより肺炎発症率が39%低下、肺炎による死亡率は53%低下(2年間のランダム化比較試験)。歯科専門職が関わる専門的ケアを検証した研究で、普段の歯みがきの効果を直接調べたものではありません。(出典: Yoneyama et al., The Lancet 1999) 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位(厚生労働省・令和2年人口動態統計)で、高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎です(日本呼吸器学会)。従業員本人の歯と口の健康づくりと、従業員の親世代の肺炎などのリスクへの備えは、同じ「口腔ケア」というテーマでまとめて取り組めます。 1. 年間カレンダーに2本の柱を置く — 6月の「歯と口の健康週間」に歯科健診・オーラルケアセミナーを、9月の防災の日に「お口の防災」研修と備蓄点検を配置します。同じテーマを年2回・別の切り口で扱うことで定着率が上がります。 2. 歯科健診の導入形態を選ぶ — ①定期健診への歯科項目のオプション追加、②歯科医師・歯科衛生士の巡回健診、③受診費用補助+受診勧奨、の3案から自社規模に合うものを選択。いずれも健康経営度調査の回答実績になります。 3. 防災研修を健康教育として記録する — 第5章の60分研修は「従業員への健康保持・増進の教育機会」としても実施記録を残し、健康経営の申請書類・社内報告の両方に使います。 4. 備蓄台帳と受講記録をエビデンス化する — 認定申請やサステナビリティ報告で「取組の実施を示す資料」として、備蓄品台帳・研修受講率・アンケート結果をそのまま流用できます。 ※【費用対効果の説明例】「歯科健診+防災研修+備蓄」を1パッケージにすると、①健康経営優良法人申請の取組項目、②帰宅困難者対策条例への対応、③従業員エンゲージメント施策、の3つの社内目的に同一予算で答えられます。単独施策として稟議を3本立てるより、承認も運用も軽くなります。 ## 4. CSR/ESGとしての協賛——「S」のマテリアリティに乗せる お口の防災は、人的資本・地域レジリエンス・健康寿命という3つの社会課題が交差するテーマです。開示に載る形に整えます。 ESGの「S(社会)」で投資家・取引先が見るのは、従業員の安全衛生、地域社会への貢献、そしてそれらが事業継続力にどう結びつくかです。災害関連死の主要な死因の一つである肺炎のリスクは、被災後の口腔健康管理の継続で下げられると考えられています。阪神・淡路(災害関連死919人・兵庫県内)、東日本(災害関連死3,800人超)、熊本(2016年。直接死50人に対し災害関連死225人・約4.5倍)、能登半島(直接死228人・災害関連死516人、2026年7月時点)と、直接死を上回る規模で災害関連死が発生し続けており、災害時の口腔ケアの備えはこの社会課題に関わる取組です。 ※【開示に書くときの注意】統合報告書などには、口腔ケアの取組を「災害関連死を予防する」「関連死を減らす」といった効果として断定せず、備蓄カバー率・研修受講率など、実施した取組の事実(アウトプット)として記載してください。 開示先 | 記載できる内容の例 統合報告書・サステナビリティ報告書 | 人的資本:災害時の従業員の健康確保体制(口腔ケアを含む3日分備蓄、研修受講率) 健康経営度調査・認定申請 | 歯科検診の費用補助・受診勧奨、歯科衛生士による健康教育の実施 地域貢献・社会貢献の項目 | 協賛を通じた地域啓発(避難所運営団体・自治体・学校への教材提供支援) 従業員向け社内報・採用広報 | 家族用防災キット配布、「実家の防災」啓発——福利厚生としての発信 【取組を「開示可能な数値」に変換するKPI例】 ☐ 口腔ケア備蓄カバー率(備蓄対象人数 ÷ 在館想定人数(目標100%)) ☐ 防災研修受講率と理解度(受講者数 ÷ 全従業員数、研修後アンケートの正答率) ☐ 歯科健診の受診率・費用補助の利用件数 ☐ 家庭用キット配布数と家族への波及人数(配布数 × 平均世帯人数で推計) ☐ 協賛による啓発リーチ(協会からの活動報告書に記載される教材配布数・イベント参加者数を引用) ## 5. 社員研修プログラム例——60分でここまでできる 座学だけで終わらせず、「水30mLで口を清潔にする」体験を必ず入れます。体験した人は家庭でも実践します。 時間 | 内容 | 形式 0-5分 | オープニング:災害関連死とは何か。熊本地震(2016)では直接死50人に対し災害関連死225人——「助かった命が失われる」構図を共有 | 講義 5-15分 | なぜ口から肺炎になるのか:歯垢1mgに約1億個の細菌、誤嚥性肺炎のメカニズム、専門的口腔ケアで肺炎発症39%低下のエビデンス(特別養護老人ホームでの研究) | 講義(スライド10枚以内) 15-30分 | 実習①:水が少ないときの歯磨き——コップ30mLの水での「少量ぶくぶくうがい」、歯ブラシの拭き取り清掃、洗口液の使い方 | 実習(2人1組) 30-40分 | 実習②:ウェットシートでの歯・舌・粘膜の清拭、義歯の外し方と洗い方——高齢の家族を手伝う場面を想定 | 実習・デモ 40-50分 | ワーク:自社備蓄の点検結果を見ながら、自分のデスク・自宅・実家の「お口の備え」を3行で書き出す | 個人ワーク+共有 50-60分 | 質疑応答、アクション宣言(今週やること1つ)、アンケート回収 | 全体 【研修準備物(受講者20名の場合)】 ☐ 紙コップ40個・ペットボトル水2L×2本(実習①用。1人30mL×2回分) ☐ 歯ブラシ・携帯用洗口液・口腔ケアシートの実物サンプル各20(実習後そのまま持ち帰り、自宅備蓄の初回分に) ☐ 配布資料(本ガイド第2章の備蓄表+家庭用キットリスト) ☐ 研修後アンケート(理解度3問+自宅で実践する行動1つ)(健康経営・開示用の記録として保存) 講師は歯科衛生士(口腔ケアの専門職)が務めると実習の質が上がります。全社展開では、対面60分の基本版に加え、オンライン30分版(実習①をデモ動画に置き換え)を用意すると受講率を確保しやすくなります。 ## 6. 家族への展開——福利厚生としての家庭用キット 災害関連死のリスクが最も高いのは従業員本人ではなく、その親世代です。福利厚生として家庭に届けます。 ▶ 9割 — 阪神・淡路大震災の災害関連死のうち60歳以上が占めた割合。さらに8割が発災後2か月以内に亡くなっており、避難生活の初期にこそ備えが必要です。(出典: 神戸新聞 2004) 【家庭用キットの中身(1人3日分・A5ポーチに収まる構成)】 ☐ 歯ブラシ(キャップ付き)1本 ☐ 携帯用洗口液 100mLボトル1本(1回10mL×1日2回×3日=60mL+予備。使用期限(入れ替え時期)を外装に大きく表示。口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください) ☐ 口腔ケア用ウェットシート 10枚 ☐ シュガーレスガム 1パック(標準版のみ)(噛むことは唾液が出るきっかけになるといわれますが、歯みがきの代わりにはなりません。むせやすい方・飲み込みに不安のある方・認知症のある方・自分で口の中のものを出せない方・入れ歯が外れやすい方・小さなお子さんには使わないでください。窒息につながります。迷うときは使わない選択をしてください。高齢家族版には同梱しません) ☐ 義歯洗浄剤3回分+簡易義歯ケース(高齢家族向けバリエーションにのみ同梱) ☐ 折りたたみコップ 1個 ☐ 「災害時のお口のケア」リーフレット1枚(少量の水での歯磨き手順と、高齢者の口腔ケア介助のポイント) 配布のタイミングは、①防災の日(9月)の全社配布、②定期健診・歯科健診の受診記念品、③新入社員・新任管理職への防災教育セット、などが定着しやすい設計です。「標準版」と「高齢家族版(義歯ケア用品入り・ガムなし)」の2種類を用意し、希望制で選べるようにすると満足度が上がります。 ※【「実家の防災」への声かけ】キット配布時に「年末年始の帰省で、ご実家の備蓄に歯ブラシと洗口液が入っているか見てきてください」と一言添えてください。研修(第5章)で介助の実習を受けた従業員なら、高齢の親の口腔ケアを具体的に手伝えます。従業員の介護離職予防・安心感の醸成という点でも、人事施策として説明が立ちます。 ## 7. 協賛・連携メニューと公益性ガバナンス 参画形態は規模と目的に応じて4段階。いずれの形態でも、協会の発信内容の学術的独立は変わりません。 当協会の活動基盤には、災害歯科支援の実績の蓄積があります。中越地震(2004)では発災5日目から25日間・115か所の避難所巡回でのべ1,226名に口腔ケアが提供され(厚労科研 中久木班報告集)、熊本地震(2016)の被災地では歯科的アセスメント927人・応急歯科治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人の支援が行われました(日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書)。2022年にはJDAT(日本災害歯科支援チーム)が創設され、能登半島地震では計127チームが派遣されています。企業との連携は、こうした「発災後の専門職支援」が届くまでの空白——特に最初の72時間——を平時の備えで埋めるための取組です。 参画形態 | 内容 | 主な還元 創設期協賛(Founding Supporters) | プロジェクトの立ち上げ期を複数年で支える中核パートナー | ウェブサイト・報告書へのロゴ掲載、年次活動報告会への招待、自社研修への講師派遣優待 年間サポーター | 年単位の活動資金協賛 | ロゴ掲載、活動報告書の提供、社内啓発素材の利用許諾 プロジェクト協賛 | 研修プログラム開発、家庭用キット、地域啓発イベント等の個別事業への協賛 | 協賛事業の成果報告書、自社の開示・広報での実績引用 物品・サービス協賛 | 口腔ケア用品、物流、印刷、会場等の現物提供 | 提供実績の公表、啓発活動での配布時のクレジット表記 ※【公益性ガバナンス——協賛企業へのお約束とお願い】①教材・発信物の内容は、査読論文・公的統計等のエビデンス基準に基づき協会が独立して編集し、協賛企業は内容の決定に関与しません。②協会は特定の商品・銘柄の推奨を行いません(品目カテゴリーでの推奨に限定します)。なお、協会自身も備蓄キット(お口の防災キット等)の中身を設計し、協会のショップページに掲載していますが、本資料の内容はその購入を前提としていません。③協賛金の使途は年次報告で公開します。この独立性こそが、協賛企業の開示における「ウォッシュではない社会貢献」の裏付けになります。 ## 8. 導入ステップとご相談 最短で、来月の防災訓練から始められます。 - Step 1(2週間):現状の棚卸し — 既存の防災備蓄リストに口腔ケア用品があるか確認し、第2章の備蓄表と突き合わせます。あわせて健康経営の申請状況・歯科健診の有無を人事と確認します。 - Step 2(〜1か月):経営会議への提案 — 本ガイド冒頭の主要な数字(阪神・淡路大震災の災害関連死の約24%が肺炎・特別養護老人ホームでの専門的口腔ケアで肺炎発症39%低下)と、第1章の「経営会議向けの要約」を、そのまま提案書に使えます。予算は既存防災費の枠内での増額で計画します。 - Step 3(1〜2か月):備蓄導入とBCP改定 — 第2章のチェックリストに沿って備蓄品を調達し、BCP文書・帰宅困難者対応ルールを改定。備蓄台帳に使用期限(入れ替え時期)の管理を組み込みます。 - Step 4(四半期内):研修と家庭展開 — 第5章の60分研修を防災訓練または衛生委員会の年間計画に組み込み、第6章の家庭用キットを配布します。 - Step 5(年次):開示・認定への反映 — 受講率・備蓄カバー率・配布数を集計し、健康経営度調査の回答とサステナビリティ報告に反映。翌年度の改善計画を立てます。 ※【お口の防災プロジェクトにご相談ください】一般社団法人日本オーラルヘルス協会「お口の防災プロジェクト」では、備蓄表のカスタマイズ(業種・シフト勤務・多拠点対応)、歯科衛生士による社員研修の講師派遣、家庭用キットの設計支援、協賛・連携メニューのご案内を行っています。まずは貴社の備蓄リストを拝見するところからで構いません。お問い合わせページからご連絡ください。 ### 出典 - 阪神・淡路大震災の災害関連死分析(災害関連死の約24%が肺炎、9割が60歳以上、8割が2か月以内) — 神戸新聞 2004 - 専門的口腔ケアによる肺炎発症率39%低下・肺炎死亡率53%低下(特別養護老人ホームでの2年間RCT) — Yoneyama T, et al. Oral care and pneumonia. The Lancet 1999 - 誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位 — 厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計 - 高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎 — 日本呼吸器学会 - 熊本地震(2016年)の被災地の歯科支援実績(アセスメント927人・応急治療46人・口腔ケア252人・保健指導242人) — 日本災害時公衆衛生歯科研究会 座談会報告書 - 中越地震での避難所巡回口腔ケア(発災5日目から25日間・115か所・のべ1,226名) — 厚生労働科学研究 中久木班報告集 - 東京都帰宅困難者対策条例(平成25年4月施行・従業者3日分の備蓄努力義務) — 東京都防災ホームページ https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000050/1000536.html - 東京都帰宅困難者対策ハンドブック(1人あたり水9L・主食9食等の備蓄目安) — 東京都 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/369/202303.pdf - 首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表・帰宅困難者約453万人) — 東京都防災会議 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1000902/1021571.html - 健康経営度調査について(健康経営銘柄・健康経営優良法人〔大規模法人部門〕の認定基礎データ) — 経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html - 2026年度健康経営度調査票サンプル(法定外健診・検診の項目選択肢に「歯科検診」、専門職選択肢に「歯科医師」「歯科衛生士」を含む設問を確認) — 日本経済新聞社 健康経営度調査 https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/kk2026sample_dai.pdf --- # 過去の災害の記録:令和8年熊本地震(発災直後に公開した被災者向けページ) このページは、令和8年熊本地震の発生直後に公開したものの記録です。2026年8月1日を最後に、公式情報の追跡は行っていません。発災から52日が経過した2026年9月18日に、緊急ページとしての運用を終了しました。掲載しているリンク先の情報は、その後変わっている可能性があります。熊本の現在の状況は、熊本県や各市町村の公式情報をご確認ください。なお、断水時の歯磨き、入れ歯への対処、車中泊での注意といった内容そのものは、次の災害でもそのまま役に立ちます。備えとしてお読みください。(出典: お口の防災プロジェクト) 発生: 2026年7月28日 16時27分/M7.1/最大震度7/震源: 熊本県熊本地方(気象庁発表) ページ: https://oral-bousai.jp/emergency/kumamoto (最終更新 2026年9月18日) 注: 避難所の開設状況・断水・停電などの変動する情報は当プロジェクトでは扱わず、県・市町村の公式情報を参照してください。 内容: 本ページの内容は、当プロジェクトが公開している実務資料および災害時緊急ガイドからの再構成です。資料・緊急ガイドとも監修前の内容です。 ## まず、これだけは — 水も物資もないときの優先順位 ※【口の中は、1日1回でも変えられます】水も電気も足りない時期は、口のことが後回しになって当然です。それでも、1日1回でも口の中をきれいにすることは、体調を崩すリスクを抑えるための対策のひとつと考えられています。歯ブラシがなくても、水がほとんどなくてもできることがあります。 被災生活で口の中の清潔が保てなくなると、肺炎やインフルエンザなどの感染症、持病の悪化のリスクが高まると考えられています。肺炎には、口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に誤って肺に入って起きる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」も含まれます。口の健康管理は、全身の健康管理の一部です。 - ① 水を飲むこと・体を冷やすことが最優先です。口のケアのために飲む水を削らないでください - ② 歯ブラシがあるなら、水がなくても磨けます(水なしで磨いて、ブラシの汚れをティッシュで拭き取るだけでも、何もしないよりは汚れを減らせると考えられています) - ③ 歯ブラシがないなら、清潔なガーゼやハンカチを指に巻いて歯を拭いてください。端は必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出して、口の中に何も残っていないか確かめてください(ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください) - ④ 入れ歯は、外せる環境があれば1日1回は外して洗ってください - ⑤ 口が渇く・痛い・食べにくいと感じたら、我慢せず伝えてください。避難所では救護班・保健師へ。病院や介護施設にいる方は看護師・介護職員へ。歯のことで困っているときは、歯科医師会に電話すると、近くで対応できる歯科の情報が得られることがあります ※【水分・塩分を制限されている方へ】心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで、主治医から水分や塩分の量を指示されている方は、その指示を優先してください。以下の「水分を我慢しないで」という案内は、そうした制限のない方に向けたものです。判断に迷うときは、救護班・保健師・薬剤師に、お薬手帳を見せながらご相談ください。 ## 車中泊をされている方へ — まず、足の血のかたまりにご注意ください 余震が続くなか、建物の中で眠るのが怖くて車を選ぶのは、自然な判断だと思います。車中泊が悪いわけではありません。ただ、車の中で過ごすときには知っておいていただきたい危険があり、それは避ける方法がわかっているものです。 ※【エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)とは】狭い座席で長時間足を動かさないでいると、足の血の流れが悪くなり、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。これが肺の血管に飛んで詰まると、命に関わることがあります。2004年の新潟県中越地震では、車中泊をされていた方に多く起こったことが知られ、以来、国と自治体が繰り返し注意を呼びかけています。熊本県もこの地震にあたり、熱中症予防・口腔ケアとあわせて予防を呼びかけました。 ※【先にお読みください — もんではいけないとき】片方の脚が腫れている、痛む、赤い・色が変わっている、熱をもっている、左右で太さが違う——このようなときは、その脚をもまないでください。すでにできた血のかたまりが動いてしまうおそれが指摘されています。この場合はもまずに、救護所や医療機関にご相談ください。症状がなくても血のかたまりができていることがあるとされています。迷うときは、もむより先に、ご自分の筋肉を動かす方法(下の1〜3)を優先してください。 1. 1時間に1度、かかとの上げ下ろしを20〜30回 — 座ったままで構いません。つま先を床につけたまま、かかとを上げ下げします。ふくらはぎの筋肉が動くことで、血が流れやすくなります(厚生労働省の資料に示されている回数の目安です)。 2. 3〜5分歩く/ときどき車の外に出る — 予防としてもっとも大切なのは歩くことだとされています。トイレのついでなど、こまめに車から降りて体を動かしてください。長時間、座席に座った姿勢のまま眠ることは避けてください。 3. 足首を回す・足の指をグーパーする — 膝を両手で抱えて足の力を抜き、足首をゆっくり回します。足の指を握って開く動きも有効とされています。歩けないときでも、座ったままできる運動です。 4. ふくらはぎを軽くもむ(上の注意に当てはまらない場合のみ) — 厚生労働省の予防6項目には「ふくらはぎを軽くもむ」が挙げられています。強く押す必要はありません。ご自分で脚を動かせない方については、もむかどうかを含めて、可能であれば救護班・保健師など医療者にご相談のうえで行ってください。 5. こまめに水分をとる — 水分が足りないと血が固まりやすくなります。トイレを気にして水分を控えるのが、もっとも避けたいことです。※心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 6. 眠るときは、座ったままにせず足を伸ばす — 座った姿勢のまま眠ると危険が高まるとされています。座席を倒すなどして、できるだけ足を伸ばし、体を水平に近づけて眠ってください。足を少し高くするのも予防のひとつです(ただし、横になると息が苦しくなる方は、楽な姿勢を優先してください)。ベルトをきつく締めない、締めつける下着を避けることも呼びかけられています。 ※【こんな症状が出たら、すぐに相談・受診してください】片方の膝から下が腫れる・痛む・赤くなる——このようなときは、急いで医療機関を受診する必要があるとされています。さらに、胸の痛み、息苦しさ、意識が遠のく——これらは血のかたまりが肺に飛んだサインのおそれがあり、命に関わります。ためらわず救護所または119番へ。 ※【血をさらさらにする薬を飲んでいる方へ】心房細動や血栓症の治療で抗凝固薬・抗血小板薬を飲んでいる方にとって、いちばん大切な予防は薬を続けることです。持ち出せなかった、残りが少ない、飲み忘れているという場合は、早めに救護所・薬剤師・巡回の医療チームにご相談ください。お薬手帳があれば見せてください。手元にない場合も、薬の名前がわかるものや、以前の処方の記憶をお伝えいただければ手がかりになります。 - 真夏の車内は短時間で高温になります。日陰や風通しのよい場所に駐車し、サンシェード等で日差しを防ぎ、日中はできるだけ車内にこもらないでください - お子さんを、短時間でも車内に一人にしないでください - 長時間のアイドリングは一酸化炭素中毒の危険があります。前後左右に1台分の間隔をあけて駐車し、こまめに窓やドアを開けて換気してください(熊本市の車中泊避難マニュアル) - 携帯発電機やポータブル電源を、車内やテント内で使わないでください。屋外でも排気が入らない場所で使ってください(消費者庁・NITE) - 動かない状態が続くと、心身の機能が落ちて「動けなくなる」ことがあります(生活不活発病)。地震の前と比べて歩きにくくなったと感じたら、早めに保健師・救護班にご相談ください ※【避難所にいなくても、あなたは支援の対象です】物資の配布や保健師の巡回は、避難所にいる方だけのものではありません。ただ、そこにいない方の状況は把握されにくいのが実際のところです。最寄りの避難所へ立ち寄って伝えていただくのが、いちばん届きやすい方法です。病院や介護施設にいる方は、看護師・介護職員にお伝えください。ご自身で行けない・連絡できないときは、ご家族や近所の方が代わりに伝えていただいてかまいません。 車中泊や在宅避難をされている方には、支援も情報も届きにくく、お口のケアも後回しになりがちです。水が少なくてもできることを、この下にまとめています。 ## 水がほとんどないときの歯磨き(約30mlでできます) 約30ml(紙コップに指1本分ほど)の水があれば歯磨きはできます。断水していても、配給の水を少しだけ回すことで実行できる手順です。 1. 約30mlの水をコップに用意する — 紙コップに指1本分ほどの深さが目安です。この水は「すすぎ用」なので、最初に全部使わないのがコツです。 2. 歯ブラシを水で軽く濡らして磨く — 水が乏しいときは、練り歯磨き粉は使わないほうがすすぎの水を節約できます。歯と歯ぐきの境目、奥歯のかみ合わせ面を中心に、1本ずつ小刻みに磨きます。 3. 合間に歯ブラシの汚れをティッシュで拭き取る — 磨いている途中でこまめにブラシの汚れをティッシュやガーゼで拭き取ると、少ない水でも汚れを口に戻さずに済みます。 4. 残りの水を2〜3回に分けて口に含み、すすぐ — 一度に全部の水を使わず、少量ずつ2〜3回に分けて口に含み、頬を動かしてブクブクしてから吐き出す、を繰り返します。飲み込む力が弱っている方、自分で水を吐き出せない方に水を口に含ませると、誤嚥のおそれがあります。無理にすすがせないでください。 歯ブラシがないときは、清潔なガーゼやハンカチ、口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻き、歯の表面を前歯から奥歯へ順にこすって歯垢(プラーク:歯の表面につく細菌のかたまり)を拭き取ります。口腔ケアシート(歯みがきシート)は1回1枚、面を替えながら「歯の表 → 裏 → かみ合わせ → 歯ぐき・頬の内側」の順で拭くと効率的です。洗口液(マウスウォッシュ)があれば併用すると汚れが落ちやすくなります。 ※【指に巻いて拭くときの注意】ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。口の中でちぎれて残ると、窒息や誤嚥の原因になります。ガーゼやシートは指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出し、口の中に何も残っていないか毎回目で確かめてください。ご家族など、ほかの方の口を拭くときは、噛む力が残っている方、口に触れると強く噛み込む方、認知症のある方、自分で吐き出せない方には、指や布を口の中に入れる方法は行わないでください。洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。 【使える水の量ごとの目安】 使える水 | 歯がある方 | 入れ歯の方 まったくない | 乾いた歯ブラシで磨き、ブラシの汚れをティッシュで拭き取る。歯ブラシがなければ布や口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻いて拭く(ティッシュは口の中に入れない) | 外して、清潔なガーゼ、または口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)で汚れを拭き取る。乾燥で変形するため、湿らせた布で包み、フタがしっかり閉まる容器か二重にしたジッパー付き保存袋に入れて保管する(布やティッシュで包んだだけで置かない) ペットボトルのキャップ数杯 | 上と同じ手順で磨き、最後に少量を口に含んですすぐ(自分で吐き出せる方のみ) | 拭き取ったあと、少量の水を流しかける 約30ml(紙コップに指1本分ほど) | 本ページの4ステップで磨ける | 水を張った容器で洗える。洗浄剤があれば使い、使ったあとは充分に洗い流してから装着する 十分にある | ふだんどおりの歯磨きを | ふだんどおりの洗浄・保管を ※【洗口液と液体歯みがきは別のものです】「洗口液(マウスウォッシュ)」は口をすすいで吐き出すもので、水が乏しいときのすすぎの代わりになります。一方「液体歯みがき」は歯磨き剤の代わりで、口に含んですすいだあとにブラッシングが必要です。容器裏の使用方法欄で見分けられます。どちらも、歯ブラシや布で汚れを落とす作業の代わりにはなりません。また、飲み込まないでください。お子さんが使う場合は、うがいをして自分で吐き出せるお子さんに限り、アルコールを含まないものを選び、大人が見ていてください。乳幼児には、誤飲のおそれがあるため使いません。 ※【この手順の位置づけ】少ない水での歯磨きは、自治体や関係学会が災害時向けに紹介している方法をもとにした「次善策」です。災害時の有効性を検証した研究が確立しているわけではありません。水と洗面所が使える状況であれば、通常どおりの歯磨きを優先してください。 ## 真夏の被災生活 — 口の渇きは、脱水のサインかもしれません ※【飲む水を、我慢しないでください】「トイレに行きたくないから」と水分を控えると、口が乾いて細菌が増えるだけでなく、脱水や熱中症、エコノミークラス症候群(血の固まりが血管に詰まる病気)のリスクも高まります。飲む水と、お口をきれいにする水は、削らないでください。※ただし、心臓・腎臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 ※【こんなときは、すぐに救護所か119番へ(熱中症のサイン)】めまい・立ちくらみ、頭痛や吐き気、体が熱いのに汗が出ない、まっすぐ歩けない、呼びかけへの受け答えがおかしい——このようなときは熱中症が進んでいるおそれがあります。涼しい場所へ移り、首の周り・わきの下・脚のつけ根を冷やしてください。自分で水が飲めない、意識がはっきりしないときは、ためらわず救護所または119番へ。 唾液には、口の中の細菌を洗い流し、粘膜を守るはたらきがあります。真夏の避難生活では、汗による水分の喪失、水分を控えること、暑さと不安によるストレス、そして薬の影響が重なって唾液が減り、口の中がねばつき、痛みや口臭、飲み込みにくさが出やすくなります。 - こまめに少量ずつ水分をとる - 口が乾くときは、口腔保湿ジェルがあれば、ごく少量(米粒から小豆大ほど)を舌や頬の内側に薄く伸ばす(のどの奥や上あごの奥には塗らない。塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼなどで必ず拭き取る)。なければ、水で口を湿らせるだけでも違います - 唇が乾いて切れるときは、リップクリームやワセリンで保護を - ふだんから食事や水でむせる方には、一度にたくさん飲ませないでください。上体を起こして少量ずつが基本です。むせが続くときは、とろみ剤などが用意できないか救護班・保健師にご相談ください ## 入れ歯(義歯)のこと 被災地で実際に多いお困りごとのひとつが、「入れ歯が合わない・痛い」です。合わないまま使うと粘膜に傷ができ、食べられなくなって体力が落ちていきます。 - 痛い・合わないときは、無理に使い続けず、救護班や保健師に「入れ歯が合わなくて食べられない」と伝えてください - 外して保管するときは、フタがしっかり閉まる食品用の密封容器に水を入れて。ジッパー付き保存袋を二重にしても代用できます - ティッシュに包んで置くのは避けてください。ゴミと間違えて捨てられる事故が起こりやすいと考えられます - 1日1回は外して、水で洗ってください。洗浄剤があれば使ってください。使ったあとは充分に洗い流してから装着してください ※【外せない・洗えないのは、あなたのせいではありません】避難生活で入れ歯を外さない・洗わない理由の多くは、外しても入れる容器がない、置く場所がない、人目が気になって外せない、両手が使える流水の洗面所がない——といった環境の問題です。避難所を運営する方は、保管容器の配布と、入れ歯を洗える場所の確保をあわせて進めてください。 ## 高齢のご家族・持病のある方がいる場合 飲み込む力が弱くなっている方、要介護の方、持病のある方は、被災生活の影響を受けやすいグループです。ご本人任せにせず、1日1回「お口を見せて」と声をかけ、食後のケアと保湿を手伝ってください。 - 食事中にむせることが増えていないか(配給のパンや水でむせることがあります) - 食事の量が減っていないか、食べるのに時間がかかるようになっていないか - 口の中が乾いていないか、口内炎や入れ歯による傷ができていないか - 発熱、痰の増加、なんとなく元気がない——これらが重なるときは、早めに救護班(医療)に相談してください 床に座って、床に置いた皿へ猫背で首を伸ばして食べる姿勢は、むせやすくなります。段ボールを重ねて簡易のテーブルをつくるなど、できるだけ姿勢を整えて、あごを引いて食べられるようにしてください。 ## 歯が痛い・腫れた・詰め物が取れた — 歯科に行けないとき 被災地では歯科医院が休診していたり、道路が寸断されて行けなかったりします。ここでは、受診できるようになるまでのあいだ、悪化を避けるために知っておいていただきたいことをまとめます。痛みや腫れの原因は口の中を見ないと分からないため、このページで治し方をお示しすることはできません。 ※【やってはいけないこと】痛む歯の穴に薬や消毒薬を詰める、痛む場所を温める、市販薬を説明書きの用量を超えて使う——これらは症状を悪化させるおそれがあります。特に「むし歯の穴に鎮痛薬や家庭薬を詰める」方法がインターネット上で紹介されることがありますが、歯の神経や粘膜を傷めるおそれがあり、おすすめできません。 - 痛む側で噛まないようにし、熱いもの・冷たいもの・甘いものを避けると刺激が減ります - 詰め物や被せ物が取れたら、捨てずに保管してください。受診時に使えることがあります - 手元の市販の鎮痛薬を使う場合は、必ずその薬の説明書(用法・用量・してはいけないこと)を確認してください。ぜんそく・胃潰瘍・腎臓や肝臓の病気がある方、血をさらさらにする薬を飲んでいる方、妊娠中の方、お子さんは、自己判断で使わず、救護所・薬剤師・保健師にご相談ください - 口の中が汚れると悪化しやすくなります。痛む場所を避けず、やわらかい力でていねいに清掃してください ※【早めに相談してください】顔やあごまで腫れが広がる、熱が出る、口が開けにくい、飲み込みにくい、清潔なガーゼで10〜15分押さえても出血が止まらない——このようなときは、様子を見ずに救護班・医療者にお伝えください。息が苦しい、意識がはっきりしないなど、命に関わる状態のときは119番へ。 大規模災害では、発災からおおむね数日以降に歯科の支援チームが避難所等を巡回します。避難所の運営本部・救護班・保健師に伝えておくと、こうした巡回につながります。避難所以外にいる方は、歯科医師会に電話すると、近くで対応できる歯科の情報が得られることがあります。保険証を持ち出せなくても、氏名等の申告で歯科を受診できる特例措置が過去の大規模災害では設けられています。 ## 避難所を運営する方・支援に入る方へ 口腔ケア用品の配布と同時に、「使える環境」を整えることが要になります。歯ブラシだけが配られても、水場がなければ使われません。 - 歯ブラシ・口腔ケアシート・洗口液・保湿ジェルを、居住スペースに届く形で配布する - 入れ歯を洗える場所(流水・両手が使える・人目が気にならない)を確保し、掲示する - 入れ歯の保管容器(食品用密封容器やジッパー付き保存袋)を配る - 在宅避難・車中泊の方にも物資と情報が届く経路をつくる - 食事量の減少・むせ・発熱がある方を把握し、保健師・医療チームにつなぐ ※【歯科医療者の方へ】発災直後の数日から1〜2週間、現地で動けるのは、一緒に被災した地元の歯科医療者であることがほとんどです。まずご自身とご家族・スタッフ・自院の安全確認と、自院の再開に向けた対応を最優先にしてください。そのうえで、周囲の避難者を地元自治体とともに支えることが、この時期にもっとも力になります。外部からの支援は、都道府県の保健医療福祉調整本部を通じた要請と調整の枠組み(JDAT等)で動くのが原則です。 ## 被災された方向けに公開したよくある質問 Q: 水がなくても歯磨きはできますか? A: できます。約30ml(紙コップに指1本分ほど)の水があれば磨けます。歯ブラシを軽く濡らして磨き、途中でブラシの汚れをティッシュで拭き取り、最後に残りの水を2〜3回に分けてすすいでください。水がまったくないときは、歯ブラシで磨いて、ブラシの汚れをティッシュで拭き取るだけでも、何もしないよりは汚れを減らせると考えられています。 Q: 歯ブラシがありません。どうすればいいですか? A: 清潔なガーゼやハンカチ、口腔用のウェットシート(アルコールの入っていないもの)を指に巻き、歯の表面を前歯から奥歯へ順にこすって汚れを拭き取ってください。ティッシュなど濡れると崩れるものは、口の中に入れないでください。指に巻いたものは端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出して、口の中に何も残っていないか確かめてください。口腔ケアシート(歯みがきシート)があれば、面を替えながら「歯の表 → 裏 → かみ合わせ → 歯ぐき・頬の内側」の順で拭くと効率的です。避難所の物資担当や救護班に、歯ブラシがないことを伝えてください。 Q: 入れ歯をなくしました。どうすればいいですか? A: 「入れ歯をなくして食事が噛めません」と早めに伝えてください。避難所であれば救護班・保健師・運営本部へ、病院や介護施設にいる方は看護師・介護職員へ。ご自宅や車の中にいる方は、歯科医師会に電話すると、近くで対応できる歯科の情報が得られることがあります。噛めないまま我慢すると食事量が減り、体力が落ちてしまいます。大規模災害では歯科の支援チームが応急対応を行い、その後の本格的な治療・調整は地域の歯科医療機関に引き継がれます。 Q: 入れ歯が合わなくて痛いです。使い続けても大丈夫ですか? A: 無理に使い続けないでください。合わない入れ歯を使い続けると粘膜に傷ができ、かえって食べられなくなります。被災地で最も多いお困りごとのひとつです。救護班や保健師に「入れ歯が合わなくて痛い」と伝えて、歯科の巡回や相談窓口につないでもらってください。 Q: 入れ歯を入れる容器がありません。どう保管すればいいですか? A: フタがしっかり閉まる食品用の密封容器に水を入れて保管するのがおすすめです。ジッパー付き保存袋を二重にしても代用できます。中身が見えて名前も書けるので、取り違えや紛失を防げます。ティッシュに包んで置くと、ゴミと間違えて捨てられる事故が起こりやすいと考えられるので避けてください。 Q: 避難所で口が渇いて痛いです。どうすればいいですか? A: まず、水分を我慢しないでください。こまめに少量ずつ飲んでください。口腔保湿ジェルがあれば、ごく少量(米粒から小豆大ほど)を舌や頬の内側に薄く伸ばしてください。のどの奥や上あごの奥には塗らず、塗る前に、前に塗ったジェルを湿らせたガーゼなどで必ず拭き取ってください。ジェルがなければ、水で口を湿らせるだけでも違います。唇が切れるときはリップクリームやワセリンで保護してください。痛みが続くときは、救護班や巡回の看護師に「口の中が乾いて痛い」と伝えてください。※心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 Q: 車中泊をしています。気をつけることはありますか? A: いちばん注意していただきたいのはエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)です。1時間に1度かかとの上げ下ろしを20〜30回、3〜5分歩く、こまめに水分をとる、座ったまま眠らず足を伸ばす——これらが国から呼びかけられている予防法です。あわせて、真夏の車内は高温になるため日陰に駐車し日中はこもらないこと、長時間のアイドリングは一酸化炭素中毒の危険があるため前後左右に間隔をあけて換気することにもご注意ください。片方の膝から下が腫れる・痛む・赤くなる——このようなときは、急いで医療機関を受診する必要があるとされています。さらに、胸の痛み、息苦しさ、意識が遠のく——これらは血のかたまりが肺に飛んだサインのおそれがあり、命に関わります。ためらわず救護所または119番へ。※心臓・腎臓の病気(透析を受けている方を含む)や肝臓の病気などで水分量を指示されている方は、主治医の指示を優先してください。 Q: ふくらはぎのマッサージはどうやればいいですか? A: 厚生労働省の予防6項目に「ふくらはぎを軽くもむ」が挙げられており、強く押す必要はありません。ただし、片方の脚が腫れている・痛む・赤い・熱をもっている・左右で太さが違うときは、もまないでください。すでにできた血のかたまりが動くおそれが指摘されています。症状がなくても血のかたまりができていることがあるとされるため、迷うときはもむより、かかとの上げ下ろしや足首回しなど、ご自分の筋肉を動かす方法を優先してください。ご自分で脚を動かせない方については、可能であれば救護班・保健師にご相談のうえで行ってください。 Q: 血をさらさらにする薬を飲んでいます。避難中に気をつけることは? A: いちばん大切なのは、薬を続けることです。持ち出せなかった、残りが少ない、飲み忘れているという場合は、早めに救護所・薬剤師・巡回の医療チームにご相談ください。お薬手帳があれば見せてください。手元になくても、薬の名前がわかるものや以前の処方の記憶が手がかりになります。運動や水分摂取も大切ですが、服薬の継続に代わるものではありません。 Q: 高齢の家族が食事のときにむせるようになりました。 A: 配給のパンや水など、被災地の食事はむせやすいものが少なくありません。まず食べる姿勢を整えてください——床に座って猫背で食べるのは避け、段ボールを重ねた簡易テーブルなどで高さをつくり、あごを引いて食べられるようにします。むせが続く場合や、発熱・痰の増加・元気のなさが重なる場合は、早めに救護班(医療)に相談してください。 Q: 薬や持病があります。口のケアは関係ありますか? A: 関係します。口の健康管理は全身の健康管理の一部で、被災生活で口の中の清潔が保てなくなると、感染症のリスクが高まり、持病が悪化しやすくなると考えられています。血圧の薬や睡眠薬などの影響で口が渇きやすくなることもあります。なお、心臓・腎臓の病気などで水分や塩分の量を指示されている方は、その指示を優先してください。お薬手帳を持っている方は、巡回の医療チームや薬剤師に見せながらご相談ください。 Q: 子どもの歯みがきはどうすればいいですか? A: 学童のお子さんは、水が少ないときも大人と同じ約30mlの手順で磨けます。乳幼児は湿らせたガーゼでの拭き取りが基本で、洗口液は誤飲のおそれがあるため使いません。ガーゼは指に巻いて端を必ず口の外に出したまま持ち、拭いたらすぐ口から出して、口の中に何も残っていないか確かめてください。歯磨き粉は使わないほうがすすぎの水を節約できます。仕上げ磨きができる年齢のお子さんは、保護者が声をかけてあげてください。 Q: 避難所で子どもにお菓子やジュースが配られます。むし歯が心配です。 A: 支援物資では菓子パンやジュースなど甘いものが届きやすく、歯みがきが十分にできない状況と重なるため、災害時は子どものむし歯のリスクが上がりやすいと言われています。物資を断る必要はありません。食べる時間を決めて、だらだらと食べ続けないようにしてください。食べたあとは、口をゆすげるお子さんは水で口をゆすぎ、乳幼児は湿らせたガーゼや乳幼児用の口腔ケアシートで拭き取ってください。 Q: 歯が痛いのに歯医者が開いていません。どうすればいいですか? A: 痛む側で噛まない、熱い・冷たい・甘いものを避ける、口の中を清潔に保つ、という範囲でしのぎながら、早めに相談先を探してください。むし歯の穴に薬や家庭薬を詰める方法がインターネット上で紹介されることがありますが、歯や粘膜を傷めるおそれがあるためおすすめできません。顔やあごまで腫れが広がる、熱が出る、口が開けにくい、飲み込みにくいときは、様子を見ずに救護班・医療者にお伝えください。息が苦しい、意識がはっきりしないなど、命に関わる状態のときは119番へ。 Q: 詰め物が取れてしまいました。 A: 取れた詰め物や被せ物は捨てずに保管してください。受診時に使えることがあります。取れた部分は汚れがたまりやすいので、やわらかい力で清掃を続けてください。自分で接着剤などを使って戻すことは避けてください。歯科の巡回の情報は避難所の運営本部・救護班・保健師へ、近くで開いている歯科をお探しの場合は歯科医師会にお尋ねください。 Q: 歯科の支援はいつ受けられますか? A: 大規模災害では、発災からおおむね数日以降に歯科の支援チームが避難所等を巡回します。避難所の運営本部・救護班・保健師に伝えておけば、こうした巡回支援につながります。応急的な対応の後、本格的な治療は地域の歯科医療機関に引き継がれます。保険証を持ち出せなくても、氏名等の申告で歯科を受診できる特例措置が過去の大規模災害では設けられています。 Q: 支援を求めるのは迷惑ではないでしょうか? A: 迷惑ではありません。口の困りごとを伝えることは「わがまま」ではなく、正当な医療ニーズの申告です。「困りごと+してほしいこと」を1文ずつ伝えると通じやすくなります(例:「噛めない」+「やわらかい食品がほしい」)。伝える先は、避難所であれば救護班・保健師、施設であれば看護師や介護職員です。歯のことは、歯科医師会に電話すると近くで対応できる歯科の情報が得られることがあります。一度断られても、物資や巡回チームは日ごとに変わるので、翌日また別の担当者に伝えてみてください。